表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪食は最強のスキルです!  作者: 紅葉 紅葉
第三章 ダンジョン編
45/88

第45話


(ああ、俺はこんな簡単に死んでしまうのか……)


 どこまでも続きそうな暗闇をデリクは落下しながらそう考えていた。


(父上は悲しむだろうか。俺が唯一の跡取りなのに、こんな無様な死に方で逆に怒るだろうか)


 デリクの脳裏には家族の顔が浮かぶ。これが噂に聞く走馬燈かと、笑ってしまいそうになる。


(なんで、あいつは俺を庇ったんだ。俺はあいつに、あいつに……)


 そこまでで、デリクの意識はなくなった。


「ん…………はっ!」


 デリクは小さくうなったかと思うと勢いよく覚醒した。心臓がどくどくと早鐘を打っている。自分の手を見つめて、軽く開いたり閉じたりして見る。


「そんな事しなくても生きてるよ」


「誰だ!」


 とっさに腰にある剣を抜こうとするが、そこには何もなかった。


「私、分かる? あなたがちょっかいを出してきた冒険者だけど」


 デリクは声の方を見た。そこには球体の光魔法で照らし出されたジェリダの姿があった。少し離れた所から、デリクの様子を見るように立っている。デリクは一瞬目を見開き、それから警戒したように後退る。


「あいつがここにいる訳がない。そんな女にそんな勇気ない筈だ。ならばお前は魔物か?」


「魔物じゃないんだけど。この動きを見たら分るかな」


 そう言うやいなや、ジェリダは杖の隠し刃を抜くと、一瞬でデリクの喉元に刃先を向ける。またしてもその動きを捉えられなかったデリクは、喉を反らしてジェリダの瞳を見る。


「どう? この動きなら私が本物だって思えるんじゃない?」


「分かった。信じる……」


 スッとジェリダは刃を収める。それなりの剣の使い手ならば、あの動きがジェリダ本人のものであると理解できる。剣を使う者には実力を見せるのが一番手っ取り早い。


「それで、俺は何で生きてるんだ」


「私が助けた以外に何があるの」


「俺が言ってるのはどうして助けらたのかって事だ! 俺はお前にちょっかいを掛けた事があるうえに、カルムにも俺がしてきた事を聞いてるんだろ!」


 デリクはジェリダに吠え立てる。ただでさえ気に入らない相手が、ましてや自分を助けるなど、何か裏があるのではないかとデリクは疑っているのだ。その助けた理由がデリクに貸しを作って金をせびろうと考えているのならば、この場で殺してしまおうとも考えていた。そんな殺伐としたデリクの心境とは違い、ジェリダの言葉はとても落ち着いていた。


「あなたがカルムに何をしたのかは詳しく聞いた事はないけれど、大体の予想はつくよ。でも、カルムはあなたの事を嫌ってはいなかった。逆に褒めてた。だから、助けてあげたの」


「そんな訳――」


「信じる信じないはあなた次第だけど、そんな狭い心をしてたらいつか蹴落とされるよ」


「っつ…!」


「さ、別に怪我はないんだし立って。ここからどこか正規のルートに出る道を探さなくちゃいけないんだから」


「は? 俺たちは落ちて来たんだから上を登ればいいだろ」


「そうもいかないから言ってるんでしょ。上を見てみなよ」


 デリクは上を見上げた。だが、暗い闇が続くばかりで光一つ見えない。


「かなり落ちて光が届かないのか?」


「違う。上のあの割れ目は塞がったの(・・・・・)。まるで生きてるみたいにね」


「まさか、これは隠しダンジョンというものなのか……」


 隠しダンジョンとはダンジョン内にあるとされる、隠された扉や空間を通る事で発見されるダンジョン内の高難易度ダンジョンだ。隠しダンジョン内は敵のレベルもかなり高い事で有名だが、その分財宝や武器のランクも桁違いだ。隠しダンジョンを冒険者ギルドに報告すれば情報料ががっぽりと貰えるが、自分だけの秘密にしておいて、稼ぐという手もある。


「ここが隠しダンジョンかもしれないのは分かった。それで、俺の剣はどこだ」


「ここにあるよ。目が覚めて自分が生きてる事に驚いて暴れる可能性を考えて外しておいたの」


 はいと言ってジェリダはデリクに剣を手渡す。デリクは剣を一度抜いて、何か細工をされていないかチェックした。


「別に何もしてないんだけど」


「……………………」


 デリクはこの状況下にあってもジェリダの事をまだ認められないのか、ムスッとした表情を崩さない。だが、ここで争っても生存率が下がるだけだ。いやいやながらもデリクは立ち上がり、右の道を示す。


「とりあえずこっちの道に進んでみよう。もし難しいならここに戻って、逆の方向に行けばいい」


 デリクは懐の中から包帯を取り出すと、少し裂いてその場に置く。これで戻って来た時の目印になる。


「よし、行くぞ」


 先に歩き出したデリクにジェリダは続く。光の球をいくつか作り、空中に浮かばせる。前方と周囲をそれで照らす。二人はただ無言で進む。カチャカチャとデリクの鎧がこすれる音以外は聞こえてこない。が、不意に地面から地響きのような振動が伝わってきた。


「な、何だ!?」


 その時、地面から大きなモグラが飛び出してきた。それはただのモグラではない。ジェリダとデリクの身の丈三倍はあろうかというモグラの魔物だった。いやに長い鼻をひくひくとさせて正確に二人を特定した。そして、大きく尖った爪を叩き潰すつもりで攻撃してきた。


「くっ!」


 二人は同時に後方へと飛び退る。だが、大モグラは目が見えない代わりに手に入れた嗅覚を生かし、手を振り下ろしながら迫ってくる。ジェリダは飛び退る際に、横の壁を杖で触れる。そこからジェリダが得意とする土魔法が大きな拳となって大モグラを殴る。


「クギュウウウゥゥゥ」


 大モグラは殴られて横向きに倒れる。その隙にデリクが反撃へと転じる。まずは大モグラの最大の武器である長い鼻を斬りつけた。


「ギュギウウウウウウウ!」


 鼻は半ば程から切り落とされ、大モグラは悲鳴を上げる。そのままデリクは大モグラの頭に飛び乗ると脳天を串刺しにした。


「グ、ギュギイ……ギイィ」


 オークの時とは違い、今回はしっかりと仕留める事が出来た。ジェリダは土魔法を解除して、大モグラの側に寄る。


「図体は大きいけどそこまで皮膚が固いってこともないのか。案外簡単に仕留めれられたかな」


「いくぞ。こんな魔物相手に時間を取られるな」


 剣についた血を振り払い、大モグラの頭の上からデリクが飛び降りる。そして、倒した大モグラの横をさっさと歩いて行ってしまう。ジェリダはまた無言でその後ろをついて行く。


 ジェリダはこの時、見極めていた。デリクを殺さなくてもいいかどうかを。


次は6月15日21時に更新です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ