第43話
気付いた方がいたかもしれませんが、前回投稿した話が、「43話」になっていたため修正しました。
今回の話しが正しい43話になります。内容に問題はありません。
ジェリダは岩ヒョウの群れに突進すると、直前で高く飛び上がった。それは常人の高さではなかった。三メートルも軽々と飛びあがると、ジェリダは空中で魔法を使う。それは炎の蛇などではなくもっと大きな、炎の獅子だった。それは岩ヒョウたちを一気に飲み込んだ。
「駄目だ! 岩ヒョウに炎系統の魔法は効きにくい!」
思わずアイザックは叫ぶ。あれだけの啖呵を切ったがやはり経験不足の子供か、と援護に回ろうとする。だが、その必要はなかった。
「なっ、あんなものどうやって…!」
ごうごうと炎が岩ヒョウたちを熱する。体が若干黒くなっているものの、あまり堪えた様子の無い岩ヒョウは、炎を纏ったままの二頭がジェリダに襲い掛かる。しかし、それを待っていたかのようにジェリダはニヤリと笑った。
「ギャォォオウ!」
飛びかかって来た岩ヒョウを、ジェリダが瞬時につくり出した巨大な水の塊が飲み込む。その直径二メートルほど。ジュワリという音を出して岩ヒョウは水の中をもがく。すると、岩ヒョウの守りの要ともいえるその体に変化があった。
最初は小さな音から始まり、やがてバキリという大きな音が水の中から聞こえた。それも二頭分。その音は、岩ヒョウの体がばらばらにひび割れる音だった。更にそのひび割れは広がり、やがてはその体が真っ二つに割れてしまった。ジェリダは水魔法を解く。すると、中で絶命した二体の岩ヒョウの欠片が散らばった。
「これは俺の出番はなしみたいですね」
「そうだね。意外と脆かったみたい、この岩ヒョウ」
ルベルの言葉にジェリダは頷く。だが、アイザックは心中で突っ込みを入れていた。
(あの岩ヒョウを脆いだと! 並の剣では折れてしまう程の硬さを持つ岩ヒョウだぞ!)
岩ヒョウの体は岩で覆われている。それをジェリダは利用したのだ。岩は熱せられてから急激に冷やされると割れてしまう。それをジェリダは無意識の内に実行した。それだけではない。ジェリダはこの、近くに水のない場所で瞬時に水の球をつくり出した。そのような場合、空気中を漂う水分を掻き集めても通常は小さなボール玉程度にしかならない。それをジェリダは瞬時に形成して見せたのだ。
「ありえん、あの子供は何者なんだ……」
アイザックは呆気に取られていた。まだレベルが30ほどしかない少女が、レベル50の岩ヒョウ二頭を相手に一瞬で片を付ける。それは様々な戦いや戦士を見て来たアイザックでさえ、初めて見る光景だった。
今まで自分たちが一番強いと思っていた岩ヒョウ達は、仲間がやられた事でジェリダを警戒し、ジリッと後退る。
「あれ、もう来ないの子猫たち。なら、一気に片付けてあげる」
そう言うと、ジェリダは再び水を搔き集め、さっきの倍の大きさがある水の球をつくり出す。
(なんか、魔法がいつもより簡単に使えてる気がする)
「死んじゃえ」
その一言で水の球は残りの岩ヒョウ全てを飲み込んだ。シュウウと音を立てて岩ヒョウの体が冷やされる。気泡がブクブクと水中で発生し、中の様子が見えにくくなる。そして、その中でバキバキという音がした。やがて気泡の幕が消えると、ばらばらに砕けた岩ヒョウが水中にいた。水魔法を解き、岩ヒョウの体がばらばらと地面に積み上がる。
「ふぅ、後ろは……」
岩ヒョウの始末を終え、後ろを振り返るとその場にいたルベル以外の全員が、ジェリダの事を信じられないという様な目で見ていた。
「あれ、コボルドは?」
「それならジェリダ様の戦いを見てすぐに逃げて行きました。どうやらあの岩ヒョウとコボルドは連携していたようですね」
ルベルの言葉で一気に我に返った一同は、わっとジェリダに駆け寄った。
「すげーじゃねーか! あの岩ヒョウを物の数分で倒すなんてよぉ!」
「一階層での指揮も凄かったが、今回も活躍するとは!」
「俺達より年下なのに、熟練の戦士みたいだったぞ!」
ジェリダを囲んだ兵士達は皆、口々にジェリダを褒め称える。その中には糸目のローレスや大柄なフレッド、カルムも混じっていた。
「…………………」
ジェリダはあまりの事に言葉を無くしてただ言葉を受け取る。ジェリダはここまで素直に賛辞される事がなかったため、驚いていた。そこへアイザックが近づいてきた。
「みんな、彼女が固まってしまっている。先ほどの戦いは見事だった。君はこの中で一番勇敢だ」
「ありがとうございます」
ジェリダは僅かに、微笑んでいた。
その日は二階層で野営する事になった。隊を分けて調査をしたが、二階層は広すぎて三階層への階段が見つける事が出来なかった。兵士達が持って来ていた焚き火用の木にジェリダが魔法で火を付ける。食事は若い兵士達の当番制で、手際よく料理を作っている。
「何か手伝ってきます」
ルベルは自分が何もしないと事が落ち着かないらしく、兵士達の食事の準備を手伝いに行った。話す相手もいなくなり、何かないかと辺りを見るとカルムが自身の鎧の整備をしていた。
「ちゃんと準備してるのはいい事だね」
「あ! ジェリダ。岩ヒョウ相手の戦い、すごかったな」
「ありがとう」
誉め言葉に耐性のついて来たジェリダは素直に礼を言えるようになっていた。カルムの横に座って鎧の整備を見つめる。
「そんなに面白いものでもないぞ?」
カルムは見られるのが少し恥ずかしかったのか、はにかみながらそう言う。だが、ジェリダはその作業を見ていたのではなかった。
「こんなダンジョンに来るのにその装備、何のスキルも付いてないんだね」
「あぁ、これは量産型の支給品だからな。軽くて動きやすいのはいいけど、何かスキルを付けようにも金が掛かるし、俺はいいかなって」
「それなら、私がタダでスキルを付与してあげようか?」
「え、できるのか!?」
ジェリダはカルムが手入れをしていた鎧のパーツ全てを借りる。
「何のスキル効果がいいかな……。こんな場所だからレベルの高い敵でも生き残れるようにした方がいいよね」
「遠回しに俺が弱そうって言ってない?」
「防御力を上げてあげる」
カルムの話しは無視してジェリダは鎧に防御力上昇のスキルを付与する。付与魔法を使うと鎧が薄っすらと発光し、やがて消えた。スキル鑑定で上手くいったか確かめる。
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ハーフ・アーマー軽量型:防御力上昇
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「はい、これ」
ジェリダは事もなさげに小手をカルムに返す。
「え、本当にスキル付けてくれたのか!」
「嘘ついてないよ。誰か鑑定スキル持ってる人に見て貰えば分るよ」
「いや、そんな疑う訳ないだろ! は~、でもすげーな。本当にありがたいよ!」
カルムは心の底から嬉しそうにしていた。自身の鎧を見て目を輝かせている。すると、大喜びするカルムに何があったのかと人が集まってきた。
「どうしたカルム、その嬢ちゃんに何貰ったんだ」
「あ! ライフさん! ジェリダが俺の鎧に防御力上昇スキルを付けてくれたんですよ!」
「そいつぁスゲーな。付与魔法が使えるのか。なあなあ、俺の剣にも何かスキルを付けてくれねーか」
「なんだ、スキル付けて貰えるのか? なら俺も頼むぜ」
わらわらと兵士達が集まってくる。付与術師という付与専門の者もいるが、彼らにスキル付与を頼めば最低でも銅貨七枚ほどは持っていかれる。ただでスキルを付与して貰えるとあっては、兵士達が集まって来るのは必然だろう。
ジェリダは今日だけで何回このように囲まれるんだと思いながらも、集まって来た兵士達にスキルをタダで付与してやった。ただし、一人一つだけという条件で。付与するにも魔力を使うからと言ったのだが、集まった全員にスキルを付与してもまだまだ魔力に余裕があった。
(なんか魔力が上がってる……?)
ジェリダは今日感じた魔力量の違和感を確かめるため、自分のステータスを確認する。
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名前 ジェリダ
職業 魔法使い・魔物使い
種族 人間
年齢 13歳
称号 なし
LV 42
HP 1296
MP 1330
筋力 309
知力 189
体力 201
魔力 1319
運 50
《パッシブスキル》
回避 LV 2
威圧 LV 2
剛腕 LV 2
手加減 LV 1
足音遮断 LV 2
索敵 LV 4 new
夜目 LV 2
聴覚強化 LV 4 new
無詠唱 LV 4 new
自己回復 LV 2
使役語 LV 4
《アクティブスキル》
鑑定 LV 9
魔法基礎 LV 10
回復魔法 LV 9
死霊魔法 LV 8
付与魔法 LV 9
格闘術 LV 1
拳術 LV 2
護身術 LV 1
体術 LV 2 new
柔術 LV 1
投擲 LV 1
暗殺術 LV 1
短剣術 LV 2
回復詠唱 LV 1
神聖魔法 LV 1
白魔法 LV 1
黒魔法 LV 1
調教 LV 2
支配 LV 1
洗脳 LV 1
魔術基礎 LV 1
魔力感知 LV 1
隠蔽 LV 1
解析 LV 1
《サブ職業スキル》
話術 LV 2 new
交渉術 LV 2 new
暗算 LV 2 new
他言語理解 LV1
《固有スキル》
悪食 LV 1
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レベルが20ほど離れていた岩ヒョウを倒したお陰か、ジェリダのレベルが10も上がっていた。その分筋力から魔力までが満遍なく上がっている。運は変わっていないようだ。久々にステータスを確認してみれば、色々なスキルのレベルが上がっていた。
(ああ、どおりで魔法が使いやすかった訳だ。10もレベルが一気に上がればこんな感覚になるのか)
ジェリダは急激に魔法が使いやすくなった事に納得する。だが、ジェリダは気付いていないようだが、このレベルが10も上がっているのは岩ヒョウを倒した事だけではなかった。実はワ国にて狼虎の足を切り落とした際にもレベルが2ほど上がっていたのだ。加えて、魔力を枯渇するまで使った事により、保有する魔力量が増えていたのだ。
そんな事を知る由もないジェリダは、配られた夕食を口にする。初めての野営でジェリダが食べたのは、干し肉を少量の野菜と香辛料で煮込んだスープとパンだった。
「味はどうですか? 俺も手伝って来たんですよ」
ルベルが調理の手伝いからも戻り、ジェリダとカルムの元にやって来る。
「美味しいよ。初めての野営はどうだ? それにかなり歩き詰めで疲れてないか?」
「大丈夫ですよ。意外と俺、体力あるんで。カルムさんはいつから兵士になったんですか?」
「十六の時に訓練学校に一年入って……それから兵士になったから今年、十八で兵士になったよ」
「十八歳なんですか!?」
「ああ。ははーん、分かったぞ。俺の歳がルベルと同じだと思ったんだろ。俺、童顔らしいからよく三歳ぐらい下に見られるんだよ」
ジェリダもルベルもカルムの歳を聞いて驚く。てっきりルベルと同じ十五歳だと思っていたのだ。
「俺は訓練学校に入るのが遅かったからこの歳だけど、十五歳で兵士になる奴もいるぜ。ま、そんな奴は大体実力が半端ない奴だけどな。例えばデリクとか」
「「え」」
その情報もカルムの年齢と同じく衝撃的だった。あの生意気で差別的なデリクが最年少兵士だとは思えなかったのだ。信じられないと二人の目が言っているのを見てカルムは笑う。
「そんな目するなって。あいつの家は代々兵士やら騎士をやってる家系なんだ。あいつ実力あるから、その内、王都の騎士になるために試験を受けに行くだろ。父親が王宮の近衛騎士らしいしな」
「ねえ、あんなに嫌がらせされてるのにどうしてデリクを褒めれるの?」
それはジェリダの純粋な質問だった。ジェリダは一度悪意を持たれれば、次に心を開こうと思えない。それが、カルムには出来ている。ジェリダは不思議だった。
「うーん、正直これは言いふらさない方がいいのかもしれないが、二人は冒険者で兵士じゃないからいいか。……あいつはな、すごい努力家なんだよ。できない事がないなんて周りに言われてるが、それはちゃんと努力した結果なんだ。剣術も誰よりも熱心に練習してるし、誰よりも勉強してる。それを知ってるから、俺はあいつを褒めれるんだ」
「なるほど。あれだけ自信家なのはそういう事ですか」
ルベルは納得のいった様子で頷く。だが、ジェリダはいまいち釈然としていないようだ。
「努力してて、自分ができるからって他人を下に見るのはどうかと思う」
「そこは……まぁこれからどうにかなるんじゃないか? まだ、そう言う所は子どもなんだよ」
まるで兄のようにカルムはデリクの事を話す。あれだけ馬鹿にされていても、そこまでカルムが堪えていないのも、まだ子どもだと思っているからかもしれない。
「ふーん」
カルムはやはり大人だなと思いつつ、ジェリダはスープを啜った。
次は6月10日21時です。




