第42話
昨日は更新する事ができず、すみません。自分のペースをつかみながら、更新していきたいと思います。
ビッグアントを倒して再びダンジョン内を進む。ダンジョンにあるというトラップは未だなく、ただくらい道を進んで行く。時折、ゴブリンやビックアントが数体襲ってくる事があったが、調査兵だけで対処する事が出来た。これは調査兵の訓練も兼ねているので、敵の数が少ない時は冒険者は待機するようにと言われた。
しばらく道を進んでいるとようやく下に降りる階段が見えた。
「下に行くにしたがってダンジョンにいる魔物のレベルや強さが上がってくる。これまで以上に注意して進め!」
「ジェリダ様、何かまた気配を察知したましたら油断をしないようにしてください。ダンジョンは、特に新たに発見されたダンジョンは何があるか分からない未知の領域だと聞くので」
「うん、今はこの大人数で動くんだから、一人で突っ走ったりしないよ」
ダンジョンでの油断はするなとジェニオにも言われていた。まだ推定レベルが分からない以上、警戒するに越したことはないだろう。
階段を下りれば更にダンジョン内は広くなった。
「これは中々骨が折れそうだな……」
アイザックがそう呟くほどに二階層は広範囲だった。階段付近からも分るほどダンジョン内は広がっていた。今までの洞窟の一部のような道ではなくなり、曲がったり下ったりが激しい複雑な構造になっていた。その道幅も今までより狭く、三人横並びで通れていたのがここでは二人か一人通れる程度だ。天井は更に高くなり、上が見えない。
二階層でこれほどまでに広大なダンジョンもそうない。そして、二階層目でいきなり敵のレベルが跳ねあがるダンジョンもない。
「コボルド多数接近!!」
コボルドは、ゴブリンと同じ二息歩行をする魔物だが、その大きさは大人の胸まで来るほどの身長がある。灰色の毛に覆われた肉食獣のような顔を持つコボルドは、その数四十体。それぞれが武器を有し、レベルも四十に近い者ばかりだ。
「ニンゲン、コロス」
「コロス、コロスゥゥゥゥウウウウウ!!」
コボルドが片言の言葉で敵意を剥き出しにする。魔物が言葉を介するというおぞましさと不気味さに、兵士達の間を恐怖が伝播する。まだ若い兵士はここまでレベルが高い魔物に出会った者が少ない。
「ウガアアアァァァアア」
「コロスコロスコロス!!」
恐怖した兵士達を一斉にコボルドが襲い掛かる。最初の一撃は何とか受け止める兵士達だが、魔物腕力は凄まじく、次々と負傷者が増えていく。その時、喧噪中、兵士達を叱咤する声が響いた。
「連携を取ればこの程度の数なら押し切れる! 盾を持つ者は前へ! 防御しつつ隙間から攻撃! 弓兵は魔法使いと共に後方から援護!」
意外にもその指示を飛ばしたのはジェリダだった。隊長のアイザックよりも素早く、かつ的確な指示を飛ばす。恐怖に支配されそうになっていた兵士達は一気に活力を取り戻し、攻撃へと転じる。
「うおおおおお!」
「はあああああ!」
先ほどまで体が完全に固まってしまっていた者たちが、次々と盾を上手く使い、ジェリダの指示通りに隙間から攻撃していく。
「負傷者は後方へ! あまり前に出過ぎないように連携を取って!」
なおもジェリダの指示は飛ぶ。最初に負傷した者は後方へと下がらせる。その間、ルベルは身軽に駆け回り、兵士達と共にコボルドを倒していく。そんなジェリダの指揮をアイザックは興味深そうに見ていた。
じりじりと相手に攻撃を仕掛けた分、時間は掛ったがコボルド全てを倒すことが出来た。負傷者もジェリダの指示のお陰で少なくすんだ。負傷者の怪我を治療するため、少しその場で休息を取る事になった。
「おい! さっきは喝を入れてくれてありがとよ、お嬢ちゃん」
「君のお陰で被害が少なくて良かった。意外だが、本当にいい判断力だったよ。それに、君も中々やるじゃないか!」
「それはよかった、です」
「ありがとうございます」
ジェリダが治療能力の高さが露見しないように手伝いをしていると、あちこちの兵士達から感謝や褒める言葉を掛けられた。それはルベルも同様で、剣の強さと礼儀正しさで兵士達から気に入られる。ジェリダはそっけないような返事しか返さなかったが、それでも感謝する者は多かった。
そんな中、デリクはまだジェリダにどう仕返しをしようかと考えてた。
「デリク、そんなにあの子が気に入らないのかよ。さっきはあの子の指示があったお陰で俺達は勝てたんだぜ?」
デリクの取り巻きである大柄なフレッドは、さっきの一件でジェリダの事を認めたようだった。糸目のローレスもうんうんと頷く。
「俺、完全に足が竦んでたんだけど、あの子の指示で踏ん張ることが出来たし、危ない! って思った時にあの炎の魔法で助けてくれたんだ」
ジェリダも後方で指示を出しつつ、兵士達の援護をしっかりとやっていた。カルムをコケにしていたローレスを差別することなく助けたのだ。ジェリダは私情に関係なく、兵士達を援護していた。
「~~~~~~! だったらお前らはあの女の尻でも追っかけてろよ! 俺は俺に恥をかかせたあの女を絶対に許さない!」
取り巻き二人が完全にジェリダを信用した事が気に食わないデリクは、完全に怒って二人から離れて行ってしまう。フレッドとローレスは顔を見合わせて、やれやれという様に肩を竦めた。
負傷者の治療が終わると、再び二階層を進む事にした。途中何度もコボルドに襲われたが、もう慣れた兵士達は臆することなく、連携を取って倒していく。ルベルは盾を持たない代わりに、スキルを使ってコボルドを倒していた。
何度か戦闘をしていくと、互いに色々な事が理解できて来たのか、今まで無言だった小隊が賑やかになりつつあった。
「最初は皆さん緊張でだんまりだったのに、今は賑やかでいいですね」
「あまり気を抜きすぎるのも駄目だけど、緊張しすぎもよくないからこのくらいが丁度良いんじゃないかな」
「お前はさっきのように指揮を執った事があるのか」
そう声を掛けて来たのは隊長のアイザックだった。ジェリダはこれがランクアップのためのクエストだと意識して構えることなく、素直に質問に答えた。
「うーん、人相手には初めてですね。ゴブリンやホワイトウルフは使役しているので指示は出しますが」
「ほぅ、その歳でホワイトウルフを使役するのか」
アイザックは更に興味を持ったようにしきりに頷く。と、またしても敵が接近してきた。
「コボルドとは違う、何か速いものが近づいてきてる!」
ジェリダの索敵に引っかかった何者かは、猛スピードで接近してきていた。ジェリダの渓谷の声に兵士達は一気に緊張を高める。そして、彼らの目の前に現れたのはごつごつとした表皮をもつ岩ヒョウだった。
「い、岩ヒョウ!」
小隊長の一人がそう叫ぶ。岩ヒョウとは洞窟系のダンジョンや山岳地帯などに生息する魔獣だ。彼らの持つその皮は岩からできており、とても硬い。その上、素早い動きで翻弄してくるため、倒すのは中々骨が折れる。そして、魔獣の種類にしては珍しく群れる事も厄介な要因の一つだった。
「岩ヒョウが七体……!」
岩ヒョウは群れで現れた。しかも、ここのレベルが五十前後とかなり高い。ここの兵士達の平均レベルは三十ほど。二十もレベルが離れているのはかなり状況が悪かった。
「二階層でこのレベルなど、王都のセイレルダンジョン並ではないか…!」
「グルルルルルルルルルルルルルルル」
岩ヒョウは低くうなり声を上げる。何匹かは兵士達を睨みながら、涎を垂らしている。
「ここは下がるしか……」
「駄目です! 後方はコボルドに囲まれています!」
いつの間にか調査隊の者達は逃げ道を完全に塞がれてしまっていた。コボルドはどうにか相手ができるかもしれない。だが、そちらに兵力を裂けば岩ヒョウから攻撃を受ける。まさに絶対絶命の状況だった。
「どうすれば……」
アイザックもこの状況には冷や汗を流す。そこへ、
「私とルベル、それと他の冒険者達で岩ヒョウを相手にします。兵士の人達は後方のコボルドを」
それだけ言うとジェリダは真っ先に岩ヒョウへと駆ける。その後にルベルが続く。
「な、何をしている! お前の職業は後衛職だろう! 下がるんだ!」
そんなアイザックの制止を聞かず、ジェリダは岩ヒョウの群れへと突っ込む。そして、アイザックの目の前であり得ないような光景が広がったのだった。
次は6月9日21時です。




