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悪食は最強のスキルです!  作者: 紅葉 紅葉
第三章 ダンジョン編
41/88

第41話


 二日という準備期間はあっという間に過ぎ、出発当日の朝になった。集合の場所は南門をくぐってすぐの場所という事らしい。ポーションの素材集めはしばらくジェニオにジェリダが使役する魔物達の分まで回収を頼んでおいた。ルベルもジェニオにしばらく鍛錬に行けない事を伝えた。


 ラドックギルド長に渡されたメモには数日分の食料や水、ロープなどが掛かれていて、それを鞄に入れて早朝に二人は出発した。


 南門に近づくと、既に多くの兵士が集まっていた。兵士達は鎧を着こみ、剣と盾を持っている。一見すると重装歩兵のように見えるが、鎧は軽量で、動きやすい作りになっている。剣を使うもの以外にも弓兵も十名ほどいる。


 冒険者の数は今の所かなり少ない。五名ほどだろうか。ジェリダとルベルを見るとひそひそと何かを話し出す。職業はジェリダ達を含めて前衛後衛が大体半々になるようになっている。そんな冒険者を尻目に二人は点呼を取っている兵士に声を掛ける。


「冒険者のジェリダとルベルです。確認をお願いします」


「ああ、君があの有名なジェリダって子か。えっと、うん。名簿に載っているね。チェック入れといたよ」


 点呼を取っているその兵士はかなり若く、ルベルと同い年ぐらいに見えた。赤みのかかった短髪に、人懐こそうな口調が親しみやすい感じの青年だ。人の好き嫌いが激しいジェリダでも不快には感じなかった。


「見ろよあそこ。ガキが来てるぞ。しかも女が」


 が、静かだったジェリダの心を波打たせるような、あえて聞こえるように悪口を言う者がいた。幼稚な者がいる者だと思いながら、ジェリダは声のした方を向く。そこには点呼を取っている青年と同い年と思われる若い兵士が三人、固まっていた。にやにやと小馬鹿にするような笑みを浮かべてジェリダの方を見ている。


 ルベルが怒りで前に出ようとしたのをジェリダは手で押し留める。すると点呼を取っていた青年が声を荒げた。


「おい! これから共に調査をする仲間に失礼だろう!」


「あ? カルム、デリク様に反論するなんて何様のつもりだよ。教官にごま擦りばかりしてる貧乏人が」


 そばかす顔にくるくるの栗毛。スッと細い目をした取り巻きが言ったデリクというのは、三人の内の真ん中にいる青年の事だろう。綺麗な金髪にグリーンの瞳。顔立ちはとても整っていると言えるが、どうやら性格はひん曲がっているようだ。もう一人の取り巻きはがっしりとした体格に坊主頭。力はありそうではある。一方のカルムというのは点呼を取っている青年のことらしい。


「庇ってくれてありがとう。でもああいうの慣れてるし、幼稚すぎて相手する気にもならないから」


 ジェリダは庇ってくれたカルムに礼を言って離れる。これ以上面倒事が大きくなるのは避けたかった。


「集合!!」


 と、予定の時刻になったのか号令がかかった。兵士達は素早く整列を完了させる。一方の冒険者達はというと、人数も少ないため、兵士達の後ろに適当に横一列で並ぶ。整列が完了すると前に今回の調査隊の隊長が前に出た。


「今回、新たに発見されたダンジョンの調査隊を率いる事になったアイザックだ。この調査はダンジョンの推定レベルを測るとともに、新兵の訓練も兼ねている。道中気を抜かぬように。以上!」


(あの人がギルド長の言っていたアイザック隊長か)


 ラドックにメモを手渡された後、二人は今回の隊を率いるアイザックの事を聞いていた。


『アイザックは物事を公平に見る事が出来る男だ。今回のクエストの事をあいつに話しておく。そして、今回のクエストの採点はアイザックに頼む。その結果を聞いてランクアップさせるかどうか、決めさせてもらいたい』


(何が採点されるのかは教えて貰えないかった。とりあえず功績を上げたらいいのかな?)


 アイザックが下がると三人の小隊長が挨拶をしていく。兵士と冒険者を含めた人数は五十名。挨拶の後は隊長のアイザックを含めた四人の隊長の元へ人数を十二、三人の小隊に分けて名前を呼ばれる。


 ジェリダとルベルが呼ばれたのはアイザック率いる第一小隊。だが、そのメンバーは悪意あって組まれたのではないかと思う様な組み合わせだった。つまり、あのジェリダを馬鹿にしてきたデリクとその取り巻きのローレス、フレッドという三人。そしてカルムが同じ隊にいた。もはや、嵐の予感しかしない組み合わせだ。


 ダンジョンまでは隊長と小隊長以外歩いて進む。時間にして一時間ほどでフィルム渓谷までやって来た。


「ここからはロープで下まで言ってダンジョンに入る。この高さだ、慎重に降りろ」


 アイザックは馬を近くの木に縛り付けると的確に指示を出す。


「魔法が使える者は使えない者を下まで降ろせ」


「魔法が使えないカルム君は俺が下まで降ろしてやろうか?」


 先ほどの続きだというように、糸目のローレスが声を掛けている。どう考えても嫌がらせをするつもりの表情だ。ジェリダはさっき庇って貰った恩を返す事にした。


「彼は私が下まで降ろすから。あなたたちは他の人を降ろしたら?」


 ジェリダは人を下に降ろすような移動系の魔法は初めて使うが、何の不安もなかった。ルベルとカルム、あと数名の兵士と共に谷の底へと降りる。


「あの女、また生意気な事を…!」


 坊主頭のフレッドが拳を固めるが、デリクは何やら興味深そうな表情をしていた。


「降ろしてくれてありがとう」


「さっき庇ってくれたお返しだから。また変なのに絡まれたみたいね」


「いつもの事さ。俺が庶民だからって気に入らないんだ」


 からりと笑って見せるカルムにジェリダは感心する。あの三人よりもよっぽど大人だと。


 全員が谷の底に降りると再び小隊ごとに並び、初めてダンジョンの中へ進んで行った。中はとても薄暗く、ジェリダはドロテオのいた隠れ家を思い出していた。松明や光魔法を使ってダンジョン内をぼんやりと照らす。


 初めて入るダンジョン内は意外と天井が高く、道幅も思ったよりも広かった。時折水の滴る音や蝙蝠に出くわすが、魔物の姿は見えない。隊の中には地図を作成しながら歩いている者もいるため、比較的ゆっくりと進んでいる。


 しばらく進んでいると、目の前に二つの分かれ道が現れた。


「うーむ、これは隊を二つに分けるべきか……」


「私がゴーレムを造って斥候の役割をさせましょう」


 そう言ったのは第二小隊にいた冒険者だった。


「それは助かる」


 ジェリダと同じく魔法使いの職業の男は鞄から赤色をした綺麗な鉱石を取り出すと、地面の土で作った簡単なゴーレムに鉱石をはめ込む。すると、ゴーレムはゆっくりと目を覚ます。


「二手に分かれてその先を調査して来い。何かあればすぐに戻るように」


 男が指示するとゴーレムは二手に分かれて走り去っていった。


「ではゴーレムが戻って来るまで休憩としよう」


 そうアイザックが号令を出す。それぞれが地面や岩に腰かけて水を飲んだり談笑をする。ミニゴーレムが帰って来たのは約二十分ほどしてからだった。二体とも体に損傷などは一切なかった。ゴーレムは魔法使いの男から紙を手渡されると、道の状況を紙に書き記す。それが出来上がると、アイザックの元へと持って行った。


「右は道が続いているようだが、左は途中で道が崩れて途切れているのか。ならば右に進むしかないな。さ! 休憩は終わりだ。進むぞ!」


 兵士達は号令で素早く立ち上がり、隊列へ戻る。冒険者の者も自分の所属小隊へと戻って行く。その時、ジェリダは常に発動していた索敵に前方から来る何かの気配を感じ取った。


「前方から何か接近してくる!」


 ジェリダが周囲へ警戒を促した直後、道の奥からぞろぞろと出てくる魔物の姿があった。


「キキィィ――!」


「ビッグアントだ! 調査隊は前に出て盾を使え!」


 ビッグアントはこういった洞窟系のダンジョンに多く生息する赤い大型の蟻だ。だが、ただの蟻ほど小さくはない。ビッグアントが体を起こせば大人の腰ほどまで鋭い顎が届く。油断はできない。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――

名前 なし

種族 ビッグアント

称号 なし

LV 21

HP 280

MP 122

《スキル》

夜目 LV 2

《固有スキル》

なし

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

名前 なし

種族 ビッグアント

称号 なし

LV 24

HP 293

MP 129

《スキル》

夜目 LV 1

《固有スキル》

なし

―――――――――――――――――――――――――――――――――――


(比較的レベルは低い。全体の兵士のレベルが二十五後半ぐらいが多いからそこまで手こずらないと思うけど)


 ジェリダは調査兵が盾でビッグアントを防いでいる間に、魔法を使って援護する。燃える炎の蛇はビッグアントを飲み込んで焼き焦がす。兵士達も盾でビッグアントの顎を防ぎつつ、剣で突き刺している。


「はっ!」


 ルベルも前衛に立ってビッグアントと交戦している。スキルを使うまでもないと思っているのか、単純な剣の技術だけで次々と敵を倒していく。


 戦闘は意外とすぐに終わった。調査隊の倍の数はいたビッグアントだが、それぞれの冷静な判断で対処し、倒す事が出来ていた。あの嫌味な青年エリオルとその取り巻き二人は取り乱すかと思えば、案外落ち着いてビッグアントを倒していた。まだ若い兵ばかりで経験が少ないとジェリダは思っていたが、存外鍛えられているようだと判断する。


「お前中々いい動きするな」


「…………」


 つい先ほどまではジェリダの事を馬鹿にしていたはずのデリクがジェリダに声を掛けてきた。だが、一度不快感を与えられた相手だ。ジェリダはそっぽを向いて距離を取る。だが、デリクはしつこく話しかけてきた。


「女の割に戦闘に慣れてるなんてな。戦闘になったら隅で震えているもんだと思ってたよ。そうだ、お前このダンジョンの調査が終わったら俺の家の傭兵を――」


「これ以上、私に近づかないでくれる? 迷惑だから」


 ジェリダはデリクの喉元に素早く杖から抜き去った刃を向けていた。デリクの女を舐めているような言葉にイラつきを覚えたジェリダは、初めて杖の仕込み刃を抜いた。まだ一度も血に濡れていない刃が、デリクの喉元を舌なめずりして見ている。ごくりと、デリクは唾を飲み込む。


 しばらくデリクを睨んでいたジェリダだが、苛立ちを含んだと息と共に杖に刃を納める。緊張から解き放たれたデリクは止めていた息をゆっくりと吐き出す。ジェリダは他に何も言わずにその場を離れた。


 ジェリダに、しかも女というものに初めて気圧されたデリクは緊張が解けると、沸々とした怒りが腹の底から湧いてきていた。


「あの女、俺の事舐めやがって……!」


 怒りと気圧された事に対する羞恥で顔を赤くしながら、デリクはジェリダを睨み続けた。


次は6月6日21時です。 

【変更】

すみません、更新日を6月7日21時に変更します。

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