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悪食は最強のスキルです!  作者: 紅葉 紅葉
第一章 新米冒険者編
4/88

第4話

《訂正》

 私の貨幣の設定がおかしかったため、訂正しました。

石貨  100円

銅貨  1,000円

銀貨  10,000円

金貨  1,000,000円

白銀貨 100,000,000円

 このような感じで計算していきますので、文章の方に訂正を入れていますが、ストーリーにあまり影響はないので大丈夫です。


「とりあえずお腹が空いたでしょ。二階にご飯食べに行かない?」


 ジェリダが村で作って来た食料は丁度ホロルの町に来る前に朝食として食べきってしまっていた。それに、せっかくできた仲間を祝いたいという気持ちもあった。


「そんな、俺は構いません」


「いいから、いいから。後であなたには……そう言えば名前、どうしようか。名前がないのは不便だし」


「ジェリダ様の好きな名前を俺に付けてください」


「私が付けるの? 私名前なんか付けた事ないし、奴隷になる前の名前があるんじゃないの?」


「その時の俺から生まれ変わるため、新しい名前が欲しいんです。どんな名前でも俺は構いませんから」


「そう言われても……」


 ジェリダは今までの人生で名前を付ける機会なんてなかった。もし動物に着ける名前があるならば、その前に食料として捕獲する。そんな少女がジェリダだ。


 このエルフの少年はジェリダの事を主人として見ているようだった。ジェリダは対等な立場でいたいのだが、少年は奴隷という立場が抜けきらないからなのか、敬語を使う。

 

 名前を付けるのは更に主従関係を深くするようで嫌なのだが、本人に名前を付けてほしいと言われれば断りにくい。どうしたものかと悩んでいると、少年のその赤い目が視界に入った。


「ルベル……」


「え?」


「その目、ルベルっていう赤い花の色そっくり。昔、どこで見たのか覚えてないんだけど、まだ村が豊かな頃にルベルっていう花が咲いていたの。その名前から取ってルベルなんてどう?」


 少年はぽつりとルベルと声を出す。そして、全身でその言葉を噛みしめるようにもう一度口にする。


「……ルベル」


「うん、ルベル。いい名前だよ。気に入ってくれた?」


「はいっ!」


 少年、ルベルはくしゃくしゃの笑顔で答える。その喜んだ表情を見てジェリダは上手く名前を付ける事が出来て良かったと一安心する。


「じゃあ、名前も決まった事だし、食堂に行こう。宿泊費に料金は入ってるらしいからお金は気にしないでいいよ」


「あ、でも宿泊費はジェリダ様がお支払いに……」


「いいよ。一緒に冒険者やってくれるなら。それでチャラにするから。さ、行こう」


 ジェリダはルベルの手を引いて二階へと降りた。二階にはまだ陽が高いというのに酒を飲む者が大勢いた。テーブルは昼時というのもあって空いていなかった。座れるのはカウンターだけだった。


 二人はテーブルの間を抜けてカウンターへ向かう。すると酔った冒険者がジェリダの前へ通せんぼをする様に足を伸ばしてきた。


「おいおいおい、子供がここでなーにしてんだぁ? ここはガキの客が来る場所じゃねーぞぉ。ここは冒険者が出入りする神、聖、な場所なんだ。ガキはママのいるお家へ帰りな! アッッハッハッハッハ!」


 その男が笑いだすと、周りからも下品な笑いが起きる。ジェリダは下らないと、冷めた瞳で男を睨む。


「私はちゃんと冒険者だけど? ここにそのカードもある」


 ジェリダは男にカードを見せる。が、そのジェリダの態度と目が癇に障ったのか男は立ち上がってジェリダを見下ろす。


「んだぁ、このクソガキが。その年で冒険者だ? 偽物なんじゃねえのか、そのカード」


「冒険者ギルドのカード偽装は犯罪でしょ。そんなのも知らないの? おっさん」


「んだとコラァ!!」


 ジェリダの挑発する言葉に男は拳を振り上げる。と、後ろにいたはずのルベルが腕を引いてジェリダを庇う様に立ち塞がった。ずっと手を引いて後ろにいたから分からなかったが、ルベルはジェリダよりも背が高かった。その背を見つめながら男の振り上げた拳がゆっくりとルベルに向かって行くのが見える。はっとジェリダが目を見開く。ルベルが殴られる、駄目だ、ジェリダがとっさに腰の短剣に手を掛けたその時。


「くおおおおらぁぁぁああ!! ここでの喧嘩はご法度だよ!!!」


 食堂中に大きな怒声が響いた。男の振り下ろした拳も寸前でピタリと止まる。食堂がシンと静まり返り、恐る恐るルベルの背後からその声のした方を見る。


「ここで喧嘩した奴は出入り禁止だよ! それに! 子供相手に何乗せられてんだい! 冒険者ならもっとどっしり構えないか!!」


 その声の主はその食堂の女将だった。冒険者ギルドの女将だから恰幅が良いかと言えばそうではない。逆にスラリと細く、美しい女性だった。受付嬢よりも綺麗なその女性の、どこからそんな怒声が響くのか謎なくらい凛々しい女将だった。


 その女将の怒声にその場にいた数多の冒険者が気圧されている。女将はキッと殴ろうとしていた男を睨む。その瞳に射抜かれて男は小さく悲鳴を上げる。


「アルフ! あんた昼間っから子供に喧嘩売る暇があるんならクエストの一つでも終わらせてきな!」


「は、はいいぃぃいい!」


 アルフと言われたその男はすっかり酔いが醒めたのか、仲間と共に逃げる様に食堂を後にした。その姿を茫然とジェリダは見送った。そして、食堂にぱんぱんと女将の手を叩く音が響く。


「ここで喧嘩した奴は私が容赦しないからね! 覚えときな!」


 女将の鋭い言葉に冒険者たちは小さくなり、やがてぼそぼそと会話をしだす。勢いに呑まれていたジェリダはようやく我に返り、カウンターの女将に声を掛ける。


「あの! 止めて頂いてありがとうございます」


「まあまあまあまあ! 可愛い! あなたその年で冒険者なの? すごいわねぇ。食事ならサービスするわよ。でも、ここで刃物沙汰はもっとダメ。冒険者資格を剥奪されるから気を付けな」


 さっきの鬼の形相はどこへやら。ジェリダへと接する態度はどこか既視感を覚える甘さだった。だが、ジェリダが短剣を抜こうとしていたのはお見通しだったらしい。ジェリダは驚いた表情をして、それから小さくはいと返事をした。


「そこの坊やは連れなんでしょ。さっきは偉かったわね。怖かったでしょうに」


「いえ、ジェリダ様を守らなくてはと考えたら体が勝手に動いていて」


「あら、あなたたち主従か何か?」


「あ、あのさっきまで奴隷だったんですルベルは。私に様付けはいいって言ってるんですけど……」


「せめて、様だけでも付けさせてください。俺はあなたに一生尽くす身です」


「あらあら、も~二人とも可愛いわぁ~。好きな物いっぱい頼んでいいわよ。あそうそう、自己紹介がまだだったわね。私はここの女将をしてるルミル・テートよ。よろしくね」


 ルミルはパチリとウインクをした。亜麻色のウェーブの掛かった髪がふわりと揺れる。同性のジェリダでも見ほれるほど魅力のある女性だ。ジェリダは慌てて自身も自己紹介をして、ルベルの紹介もする。


 そして、ルミルが進めてくれた野菜がたっぷり入ったスープとパンを注文する。そして、本当にサービスとしてデザートを付けてくれた。二人はそこで初めて温かい食事で腹を満たした。


 ジェリダが食事を終えてルベルのパラメーターを確認する。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

名前 ルベル

職業 奴隷

種族 エルフ

年齢 15歳

称号 異端児

LV 2

HP 51

MP 63

《スキル》

弓術 LV 2

剣術 LV 1

槍術 LV 1

《固有スキル》

緑の恩恵

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


(うーん、一応食事で少しHPもMPも回復してるみたいだけど、怪我のこともあるしまだ万全じゃないよね)


 ジェリダは魔法を使うための媒体を持っていないため、今ルベルの足を治してやることが出来ない。ルベルのバラメーターはLV2にしては高いと言えるだろう。人間の間隔からすればもう回復したのではと思うが、エルフの万全はLV2でもこれの三倍ほどはあるのだ。


(今日中に媒体とする道具を何か買う? でも節約をしたい。どうしよう……)


 ジェリダの今の所持金は金貨二枚、銀貨七十六枚、銅貨四枚だ。銀貨の枚数が多くなってしまったため、奴隷商の所で袋を大きなものに変えてもらった。今は魔法鞄の中に入れている。


(とりあえずは採取に行こうかな。そんなに高ランクの魔物もいないっていうし。ルベルの緑の恩恵がどのくらいの物なのか見てみたい。採取の後でも北の小人のいるっていう場所へ行ってみよ)


 ジェリダが考えをまとめ終えた時に丁度ルベルの食事が終わった。


「よし、これから西にあるトールの森に採取に行こう。ルベルは自分が緑の恩恵っていう固有スキルを持ってるのは知ってる?」


「え! 俺にそんな固有スキルがあったんですか? それが分かるということはジェリダ様は鑑定のスキルをお持ちなんですね」


「そう。でね、その緑の恩恵は自然に愛されている証なんだって。だから採取に行くと質の良い物が採れやすいみたい。そのスキルがどのくらい使えるのか、見てみたい。それに、質が良かったら値段も上がるみたいだし」


「俺がジェリダ様のお役に立つのならいくらでも頑張ります!」


「足を怪我してるんだからほどほどにね。できれば今日中に治してあげるから」


「そ、それは神官団の教会に行くという事ですか? 構いません、俺にそんな大金をかけて頂く訳には……」


「何言ってるの。私が治すの。ま、ここで話すのはあれだから。トールの森へ行きながら話すから」


「は、はぁ」


 ルベルは何が何だか分かっていないようだったが、ジェリダが席を立ったのでそれについて行く。一階でジェリダはルベルの冒険者登録を行った。


「では、ここに手を翳してください」


 ジェリダの時と同じくリリィが担当してルベルの適正職業を調べる。赤く発行する石板にルベルが手を翳すと、職業が現れる。


『剣士』、『二刀剣士』、『弓使い』、『槍使い』、『魔法剣士』、『魔法使い』、『魔導士』、『神官』が表示される。


「結構適性が多いね。流石エルフ」


「い、いえ。これでも少ない方です。俺のレベルがもう少し高ければ……」


「そんなのこれからでいいよ。で、何の職業にするの?」


「剣士にします」


 即答で決めたルベルは職業を剣士とし、冒険者カードを作成してもらった。冒険者になって正式に剣士の職に就いた事でルベルのパラメーターの職業が剣士へと変化した。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

名前 ルベル

職業 剣士

種族 エルフ

年齢 15歳

称号 異端児

LV 2

HP 87

MP 75

《スキル》

弓術 LV 2

剣術 LV 1

槍術 LV 1

短剣術 LV 1 new

投擲 LV 1 new

《固有スキル》

緑の恩恵

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「HPが増えた分力が増した感覚がありますね。MPも増えていますし、いい感じです」


 ルベルの職業が剣士になったため、奴隷という表示が消えていた。


「スキルに短剣術が新しく追加されるんだね。じゃあ、これはルベルに渡しておくよ」


 そう言ってジェリダは腰に下げていた短剣をルベルに渡した。


「後で剣の方を調達するけど、それまで仮の武器としてこれを使って」


「あ、ありがとうございます。大切にします!」


「いや、そんな大切にしなくていいから。後でちゃんとした剣を買うから」


 元々は術者の男が持っていた短剣だ。ジェリダが護身用に持っていたが、短剣術のスキルを得たルベルの方が上手く使えるだろうと思い手渡しただけなのだが、ルベルは予想以上に喜んでいた。


 二人はギルドを出てようやくトールの森を目指し出した。ジェリダはルベルが付いてきやすいように歩調をゆっくりにして歩く。ルベルはジェリダの一歩後ろを歩いている。横に並んで歩けばいいと言ったのだが、自分は並べる様な者ではないと頑なに拒んだ。


 差別される側にも自分たちが差別されているという意識があるように、今まで虐げられてきたために、普通の奴隷と同じような行動を取ってしまうのだ。それを少し腹立たしいと思う一方、悲しく思うジェリダだが、これはのちのち教育していこうと考えた。


 トールの森はホロルの町を出て少ししたところにあるという事を西の門番に聞いた。通過するには通行証明書をルベルの分を発行する必要があった。ルベルは再び自分のために通行料が必要になったという事に謝罪を繰り返してきたが、ジェリダは『何度も謝らない!』と一喝して黙らせた。


 門を過ぎてから、ぽつりぽつりとジェリダは自分の能力について話し出した。


「私ね、突然自分に固有スキルが出来たの。それが悪食っていうスキルでさ。食べた者のスキルや身体的特徴を手に入れる事ができるんだって。その力で私は職業を手に入れる前に魔法についての知識を持ってたの。で、どうして私がルベルの足を治せるって言ったのか。それは私の回復魔法のレベルが8だから」


「っそ、それは、神官団の上位神官並みの――――」


「声が大きい。だから、もう少しして杖かなんかの装備を買ったら、その足を私が治してあげる。いい、このことは迂闊に喋らないこと」


 ジェリダは大きな声を出したルベルの口をとっさに塞ぐ。ルベルは声を封じられたまま、こくこくと頷いた。


「よし」


 それ以上ジェリダは話す事はなく、トールの森へ向かい歩いていく。


 その時、ジェリダは自分がどれほど貴重なスキルを持っているのかという事をまだ自覚が足りなかった。神官並みに回復魔法が使えるというのが、どれほど価値のあるものか、それを後で知る事となる。





 トールの森はホロルの町に接している三国の内の一つ、カラル国の国境をまたぐようにして存在している。奥に行けば力の強い魔物も多く、ダンジョンも存在する。だが、薬草が生えている場所は比較的安全な場所で、モンスターのレベルも低い。駆け出しの冒険者が向かうには絶好の場所と言える。


 門を抜けて歩くこと十分。すぐにトールの森へと辿り着いた。入り口と思われる場所には立て札で方向が示してあった。森の入り口はあまり大きくない木々ばかりで日当たりが良かった。


「じゃあここで薬草を採取する訳だけど、何が薬草なんだろ」


 ジェリダはリリィに渡されていた薬草のリストをパラパラとめくる。


「ベトニー、リアン、トロープ、ベルガモット……多すぎて覚えられないんだけど……」


 ジェリダの村は枯れた土地のために瑞々しい草は滅多に見た事がなかった。殆どの植物は枯れているか、茶色の植物しか見た事がないジェリダにはどの草も同じようにしか見えない。それぞれ薬草には値段や質によっていくらになるかなども書かれている。


 できれば高額な物を取って帰りたいジェリダだが、見分けがつかなそうだった。と、薬草リストを覗き込んだルベルは、あ、と声を出した。


「俺、ここに載ってる薬草、大体知ってます! 一緒に探しながら教えましょうか?」


「本当? 私植物なんて全然見たことなくって。そうしてくれると助かる」


「こんな俺がお役に立つのなら、いくらでも」


 ルベルはやっと自分が役に立てるということが嬉しいのか、張り切っている。


「まずは一番見分けの簡単なベトニーから探しましょう。これはギザギザとした濃い緑の葉に紫色の花が咲いているのが特徴なんです。日当たりのいい場所に自生していて乾燥させてハーブティーにすると頭痛なんかを抑える効果があるんです」


「すごく詳しいんだね」


「はい、奴隷になる前、俺の母が色々な事を教えてくれました。父も俺に武術を教えてくれたので、今のスキルがあるのは父のお陰なんです。二人ともこんな異端の俺を大事にしてくれました」


「それは、いい両親だね」


 薬草を探すためにしゃがんだルベルの言葉は、過去形だった。それは恐らく奴隷として捕まる際に離れ離れになったか、死んだのか。定かではないが、ルベルの言葉には両親のことを諦めているような雰囲気があった。


 ジェリダ自身は親の顔を見た覚えがない。ただ、子供たちの中でも年長だった者がジェリダを育ててくれた。生きる術を教えてくれたのもその年長の者だった。もう、あの時に死んでしまったが。


 この世界で孤児は少なくない。ジェリダが生まれる少し前に大きな戦争があり、多くの子供たちが孤児となった。ジェリダの村はその影響で被害を受け、そして見捨てられた。だから誰も自分が孤児であるということを悲観しない。それが、この世界の普通だからだ。


 ジェリダはルベルに薬草について教えてもらっていたとき、背後の草むらが、がさりと揺れた。二人が音のした草むらを振り返ると、そこにはあの食堂でちょっかいを出してきたアルフという男と、仲間二人が立っていた。


「こんな所でまた会うとは偶然だなぁ。さっきはよくも俺に恥をかかせてくれたな、クソガキども」


 アルフは芝居がかった口調で再会を口にする。何かを企んでいる雰囲気のアルフにジェリダもルベルも警戒を強める。


 今はアルフから助けてくれた女将のルミルはいない。周りにも冒険者がいない状況で何かされても発見が遅れてしまう。これは二人にとって最悪の状況と言えた。


「おめぇら、俺たちが何でこんな駆け出し冒険者の来るトールの森に来たのか分るか?」


 腰巾着その一が偉そうに近寄ってくる。ルベルはジェリダを庇うように立ち上がる。ジェリダも立ち上がり、いつでも対応できるように足に力を入れておく。ジェリダは素早く三人のパラメーターを視る。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

名前 アルフ・ブロック

職業 武闘家(モンク)・拳闘士

種族 人間

年齢 41歳

称号 なし

LV 32

HP 810

MP 422

《スキル》

格闘術 LV 4

拳術 LV 4

護身術 LV 2

威圧 LV 3

体術 LV 3

剛腕 LV 4

柔術 LV 2

手加減 LV 1

《固有スキル》

なし

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

名前 グレッグ・ホガース

職業 暗殺者

種族 人間

年齢 34歳

称号 なし

LV 28

HP 670

MP 358

《スキル》

隠密 LV 3

足音遮断 LV 2

索敵 LV 3

夜目 LV 3

回避 LV 4

投擲 LV 3

暗殺術 LV 2

短剣術 LV 3

聴覚強化 LV 4

《固有スキル》

なし

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

名前 ヘナロ・ルース

職業 神官

種族 人間

年齢 29歳

称号 下位神官

LV 26

HP 582

MP 674

《スキル》

回復詠唱 LV 3

神聖魔法 LV 2

詠唱速度上昇 LV 2

白魔法 LV 2

《固有スキル》

なし

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


(かなりレベルが高い。特に前衛職のアルフとグレッグっていう男をどうにかしなきゃいけないんだけど……。ここに来る前に北に行って装備を整えておくんだった)


 ジェリダが男三人のパラメーターを視て冷や汗を流していると、腰巾着その二であるヘナロが口を開いた。


「お前、回復魔法がレベル8なんだってな」


「……何を根拠にそんなこと」


「俺が聴いたんだよ。お前たちの会話をな。俺のスキル、聴覚強化は遠くの声も聞き取ることが出来るんだよ。だから、ここへ来る途中の道でお前たちの会話を聴いたのさ。

 そしたら、ただのガキだと思ってたお前が、回復魔法のレベルが8だと? そんな天から金が降って来たみたいな話し、逃がす訳にはいかねぇだろ」


(迂闊だった。あの時会話を盗み聞ぎされていたなんて)


 自分の迂闊さを後悔しつつも、ジェリダは言葉を発する。


「どういう意味よ」


 ジェリダはグレッグの言った意味を何となく勘付いていた。だが、聞かずにはいられない。アルフはワザとらしく首を横に振りながら溜め息を吐いた。そして、にやりと表情を歪める。


「お前のその力があれば町で冒険者の傷を癒す商売ができる。神官団よりも安い価格でお前の力を売れば、がっぽり稼ぐことが出来るだろ? そんなことも分からねえとは、ガキはガキだなぁ」


 要するに男たちはジェリダの回復魔法の力を使って稼ごうということだ。だが、男たちの考えは浅はかとしか言いようがなかった。


 例え、ジェリダが男たちの商売に手を貸して冒険者たちの治癒をしたとしても、男たちは神官団よりは安く治療をするだろうが、最低でも銀貨五十枚ほどは取るつもりだろう。それで男たちは満足かもしれないが、神官団の者たちはそうはいかない。


 強大な組織とぶつかってしまうという事は死を覚悟しなくてはいけないだろう。自分たちの商売敵と言える男たちを殺しに来ることは間違いない。そんなことも分からない男たちにジェリダは辟易した。


「どうだ? 俺たちと来いよ。そうしたら分け前をお前にもくれてやるよ。あぁ、だけどそのエルフのガキは駄目だ。元奴隷だろ、そいつ。そんな汚らしい奴を仲間にしたくないからな。ここで死んでもらうが……来るだろ、ガキんちょ」



「……金儲けしか頭にないようなあんたらに誰がついて行くもんか。それに、私はあんたらみたいに汚らしい奴は大っ嫌いなんだ」


「このガキが! 生意気言いやがって! どうせ相手はガキだ。力ずくでも連れて行ってやるよ!」


 アルフが大声で激怒すると拳を振り上げた。ルベルは短剣を素早く抜いたが、暗殺者のグレッグが投擲スキルで投げた短刀がルベルの短剣を弾く。


「っつ! ――ぐはっ!」


 ルベルが短剣に気を取られたその一瞬。アルフの拳がもろにルベルの腹に食い込んだ。ルベルはジェリダを飛び越えて後ろへと殴り飛ばされた。


「ルベル!!」


 吹き飛ばされたルベルはそのまま気を失っていしまったのか、ピクリとも動かない。その光景を見てジェリダの中で何かが渦巻いた。


「はっはははは! こんなもんかよ! 手ごたえがねぇなあオイ! お前のナイト様はやられちまったぞ!」


「流石兄貴! いい拳だぜ!」


 ヘナロがアルフを囃し立てる。だが、そんな言葉、ジェリダの耳には入っていなかった。


「――――てやる」


「あ? 何だってガ――――」


 ガキ、とアルフが言おうとして、その言葉は永遠に(・・・)続くことはなかった。グレッグとヘナロの目の前でアルフの頭が、綺麗に無くなっていた。


「……は? 今、何が……」


 アルフのなくなった首の切断面からは肉の焼ける匂いが漂っていた。首を失ったアルフの体はぐらりと傾き、背中から地面に倒れた。一瞬の間に何が起きたのか分からないグレッグとヘナロは、ごうごうと燃える音を聞いて振り向く。


 そこには炎の蛇を纏ったジェリダの姿があった。



次は2日後の3月20日に更新します。

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