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悪食は最強のスキルです!  作者: 紅葉 紅葉
第二章 ワ国編 
35/88

第35話

 昨日はすみませんでした。第35話。楽しんでいただけると幸いです。

 それと、今月いっぱい、更新が遅くなります。楽しみにして頂いてると思いますが、何卒ご了承ください。


 カスミは自らの腕を無残な形にされたショックからか気絶した。と、ジェリダは一瞬、カスミではない何者からか殺気を感じ取った。とっさにジェリダは全員を守るように土の壁を構築する。それと同時に二発分の銃声が聞こえた。


「どこから撃ってきているんだ…!」


 ジェリダのとっさの判断により誰にも怪我はない。だが、壁を貫通しかけた球が勢いを無くしてコロリと地面に転がった。土の壁に小さな穴が開く。その場所はカスミの頭の近くだった。恐らく敗北したカスミを始末するためだったのだろう。


「この場所に居れば危ないわ。一度屋敷に上がらせてもらいましょ」


 ホタルの提案でスズナミの屋敷へと上がる。気を失ったカスミをアオイが抱き上げ、部屋の奥に連れて行く。アオイはだらりと下がったカスミの腕を見て少し眉をしかめた。だが、ジェリダに何も言わない。友を目の前で殺されるよりもよっぽどましだからだ。裏切ったとしても友だとアオイは思っていた。


 屋敷にいる使用人達にわけを話し、奥の部屋に隠れてもらう。そして、適当な奥の部屋でアオイはカスミを降ろす。ぽっかりと穴の開いた腕。傷は塞がっているが、見ていて気分の良いものではない。


「私を恨む?」


 突然、ジェリダがそう問いかけた。だが、アオイは首を横に振る。


「いや、私達はカスミを斬る覚悟、勇気などなかった。ジェリダがカスミを殺さないでくれただけで私は嬉しいよ。もう、カスミが二度と槍を持てないのだとしても」


 ホタルも内心は複雑だろうが、命を奪われるよりもマシだと思っていた。ましてや他人に殺されるよりは遥かにいいだろう。


「それより、私達は風見山に向かわなければならない。ホオズキ達がいないのは戦力として少し不安ではあるが、封印を解かれる訳にはいかないからな」


 そう言ってアオイはジェリダに向き直った。そしてアオイはジェリダに頭を下げた。


「ジェリダ。私達のせいでこのような事態になったのは分かっている。だが、今は少しでも戦力が欲しい。どうか、手を貸してくれないだろうか」


 今、この混乱の中動ける者は少ない。それに加えて並みい以上の実力が必要となれば難しい。武将五家の先代達は今事態の収拾や指揮を当主に変わって行っている。実力はあるが、今彼らを抜けさせる訳には行かない。


「いいよ。私の力がどこまで通用するか分からないけど」


「本当か!? ありがとう、ジェリダ」


 ジェリダの快い返事にアオイはパッと顔を上げて喜ぶ。ホタルは異論がないのか何も言わない。かなりのショックを受けていたホタルだが、気合を入れなおして立ち上がる。


 一先ずカスミは両腕を無くしたと言っても武将五家の当主だったのだ。目が覚めて何をするか分からない。スズナミの屋敷にいる使用人に訳を話して、地下牢を借りてそこにカスミを拘束する事にした。地下牢ならば銃撃が届く事はない。


「よし、行くぞ」


 アオイを先頭に三人は風見山へと向かう。風見山はスズナミの屋敷からは近い。だが、風見山に封印されているという狼虎は風見神社という所に玉に封じる形で残されている。もし明けの塔の者にその玉を壊されて封印を解かれれば、その時は狼虎がこのワ国に顕現する事になる。それだけは阻止しなければならない。


 三人は長い石畳の階段を駆け上がる。ジェリダは少し息が上がっているが、武将五家の当主を務めるアオイとホタルは息を切らしていなかった。


 また、ジェリダは微かな殺気を感じ取る。今回はアオイもホタルも感じ取ったのか、瞬時にその場を飛び退いた。


「ああ、流石に気付いたか。残念」


 その声はジェリダよりも上、神社の鳥居の前から聞こえた。そこにいたのは何丁もの銃を身に付けた男だった。明るいブロンズ色の髪を後ろに流している。グレーの瞳はまるで猛禽類のように鋭い。獲物に狙いを定めるように三人を見下ろす。そして、


「ようこそお嬢さん達。そして、さようなら」


 二丁の銃を同時に発砲した。




 その頃、タチバナとホオズキの二人はワ国へと戻ろうとしていた。スズナミの事は助ける事が出来なかったが、コウリョクの命は何とか食い止めた。今コウリョクは静かに眠っている。そのコウリョクを部下に任せ、ホオズキは立ち上がる。


 ホオズキは自身の魔力の半分近くを消費してしまったが、まだやる事は多く残っている。まずはワ国に戻って風見山に向かわなければならない。


「ホオズキ、顔色が悪いぞ。少し休んだ方が――」


「この混乱を加速したのは俺達だ。そんな時に休んでいられるか」


 ホオズキは短時間に魔力を大量に消費したせいで、一気に疲労が襲って来ていた。だが、この事態に責任を感じているホオズキはタチバナの提案を一蹴する。それ以上タチバナは何も言わない。


 ホオズキはすぐに転移術を行使してワ国へとタチバナと共に戻る。だが、その転移先は武将五家が集まっていた屋敷ではなく、タチバナ家だった。


「この大馬鹿者がああぁぁぁぁあああ!!!」


「っ!」


 転移してすぐにホオズキは鋭い飛び蹴りをその身に食らう。大広間の中心から端の方まで吹き飛ばされる。とっさに受け身を取ったホオズキだが、柱に背を強かに打ち付け動けない。痛みに呻く声が聞こえる。そして、そんなホオズキを蹴り飛ばした張本人は、呆気に取られているタチバナの横で憤慨している。彼はホオズキの先代であり父親のガンリュウだった。転移術の気配を感じ取ってこの大広間にやって来たようだ。


 当主でなくたった者は当主になる前に名乗っていた名前に戻る慣習だ。それは武将五家のどの家も同じだ。ガンリュウはホオズキよりも鳥獣人の血が濃く、その顔には尖った嘴が付いている。その口を大きく開け、ホオズキを叱責する。


「我らのお役目を忘れたか! 何故ワ国を何も言わずに出た! 状況の不安定さは分かっていただろう! 貴様もだタチバナの小僧!」


「はっ、返す言葉もありません」


「それよりも親父、あの札を寄こせ」


 ようやく立ち上がったホオズキはガンリュウに片手を差し出す。


「貴様、まだ説教は――」


「風見山の狼虎の封印を解こうとしている者がいるんだ! いいから寄こせ!」


「むっ……」


 まだ説教をしようとしたガンリュウだったが、狼虎の話しが出てその表情に緊張が走る。そして、先ほどまでの怒りを鎮め、低い声でホオズキに問う。


「それは本当か」


「ああ。今このワ国に入って来てる明けの塔の奴ら、あいつらは恐らく狼虎を復活させるのが狙いだ。もし、そんな事になれば俺が封をし直さなくちゃならない。だから、あの札を寄こせ」


 ホオズキが言っている札とは、今までのホオズキ家当主達が己の力を籠めた強力な札の事だ。その札は一枚しかなく、当主だった者が死んでから次の物に引き継ぐ。まだ先代の健在であるホオズキ家はガンリュウがその札を持っていた。


「分かった。少し待て」


 そう言ってガンリュウは大広間を出て行った。そして戻って来るとその手に赤い札を手にしていた。


「これは約二百年分の歴代当主達の力が籠められている。目覚めたばかりの狼虎ならば封印できるだろうが、力を取り戻されればこの札を用いたとしても難しいやもしれん。くれぐれも気を付けろよ」


「ああ」


 ホオズキはその札を受け取り、懐に大事に仕舞う。そしてタチバナに声を掛ける。


「タチバナ、特別に俺が風見山まで飛んで運んでやるよ」


「ああ、すまない」


 ホオズキは外に出ると大きく羽根を広げた。籠を用意すれば重さでスピードが落ちる。ホオズキはタチバナの両手を持って風見山へと飛んだ。


 その姿を見送りながら、ガンリュウは狼虎の封が解かれないことを祈るばかりだった。


次は5月19日21時に更新です。

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