表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪食は最強のスキルです!  作者: 紅葉 紅葉
第二章 ワ国編 
27/88

第27話

 かなり短めですみません!


「すみませーん。誰かいますかー!」


 ジェリダは錬金術ギルドの中に入り、相変わらず誰も店番がいない店内に声を掛ける。店が開いているという事は一応営業はしているという事だ。どうせ店の奥にあの青年がいるのだろうと、ジェリダは声を張り上げる。


「すみませーーん!!」


「はいはいはい! 誰だよ、でかい声出しやがって……」


 以前と同じようにカウンター近くの扉から姿を現した青年。ジェリダがあまりにも大きな声を出したせいか、どこか不機嫌だ。だが、そんな事を気に掛けるジェリダではない。さっそく青年に魔石を入れた袋を見せる。


「これ、今回は買い取って欲しくて来たの」


 青年はカウンターに置かれた魔石に目が釘付けになる。心なしか目にお金のマークがついているようにも思える。


「わわわ…、これだけの魔石があれば……」


 ウハウハとした表情で魔石の入った袋に手を伸ばそうとした青年から、スッと袋を離す。


「これを渡すにはちょっと私の話しを聞いて欲しいの。というか、取引しない?」


「は? がきんちょが俺と取引?」


 がきんちょ、その言葉に青筋を浮かべかけたジェリダだが、ここは堪えろと自分の気持ちを鎮める。


「そう。あ、自己紹介が遅れたわね。私はジェリダ。このホロルでBランク冒険者をしてるの」


「は!? その年でBランク冒険者!? 嘘だろ」


「嘘じゃない。ほら」


 ジェリダは自分の冒険者カードを示す。青年の目にはパラメーターは見えないが、名前やランクなどの情報はみる事ができた。そして、そこにしっかりとBランク冒険者と表示されているのを確認した。


「マジかよ。こんな子ども――」


「ジェリダ」


「ジェ、ジェリダさんがBランクなのは分かったけど、何の取引をしたいって?」


 青年はジェリダの名前を聞いても何の反応も示さない事から、あまり外に出て誰かと交流するという事をしていないのが分かる。


 何せ、最年少でBランク冒険者になったジェリダの名はホロルの町では有名になっている。一般市民の間でも徐々に広まりつつある中、この青年はジェリダの事を全く知らなかったようだ。


 それはジェリダにとって非常に好都合だった。人は先入観や外見でその人物を判断しやすい。外見は先ほど冒険者ランクを示す事でどうにか誤魔化したが、先入観、特に噂で尾ひれの付いた情報というのは大きな影響力を持つ。この青年がそれを持っていないのは幸いだった。


「具体的には、ポーションをもっと安く町の人々にも使えるようにしたいの。質は落とさずにね」


「はあ!? そんなの無理だ! なにせ俺達錬金術ギルドは技術の秘匿が大事なんだ。人の怪我や病を治す事のできるポーションを一般人に安価で、しかも今の質を落とさずに販売するなんてこっちに損しかない」


 今のポーションの最低価格は銀貨十枚。しかも、一番質の悪い五級ポーションでだ。冒険者の平均収入は銀貨十二枚。一般市民は八枚ほど。到底、いくつもポーションを買う事はできないうえ、買っても五級ポーションでは風邪を治す程度の効力しかない。


 それをジェリダ一般の人々でも買いやすい値段にすると言っているのだ。もしそれが叶ったとしても収益は大きく減るだろう。


「それに、何でこんな小さな錬金術ギルドにその話を持ち込んだんだよ。俺に言ったって上の方々に申し立てなんかできないからな。俺は下っ端もいい所なんだから」


「別に、下っ端だろうが上の人だろうが関係ない。重要なのは、同じ質の物をどこよりも安く売る(・・・・・・・・・)って事」


「だから、それが不可能だって言ってるんだ。そもそも、俺らと冒険者ギルドは仲が良くない。だからクエストを依頼しても中々受注してくれないから、素材も手に入りにくい。まずはその関係がどうにかならないと話にならないと思うけど」


 青年は腕を組んで全てを否定するばかり。しかもその内容は大きな概念を捉えているため、足元の小さな光が見えていない。ジェリダはここからが本番だ。そう自分に言い聞かせ、纏う空気を一変させた。


「ギルド同士の中が悪くても、個人個人なら仲良くなれると思わない? 昨日、ポイズンラーヴァのクエストを受注したのは私とそのパーティーなの。それに、私はあなたに貸しがあるはずなんだけど?」


「あ……」


 青年は貸しという言葉に心臓がドキリと跳ねる。そして、心当たりがあるゆえの気まずさから組んでいた手をほどき、頬を掻く。手を組んでいる時、人は自分を無意識に守ろうとしているサインだ。それがほどけた今、更にジェリダは優しい、穏やかな声で語りかける。


「貸しって言っても、そんな大きな事を返せなんて言わない。ただ、私が今から言う事を聞いて欲しいの」


 年下に貸しを作っている気まずさと恥ずかしさ。あの時の青年は本当に食事をするための金もなくなっており、思わずジェリダが持ち込んだ魔石をタダで受け取ってしまった。少しだけ、青年の態度が軟化する。


「内容は……」


「まず、この魔石を錬金術ギルドに売って、資金をつくって欲しいの。私も少しは出すから。で、そのお金で大きめの荷車、それと折り畳みのできる屋台がいるかな。衣装はこっちが作るから」


「い、いやいや待ってくれ。一体何をしようとしてるのかさっぱりなんだが」


「期間限定で店を出すの。東西南北、そして中央に日を変えて。そこでポーションを売る。宣伝を兼ねて最初は無料でポーションを試して貰うの。

 一般の人々は高くて手に入らないポーションの効力を疑っている部分もあるから、診療所みたいな形で怪我や病気の人にその場でポーションを飲ませて効力を見せる。そうすれば疑いの目も減るでしょ」


「つまり、俺にはその診療所もどきをやるための荷車、屋台を買えと? それだけ?」


「まあ、その診療所もどきをやる時にあなたには手伝ってもらうけど、それだけ。残ったお金は少しは生活費に使っていいよ。何か問題、ある?」


 青年はもっと大きな何かを吹っ掛けられるのではと心中穏やかではなかったのだが、ジェリダの提案が思いの他やれる事ばかりで拍子抜けしてしまっていた。


「その、ポーションを無料で使って、宣伝をしたとする。そこからはどうするんだ」


「いつ、どこで、どれくらいの値段でポーションを売るのか集まった人々に言うんだよ。とりあえずはそれでやって行けばいいよ」


「なら! 材料はどうするんだ! 材料はもうこの際だから言うが、ベイという薬草が五つ、魔石が十グラム、ポイズンラーヴァの毒針が二本必要なんだ。それを集めるにはどうするんだ」


「私、魔物使い(イビルテイマー)だから今ゴブリン達に魔石の回収を頼んでる。この魔石は今日集まった魔石なの。この調子なら沢山納品できると思う。それと、薬草は私のパーティーの一人が集められる。しかも品質の良い物を。

 で、これから北門を抜けてポイズンラーヴァを使役にしてくるから、それで毎日毒針も納品できる。これでどう?」


(材料が揃えばポーションはいくらでも作れる。俺に損は今の所ない。これはいい話しなんじゃないか?)


 青年は少し黙ってジェリダの提案内容を吟味する。だが、断る要素はない。


「そのポーションを売ったとしてその利益は同分けるつもりだよ」


「私がこの話を持って来たんだし、私が六、あなたが四でどうかな」


「……いいだろう。その話しに乗ろうじゃないか」


「そう、よかった。じゃあ、そろそろ名前を訊いてもいい?」


「あぁ、まだ言ってなかったか。俺はレント・ラーウェルだ」


 ここから少しずつ、様々な歯車は回っていく。




 次は4月3日21時に更新です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ