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悪食は最強のスキルです!  作者: 紅葉 紅葉
第二章 ワ国編 
25/88

第25話


 初めて魔物を使役としたジェリダは、使役第一号のゴブリンを使い、他のゴブリンをこの池の場所まで誘き寄せる事にした。


 そして、ジェリダが三匹目のゴブリンを使役に置いた頃に、使役語の効果が効きやすい方法が分かってきた。


 まず、使役に置こうとしている相手が自分に気付いていない時や気絶、または眠っている時が一番聞きやすいという事。次に聞きやすいのがある程度傷を負わせ、相手の戦う意思などが小さくなった時が使役にしやすいという事が分かった。


 ついでにジェリダはドロテオから得た支配と洗脳のスキルを使役しているゴブリンと、野生のゴブリンに使ってみる事にした。だが、結果は失敗だった。どうやら、この二つのスキルは対人用のようで、ゴブリンに行使しても何の変化もなかった。


「なるほど。スキルにも対人用とかあるのか」


 ジェリダが一人納得する中、使役にしたゴブリン達が周りを走り回ったり、遊んでいる。まるで小さな子供のようだ。


「【整列】」


「グギャ?」


「グギャギャ」


 使役にした四匹のゴブリンの内、ジェリダの指示に従ったのは二匹だけだった。ジェリダの前に横に並んだゴブリンはじっと指示を待っているようだが、残りの二匹は互いに追いかけっこをしている。


 ただ使役にしただけでは完全に言う事を聞くという事ではないらしい。


「ほほーう。こういう時に調教スキルを使うとどうなるのかな……」


 ジェリダは剣呑な雰囲気を醸し出しながらその辺に落ちていた適当な枝を拾い、指示を聞かなかった二匹のゴブリンに近づく。


「グギ? グギャァ!」


「グギャギャァ!」


 その後、その二匹はしっかりと調教され、ジェリダの指示に従うようになったのだった。




◆◇◆


「アオイは今回も欠席か」


 剃髪の男が集まった一同を見て呟いた。ただどっしりと座っているだけにもかかわらず、一切の隙が無い。すると、その隣に座っていた黒髪に、見事な黒い翼を持った男が話しかける。


「タチバナは知っているか? 最近、巷では噂ではアオイは行方不明だと囁かれているのを」


 扇子で口元を覆いながら、少し皮肉気な表情で喋る姿に、ある少女が反応する。どこの国に行っても珍しいと言える薄い紫色をした髪の少女が、ホオズキという男に食って掛かる。


「ちょっとホオズキ! そんな事を不用意に口にしないでよ! アオイは何か理由があって……」


「でもカスミ、考えてもみなさい。毎回、武将五家の集まりに遅れたり来なかった事のなかったアオイ。それが突然来なくなった。ホオズキのいう噂が広まったとしてもおかしくないわ」


 ホオズキに強気で反論するカスミという少女を制したのはこれまた珍しい髪色をした少女だった。その少女は利発的なカスミとは対象的で、神秘的な雰囲気を有していた。白い髪に透き通るような白い肌。睫毛すらも真っ白だった。流した長髪からは長いウサギの耳が見える。


「ホタル! あなたまでそんな事を――!」


「そこまでにしろ。ここでいくら話した所で本人がいないのでは、ただの憶測にすぎん」


 落ち着いた声で制したのはタチバナだった。タチバナはこの場でのまとめ役だ。軌道を修正するのも、諍いを制するのもタチバナの役割である。カスミはまだ言いたい事があるようだったが、仕方なく口を噤んだ。


 先ほどから四名が言葉を交わしているのはワ国のとある屋敷。ここでは定期的に武将五家と言われる家の当主達が集まる事になっている。


 武将五家、それはワ国が今のように落ち着く遥か昔。約三百年程前に起きた戦にて、大きな武功を上げた五人の将軍がワ国を守護するために生まれた。


 それぞれの家の名はタチバナ、ホオズキ、アオイ、ホタル、カスミ。代々その家の当主となる者は、家の名を冠する決まりとなっている。つまり、ここに集まっている四人。タチバナ、ホオズキ、ホタル、カスミは家の名を冠している事から、ワ国を守護する武将五家の当主と分かる。


 武将五家はそれぞれ得意とする戦い方がある。タチバナ家は武術に長け、ホオズキ家は呪術。アオイ家は剣。ホタル家は弓、カスミ家は槍。それぞれが家の中で最も優れた実力を持っている。


 武将五家には獣人も混じっている。タチバナ、カスミは人間。今はこの場に居ないアオイ、ホオズキ、ホタルはそれぞれ狐獣人、鳥獣人、兎獣人だ。タチバナ、カスミは人間ではあるが、家系図を辿れば少なからず獣人の血が混じっている。その為、純粋な人間と違って身体能力が優れている。


「それで、今日は何のために集まったんだ? もしや、アオイを探すなどと言うのか」


 再び口を開いたのはホオズキだった。ホオズキの問いにタチバナが答える。


「ホオズキの言う通りだ。だが、それに関連してここ最近、明けの塔という組織が密かに、この国に入り込んでいるようだ。恐らくアオイはその者達と何らかの関係があるはずだ」


「アオイはそいつらと関係があるって言うの!? そんなはずない!」


「カスミ、幼馴染とはいえ、少し落ち着け。そもそも、ホオズキもホタルも黙っているが、もう情報は仕入れているのだろう。アオイは家を逃げたのでも、ましてや明けの塔に与したのではない。アオイは明けの塔によって攫われたのだと」


 その言葉を聞くとホオズキは鼻で笑った。扇子をパチンと閉じて手の中に収める。


「ハッ。何だもう知っているんじゃないか。面白くないな」


「あなたの悪い所はすぐに相手の神経を逆なでたり、ちょっかいを掛ける所よ」


「血筋だ。代々こんなものだよ、私の家は。そういうお前の所も気取った喋り方は血筋だろうが」


「口を開けば諍いを始めるのはいい加減にしろ。話が進まん」


「それで、明けの塔って言うのはこの国で何をしようとしてるの? カスミ家で調査背せてるんだけど、中々尻尾が掴めないの」


「それは我がタチバナ家でも同じだ。俺やカスミの家よりも、ホオズキ家の方がそういった事は得意だろう。何か知らないのか」


「奴らも中々手練れのようでね。珍しく手こずっている。そろそろ私が動かなくてはいけなくなりそうだ。だが、今の段階ではっきり言えるのは、誰かが手引きした可能性がある。という事だ」


「……ふむ。ではしばらくはアオイの行方の捜索と、明けの塔についての情報を集める事にしよう」


 タチバナのまとめの言葉でその場は解散となった。ホオズキやタチバナはすぐに帰って行ったが、カスミはその場に座ったまま動かなかった。ホタルも座布団から腰を上げようとした時、カスミが声を掛けた。


「ねぇ、ホタル。あなたは自分がどうして普通の家に生まれなかったのかって、考えた事ある」


「……唐突ね。どうしたの」


「いいから答えてよ」


「……そうね。私はあまり自分というものに興味がないの。大体の事に興味がないし、言われるがままにしていたら、いつの間にか当主になっていただけよ。だからそんな事考えた事ないわね」


「まるで人形ね……」


 カスミの皮肉気な言葉にホタルは特に気を悪くした様子もなく、逆にふわりと、この場の雰囲気には相応しくない優し気な笑みを浮かべた。


「あなたは私が人形のように見えるのかもしれないけれど、私からすれば、あなたの方がよっぽど人形に見えるわよ。あなたは自覚がないでしょうけど」


 何か含んでいるような物言いでそれだけ言うと、ホタルは立ち上がり、廊下を渡って帰って行ってしまう。その場に一人残されたカスミは強く、拳を握りしめた。




 ジェリダが三時間みっちりとスキル強化して、集合場所に行くと、既にルベルとアオイが集まっていた。


「ジェリダ様、お疲れ様です。何か成果はありましたか?」


「まて、ジェリダ。その後ろにいるゴブリンの集団が成果などとは言わないよな」


「あれ、気付いた? 出ておいで」


 アオイがジェリダの後ろの茂みに隠していたゴブリン達を呼ぶ。そしてそこからぞろぞろ出て来たゴブリンの数は何と二十匹以上。あれからジェリダはあの廃村にいたゴブリンを全て、使役にしてしまったのだ。しかも、皆言う事を聞くように調教済みだ。


「こ、これは……」


「こんなにゴブリンだけを使役にしたのか……?」


 流石の二人もあまりの数の多さに頬を引き攣らせる。だが、ジェリダが使役にしたのはゴブリンだけではなかった。


「ついでに近くにいたホワイトウルフも使役にしてみた」


 そう言ってジェリダはホワイトウルフを口笛を吹いて呼ぶ。するとすぐにホワイトウルフが茂みから飛び出してくる。しかも、群れごと使役にしたため、五匹という数だ。白い毛に覆われてあの使役の証である印が見えにくいが、指示を出した際に発光するので使役には出来ている事が確認できる。


 ホワイトウルフはブラックウルフの変異種から進化したとされ、ブラックウルフよりも体格が一回りほど近く大きい。ブラックウルフの体長が約百センチだが、ホワイトウルフは約百七十センチほどある。ジェリダがやルベルも余裕で乗る事ができる大きさだ。


 こちらは中々使役にするのが難しく、魔法で眠らせたり魔術で幻覚を見せる事でようやく使役にする事ができた。今は噛んだり攻撃をしたりという事はないが、まだまだ指示を聞かせるのは今のスキルレベルでは難しい。


「これはまた大所帯になりますね……。このゴブリンとホワイトウルフはどうするのですか?」


 ゴブリンにはここでやってほしい事があるから、この場所でそれをやって貰うつもり。でもホワイトウルフはまだ調教もしっかりとできてないし、連れて帰ってしばらくは家の近くで番犬してもらうつもり」


「だが、これだけ大型の魔物だ。町を通る訳には行かないだろ」


 門をくぐり、町を通って帰る方が早く帰る事ができる。だが、今いる場所から家までをホロルの町の外壁を迂回して帰るならほぼ半周する距離になるため、時間が掛かるのだ。アオイはその事を心配しているようだが、何の問題もない。


「そこは大丈夫。調教がされていて他の人に被害を出さないならこのホワイトウルフの大きさなら五体まで町を連れて歩いていいんだよ」


「なるほど。そんなルールがあるのか」


「そう。ま、私もこの前リリィさんに説明されるまで知らなかったんだけどね。でも、ギルド内もそうだけど、許可がない限り建物の中に勝手にいれるのは駄目なんだって」


 という事で、陽も傾いてきたため、帰る事にした。ジェリダは総数二十四匹のゴブリンを六つの部隊に分ける。そしてゴブリン達には他の魔物を襲い、魔石を集めるように指示を出した。集めた魔石はまた明日ここを訪れた時に渡すように言いつける。これはあの初めてアンデットにしたゴブリンにした指示と似ていた。


 ゴブリンはジェリダとのレベル差がある事もあり、完全に調教が済んでいるため、統制の取れた軍のようになっている。しっかりと整列してジェリダの指示を聞く姿は傍から見れば魔物であっても可愛らしく見える。


「【行け】」


 ジェリダが指示を出すと、六つのゴブリン部隊はそれぞれ茂みから森の中に散って行った。そして、三人はギルドへとクエスト完了の報告をするために歩き出した。




次は4月30日21時に更新です。

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