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悪食は最強のスキルです!  作者: 紅葉 紅葉
第二章 ワ国編 
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第23話

 第2章、スタートです!


「おい、聞いたか。あのジェリダとルベルとか言うガキがいただろ。あいつら今までどこの町や国で最速、しかもジェリダとか言う方は最年少でのBランク昇格だってよ!」


「おい、それ本当か!? そいつらまだこの町で冒険者やり始めて二週間も経ってないだろ!」


 冒険者ギルドは先日ジェリダとルベルがBランクに昇格した話題で持ち切りだった。特にジェリダの事が話題になっている。それはジェリダが冒険者ギルド史上最年少Bランク冒険者となったからだ。今までの最年少は十七歳だったが、それを大きく塗り替える事になった。しかし、その二人以外にももう一人話題になっている人物がいた。アオイだ。


「あのガキどものパーティーにはワ国の亜人がいるらしいじゃねえか」


「ああ、それなら昨日俺見たぞ。ありゃ狐の亜人だな。新しくメンバーに加えるらしいが、エルフの中でも異端と言われてる赤目もいるのに、また厄介そうなのが集まったよな」


「化物の集まりかよ」


 男たちが話す亜人とは、獣人種を差別する時の蔑称だ。今は種族を超えた平等を広めている所だが、まだこうして蔑称を用いる輩も少なくない。特に、こういった妬ましさの対象になるような噂であれば尚更使われる。


 そんな様々な噂がギルドから徐々に町へと広まっている時、噂の渦中である三人はというと、家でゆっくりとした時間を過ごしていた。




「ルミル殿の料理には劣るが、今日の朝食は魚の塩焼きと、私の国の材料がなかったので味もだいぶ違うが、野菜のスープを作ってみた」


 今朝、アオイは自分が何もお礼として返せるものがないので、せめて料理を作らせて欲しいと朝食作りを買って出た。二人は気にする事はないと言ったのだが、それでは自分の気が収まらないと、半ば強引に説得されて朝食作りを任せる事にした。


 今で料理ができるのを待っていると、トントンとリズムの小気味いい音と共に魚の焼けるいい匂いがしてくる。朝はすぐにお腹の空かないジェリダだが、匂いで腹が覚醒してきたのか、空腹を感じ出した。もう少しで腹の虫が鳴きそうだと思った時、アオイが朝食を持って隣の調理場から料理を運んできた。


「待たせた。朝食にしよう。まだ料理があるから運んで来てくれないか」


 アオイは盆に三人分の焼き魚を持って来た。アオイの手伝いをして、食卓に料理を運ぶ。野菜のスープは葉物を大きくざく切りにして入れているため、シャキシャキとした触感が楽しめる。焼き魚は表面はパリっと黄金色に焼けていて、中は白身魚のほくほくした身が温かな湯気を立てる。


 料理を並べ終わるとジェリダとルベルはさっそく食べ始める。と。


『いただきます』


 以前見た、アオイの行動をまねて、ジェリダもルベルも手を合わせてから食事にする。そこからアオイの国の文化を色々と聞きながら食事を摂った。


『ごちそうさまでした』


 最後もアオイの国の習慣と同じように手を合わせてから食べ終わる。片づけは三人で行った。食器も拭き終えると次は出かける準備を始める。昨日冒険者ギルドで冒険者登録をしたアオイの為の武器を、西区のノエズの所に買いに行くのだ。


 アオイは冒険者ギルドにて職業を選択しようとしたが、すでに武士(モノノフ)という職業についているという事で、ギルドカードを作成するだけで終わった。


 北区へと向かう途中、何人かの冒険者にすれ違ったが、皆一様に三人を見るとひそひそと仲間内で話し出す。だが、小さな声で喋っていようと、ジェリダの耳にはしっかりと聴こえていた。


(なるほどね。昨日ギルドでBランク昇格した事が噂になってるのか)


 ジェリダは会話の内容を盗み聞いて一人納得する。だが、噂になろうとジェリダはどうでもよかった。最年少でBランクになろうが、上には上がいる。まだブレイブに黒星を付けたままでは諸手で喜べない。どうせなるならばブレイブを倒してBランクに上がりたかったジェリダだ。


 一方のルベルとアオイもジェリダと同じくあからさまに自分達の事を噂しているのであろう行動を取られても気にする様子はない。ルベルはその目で、アオイは自分の人種で噂されているのだろうと気に留めない。差別されるのには、この二人も十分すぎるほど慣れていた。


 西区へと行けば更に多くの冒険者達とすれ違い、噂の的になる。それもどこ吹く風と人を掻き分け、ノエズの店に辿り着く。と、いつもの様にロイが店番をしていた。


「あ! ジェリダさんとルベルさん!」


 ロイはジェリダとルベルの顔を人混みの中からすぐに見つけると、嬉しそうな表情になる。


「あれ、きょうはあたらしいひとが、いっしょなんですね」


 ロイは初めて来たアオイに可愛く首を傾げる。アオイはそんなロイに目線を合わせるように少ししゃがみ、自己紹介をする。


「私はアオイだ。よろしく頼む。今日は武器を買いに来たのだが、君の母上はいるか」


「アオイさんですね! ぶきをかうならおかあさんをよんできます!」


 少し硬い表現のアオイの言葉を正確に理解し、ロイは奥に飛んでいく。すぐにロイはノエズを連れて戻ってきた。


「おや、あんたたちかい。武器もローブも使ってもらってるみたいで嬉しいよ。そっちの綺麗な子は新しいパーティーメンバーかい?」


「そうです。昨日冒険者登録を済ませて正式にパーティーに加わったんですよ」


 ルベルの言葉の後にアオイはもう一度、自己紹介をする。


「アオイという。今日は武器を探しに来た」


「おやおや、なかなか古風というか男みたいな喋り方をする子だね」


 アオイの喋り方を特に非難するでもなく、にこやかに受け入れてくれるノエズ。アオイは少なからずノエズの懐の大きさに、心の中で驚く。


「本当は自分の武器を持っていたんですけど、分けあってなくしたので新しい武器を買いに来たんです。ノエズさんは刀を知ってますか?」


「ははぁ、刀。なるほど、アオイはワ国の出身かい。刀は知ってるよ。だけど今は在庫にないねぇ。この町に武士(モノノフ)を職業にしてる奴はいないんだよ。ワ国はここから遠い東にあるだろ? だからワ国とは繋がりが薄いからか、ワ国出身の奴も少ないんだ。でも、そうだね、一週間待って貰えるかい。そしたらいい刀を仕上げてみせるよ」


「刀を打った事があるのか?」


「ああ、数回他の国に行って経験を積んでた時に手伝わせてもらった事がある。今回が初めて自分で作る事になるが自信はあるよ」


 ノエズの頼もしい答えにアオイは嬉しそうだ。


「それは本当に頼もしいな!」


「じゃあ一週間後にまた来ますね」


「ああ、出来上がりを楽しみにしてな」


 刀を作るには材料費から諸々準備が掛かるという事で、先に代金を支払う事になった。全てで金貨一枚という金額になった。するとアオイはサッと表情を青くした。だが、その大金をジェリダが直ぐに出した事にもアオイは顔を青くする。


「な、な、な……金貨一枚もしていたのか…!? いや、それよりもジェリダは何故簡単に金貨を出せるのだ! 普通の冒険者では一生で数枚を手に入れる事ができるかどうかと、言われているのではないのか!?」


「あぁ、それはね――」


 ジェリダたちが何故、家も金貨を三十枚も持っているのかという経緯を簡単に、掻い摘んで説明する。するとアオイは感心したように頷く。


「なるほど。二人が異例のランク昇格を果たしたのにはそんな武勇伝があったからなのか」


「いやいや、武勇伝という程でもないでしょ。あれは偶々だよ」


「偶々だとしても、森の主を倒したのは事実だ。十分に武勇伝に入るさ。それに、あんた達、噂で聞いたよ。その若さでBランクになったんだって? おめでとう」


 ジェリダとアオイのやり取りを聞いていたノエズは今まで誰もハッキリと言ってくれなかった、祝いの言葉を掛けてくれる。


「もうBランクになったんですか! すごい!」


 ロイも興奮気味に二人のランク昇格を祝ってくれる。こうして受け入れ、祝福してもらえる事にジェリダもルベルもくすぐったい気持ちになる。


「ありがとうございます。これからもノエズさんを贔屓にしますね」


「あはは! そりゃー嬉しいね」


 ジェリダの言葉にノエズは嬉しそうに笑う。有名になった冒険者が贔屓にする武器屋はそれだけで箔が付く。それをノエズが狙っているという訳ではないが、純粋に自分の店を選んでもらえるという事は、鍛冶師冥利に尽きると言える。


「一週間待つ間、武器がなくちゃ戦えないだろ。代わりにこれを貸すから持っていきな」


 ノエズはアオイの武器が出来上がるまでの仮武器として片手剣を奥から持ってくる。アオイが手にすると初めて持つ武器なのにほとんど違和感なく、手に馴染む重さだった。


「重さはピッタリかい?」


「怖いぐらい違和感がない……。どうして分かったんだ?」


「経験だよ。色んな冒険者を見て来たら自然と分かるようになるのさ」


 アオイはそうして武器を借り、クエストへと向かう事にした。



次は4月26日21時に更新です。

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