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悪食は最強のスキルです!  作者: 紅葉 紅葉
第一章 新米冒険者編
22/88

第22話


「落ち着いた?」


「取り乱してしまってすまない」


 ルベルが淹れた紅茶を飲んだアオイは落ち着きを取り戻す。そして、謝罪を口にした。


「それで、アオイはこれからどうしたい? 私達は別にアオイをどうこうしようなんて思ってないよ。ここにいてもいいし、家に帰ってもいい」


「私は……」


 アオイはジェリダの問いかけに逡巡するように目を泳がせる。


「俺も構いません。アオイさんのいいと思う選択をすればいいんですから」


「私の好きなように選んでもいいのか?」


 そのアオイの表情はどこか迷子になった子供のようだった。そんなアオイにルベルは力強く頷く。


「はい。どんな選択でも構いません」


 アオイは再確認するように呟くと、キュッと口を引き結ぶ。そして、何かを決意したように、しっかりとした目で二人を見た。


「二人の言葉に本当に甘えてもいいのなら、私はここに残りたい」


 その言葉はアオイ自身に言い聞かせるようでもあったが、ジェリダとルベルは互いに目を合わせ、ほほ笑んだ。


「これからよろしく」




 すっかり日は昇り、軽く朝食をすませた三人は、最初に襲撃を受けた二階の部屋の片づけから始めた。ガラスが散らばってしまっていたのでそれを集め、損壊状況を確認する。


「結構壊されたね……。今日はこの窓の新調をしないと」


「中央区にそういった所があるかもしれません。窓枠の大きさを測ってから行きましょう」


「本当にすまない……」


 アオイはまだ自分のせいだと意気消沈しているが、気にしないでとジェリダが声をかける。掃除を終えると早速中央区に行くことにした。正確な場所が分からないため門番に聞いてみる事にした。すると快く場所を教えてくれた。


 場所はルベルの言う通り中央区で会っていたが、西区のすぐ近くに窓などのインテリアを扱っている店があるとの事だった。なんでも、西区にガラス関係の店もあるため、西区の近くに店があるとの事だった。


 教えられた場所に行くと、本当に西区の近くだった。というより、西区入り口のゲート横にその店はあった。そこで窓枠の大きさを伝えると、一般的な窓の大きさという事ですぐに手に入れることができた。


 新たな窓を持ち帰り、三人で協力しながら窓の設置をする。その頃にはアオイの表情も少しは明るくなっていた。諸々の片づけなどが終わった時にはもう昼になっていた。


「材料がないし、色々な報告も兼ねてギルドの食堂でも行こうか。ルミルさんのご飯も食べたいし」


「そうですね。その帰りに食材を買っていきましょうか」


「ギルドの食堂はそんなに美味しいのか?」


「ギルドの食堂にいる女将さんをルミルさんって言うんだけど、本当に美味しいんだよ」


 一昨日、食堂には顔を出したが、もうしばらく行っていないような感覚がする。三人揃って食堂に行くと、ルミルの嬉しそうな顔が見えた。


「ジェリダちゃん! ルベル君! 昨日は来なかったから心配してたのよ。何かあったの? あら、あなた見ない子だけど、新しくパーティーに加わったの?」


 ルミルはジェリダとルベルを見るとほっとした表情で捲し立てるが、そばにいるアオイの姿を見て首を傾げる。


「二人の家に世話になる事になったアオイと申します。よろしくお願いする」


 アオイは一歩前に出ると、ルミルに美しい一礼をして見せた。それを見たルミルは目を丸くする。


「まあまあまあまあ! 可愛い! あなたもしかしてワ国の子じゃない? 狐獣人はワ国に多いっていうし」


「あ……その通り、私はワ国出身です。我が国にお詳しいのですか?」


「いいえ、私はたまに来る遠くの冒険者のお客さんから、ワ国の噂を聞くだけよ。でも今、ワ国は権力争いで揉めているんですってね」


「えぇ…………」


 アオイは何か気まずそうに表情を曇らせる。何かを察したルミルはそこで話題を切り上げる。


「ま、色々詮索するのは無粋ね。三人とも、お昼を食べに来たんでしょ? 何にするか決めた?」


 ぱっと表情を明るくして、話題を昼食へと移す。アオイもそれに乗り、昼食を選び出す。ジェリダとルベルも空気を読んで昼食を決める。


「私は日替わりでお願いします」


「僕はコロニンジンのスパゲッティで」


「あ……お金……」


「アオイのお金は私が出すから大丈夫。好きなのを選びなよ」


「いいのか!? あ…ごほん。え、えっとじゃあ……」


 アオイは百種類近くあるメニューでぐるぐると悩んでいたが、ごくりと唾を一つ飲み、メニューを指さす。


「私はこのカワガニのす、すぱげってぃで!」


 なんだか慣れない様子でスパゲッティと口にする。それを可愛らしいなと心の中で悶えながらルミルはほほ笑む。


「はいよ! すぐにできるからね」


 アオイはいつも冷静な部分が多いため、今みたいな興奮した姿は珍しいといえた。なんだか子供のようなあどけなさが垣間見えた。


「アオイはここにある料理を食べたことないの?」


「あ、ああ。私の国ではここのメニューにある料理を見たことがない」


「じゃあ、ルミルさんの料理が初異国料理というわけですね」


「そ、そうなる…な」


 アオイはドキドキとしていた。初めて食べる料理がどんな味、どんな見た目なのか頬を少し赤くして料理を待つ。十分ほど待って、料理が運ばれる。


「はい、おまちどうさん。よく噛んで食べるんだよ」


 ルミルが運んできた料理にキラキラとアオイは目を輝かせた。


「すごい。こんな料理、見たことない。我が国の料理も美しいと思うが、これはまた違っていて、美味しそうだ」


「本当に美味しいから食べてみてください」


 ルベルからフォークを受け取る。それをスパゲッティに刺そうとするアオイを見て、ルベルはああ、と言った。アオイはフォークを使ったことがないのだ。


「フォークはこうして使うんですよ」


 ルベルはフォークを手に取り実践する事にした。くるくるとフォークに麺を巻きつける。そして、それを口に運ぶ。ルベルの行動をしっかりと見たアオイは、スパゲッティに再チャレンジする。今度は縦に刺そうとせず、上手く、くるくるとフォークに麺を巻きつけていく。


「はむっ……」


 そして、初めて食べるスパゲッティを小さな口に放り込む。すると、アオイはかッと目を見開いたかと思うと、すぐに笑顔に変わった。


「おいひいぃぃ!」


 頬に手を添えて幸せそうに口にした。それをジェリダもルベルも微笑まし気に見る。アオイは大人びて見えるが、案外子供のような所もあるのだなと、新たな一面を知った。


「いや~美味しそうに食べてくれるねぇ。そうやって食べてくれるのが一番、作ってる側としては嬉しいもんだね」


 アオイの反応にルミルは満足げに頷く。その間にもアオイはスパゲッティを次々と口に運ぶ。


「アオイ、そんなに急がなくても誰も食べないよ。ゆっくり食べないと――」


「げほっ、げほっ」


「あーあ」


 ジェリダが言い終わるよりも早くアオイは急いで食べたせいでむせてしまう。ルベルが急いでアオイに水を手渡す。それをこくこくと飲み、深い息を吐く。


「はあぁ、いや、すまない。こんなに温かく感じる料理は初めてで」


「あんた、そんなに一人で食べる事が多いのかい?」


「ああ、いつもは……。いや、その、父と母が家を空けることが多く、作り置かれた料理しか食べた事がなくて」


 アオイは何かを言いかけて言葉を切ると、苦笑いで理由を口にした。


「そうかい、そうかい。それは寂しい思いをしてきたんだねぇ。よし、今日は特別にお替り自由にしてあげるよ。まだ料理はあるから食べるかい?」


「そ、それは本当か!?」


「ああ! 私は嘘をつかないよ!」


 どんっとルミルは力強く自分の胸を叩く。その姿にアオイは何やら尊敬の眼差しを向け。


「姉様……!」


 そう呟く。するとルミルはパット頬を染めてアオイを抱きしめた。


「も~~なんて可愛いの! 姉様だなんて! 本当の妹にしてしまいたいよ!」


 気分が最高潮になったルミルは今まで見たことがない程はしゃいでいた。それは他の冒険者たちも同じようで、何事かと驚いている。そんな二人を見ながら、ジェリダとルベルは苦笑いをしたのだった。




 腹ごしらえを済ませると、三人は一階へと降りた。


「あ! ジェリダさん! ルベルさん!」


 すると、カウンターの方からリリィが二人を呼び止める。


「どうしたんですか?」


 大きな声で呼び止めたリリィだが、近くに行くとその表情はどこか不安そうだった。


「あの、ギルド長がお二人がここに来たら呼ぶようにと言っていて……。何かあったんですか?」


 リリィは何か冒険者資格を剥奪されるような大事を何かしたのかと、あんに心配しているようだった。だが、ギルド長と聞いてジェリダもルベルも思い当たる節があった。


「大丈夫ですよ。そんなリリィさんが不安に思う事ではないです。奥に行けばいいんですよね?」


「本当ですか? 以前はいられたお部屋と一緒です。あの、所でそちらの方は新しいパーティーメンバーですか? ここでは一度もお見かけした事がないのですが」


 リリィはここでも勤務はまだまだと言えるが、人の顔を覚えるという点ではとても優れていた。一度顔を見れば次に来た時には顔と名前を完全に一致させる事ができるほどだ。


「私はワ国から来たアオイという者だ。この二人の家に厄介になっている。よろしく頼む」


 アオイは再びルミルに見せたような綺麗な一礼をリリィにもして見せる。そんなアオイにリリィはにこやかに対応する。


「初めまして、私はリリィ・ノイルと申します。こちらではギルドの受付嬢として毎日居りますので、何かあれば気軽に声をおかけください」


 今はほとんどなくなったとはいえ、まだ獣人に対する差別をする者もいる。だが、リリィは分け隔てなく人に接する事のできる優しい人物だ。


「ギルド長がお呼びなのはお二人だけですのでアオイさんは――」


「いえ、アオイさんこそ呼ばれた理由の一つだと思うので、一緒に行かせてください」


「か、かしこまりました。どうぞ」


 リリィは少し戸惑ったものの、そこは臨機応変に対応する。受付の中に入り、奥に通してもらう。そしてギルド長室へと三人は向かう。先頭にジェリダが立ち、ドアをノックする。コンコンという音がしてからすぐに返事は返ってきた。


「入り給え」


「失礼します」


 きちんと礼儀正しくジェリダは一言言ってから中に入る。ギルド長であるラドックは執務机で書類にサインを書いていたが、入って来た三人の顔ぶれを見てペンを置いた。


「ああ、やっと来てくれたか。そこに腰かけてくれ」


 執務机の前にあるソファに三人ならんで座る。その反対にラドックが腰掛ける。


「さて、そちらの獣人のお嬢さんはおおよその予測が付く。なので、いきなり本題に入ってしまっていいかな」


「どうぞ」


「では。昨日の夜、君たちはドロテオという男に襲撃を受けたらしいな。そして、君が連れ去られたと」


 君、と言われたアオイは頷く。


「そして、ジェリダ君とルベル君が救出に向かい、見事ドロテオを生け捕りにする事ができたと」


「え!」


 ルベルは思わず驚きの声を上げ、訂正しようとしたが、ラドックに手で制される。


「いや、事実は違うのだろう。それは分かっている。ただ、これはジェニオ君の提案でね。君たち二人のランクを上げてほしいと言われたのだよ。Cランクのままでは勿体ないと言ってね」


「そんな事をあの人が……」


 ジェリダは意外だと心の中で呟く。それはジェニオはギルド長に報告をすると言っていたが、精々がドロテオ捕縛のちょっとした手伝い程度だと報告するのだと思っていたからだ。それがまさジェリダとルベルのランク昇格を望んでいたとは思っていなかった。


「本来、こう言った事は他の冒険者との軋轢を生みやすい。まだ町にも広がっていないからな。だが、私はジェニオ君の意見に賛成なんだよ。私も君たちにはBランクでもやっていけると考えている。BランクはCランクとはかなりの実力差が必要となる。またこんな短期間でBランクになるのは君たちが初めてだ。他の冒険者たちから何か妨害紛いの嫌がらせを受けるかもしれない。それでも、君たちはBランクになりたいかね」


 決めるのはジェリダとルベルに委ねると、ラドックは言っている。一度視線を交わした二人はお互いの考えを確認する。そして、ジェリダが口を開いた。


「私もルベルもBランクに上がりたいです。まだまだ上を目指したい」


「……分かった。では君たちのランク昇格を許可しよう。後で手続きを踏むといい。そしてだ、そこのお嬢さん」


「アオイで構いません」


「アオイ君は、冒険者をやっていた事はあるかい」


「いいえ、武術に覚えはありますが、冒険者はやっていませんでした」


「そうか。君はドロテオという男に連れ去られて来たらしいが、故郷には帰らないのか」


「……私はこの二人と共にいると決めました。その為に冒険者にならなくてはいけないなら、私は一向に構いません」


 力強い瞳で帰すアオイの心には、もう今朝のような迷いは見えなかった。


「無理にアオイが冒険者にならなくてもいいんだよ?」


「いや、私は世間の事を知らなすぎる。だから私は冒険者になってみたい。そして、世の中の事を知りたいんだ」


「ならば先ほど通って来た受付で登録をするといい。だが、君はまだ実力も示されていない。その為、スタートはDランクからになるが、いいかい? だが、受けれるクエストのランクはパーティーに高ランクメンバーがいれば同じものを受けられる。どうかね」


「はい、私に異存はありません」


「そうか。ではこれからの君たちの活躍に期待しているよ」


更新日の間違い、ご指摘ありがとうがとうございます!

次は4月23日21時更新です。


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