第2話
空に太陽が昇り、明るくなった頃にジェリダは今まで地獄のような日々を送っていた村を旅立った。
服や持ち物は全て夜に襲って来た術者の男から剥いだ物を身に着けた。流石に靴はサイズが合わなければ歩くのに支障が出るため、適当に縫い合わせた布で簡易の靴を作った。武器には術者の男が持っていた短刀を武器として腰に下げている。
ジェリダが向かう町までは大人の足で歩いて三日ほどだが、ジェリダはまだ子供のため四日は掛かるだろう。だが、その間の食料は鞄に入れた。何を食料として鞄へと入れたのかは推して知るべしだ。
町はジェリダのいた町から北にある。その途中には小さな村があると聞いた事があったが、村の状況はほとんどジェリダのいた村と変わらないだろう。そこをうかうか通って今度は自分がやられてはせっかく手に入れたチャンスが無駄になる。その為ジェリダは少しその村を迂回して町へ行く予定だった。
一日目は適当な場所で火を起こして地面に直に寝た。普段から地面に寝ていたために抵抗も何もない。それに、野に寝ていると言っても周りには食べ物が何もないために魔物などが寄り付かない。それゆえに安心して寝ることが出来た。
二日目。少し雲行きが怪しかった。朝からどんよりと灰色の雲に覆われている。
「うーん、夜には雨になりそうだな。どうしよう」
ジェリダは何か雨を凌ぐ物はないのかと鞄の中を探してみる。すると、術者の男が着るために入れていた雨除けの魔法が掛かった雨具を見つけた。形はローブの様になっていて、布に雨除けの魔法を付与しているようだった。
「これだったら雨が凌げるかな」
ジェリダは雨が降らない間は歩を進めた。夕方頃から次第に雲が黒くなってきたので、そこらに生えている枯れ木に雨具を結びつけ、石で下を押さえて簡易なテントを張った。テントを張り終わった頃に丁度雨が降り出した。幸い風はあまりなく、簡易のテントが飛んでいくという事も無かった。そこで雨を凌ぎながら一夜を過ごした。
翌日はからりと晴れていたが、雨で地面が湿気た影響で服が一部ジメジメとしてしまったが、そこはあまり気にしないジェリダだった。
その日も草木のろくに生えていない赤土の土地をてくてくと歩いていると、前方に小さな家が密集しているのが見えてきた。恐らくそこが町に行くまでにある小さな村だった。ジェリダは予定通り村を迂回する。
しかし、ジェリダから村が見えるということは、相手にもジェリダの姿が丸見えなのだということを失念していた。隠れる木もない平原では丸わかりだ。村から三人の男が木の棒や錆びたクワを持ってジェリダへと向かって来た。
「まずい」
ジェリダは走り出す。いくら村で術者の男を殺したと言っても、あの時は運も重なってたまたま勝てたに過ぎない。しかも今追いかけてきている人数は三人だ。分が悪すぎる。ジェリダはとにかく走った。ここ二日は食事もしっかりと摂れている。例えそれが普通の食料でないとしても。少しなら走る体力ができている。
ジェリダが必死で走って走って、後ろを振り返ると追って来ていた男たちは空腹で満足に走れないからだろう、追うのを諦めていた。それを確認してやっとジェリダは走るのをやめた。
「ふぅ……。いくらスキルを手にしてても使いこなせないんじゃ意味ないな。せめて何か魔法が使えたらいいんだけど」
ジェリダが持つスキルの中には魔法基礎というものがあった。そのスキルを得た時からそれぞれのスキルに関する知識が頭の中に流れ込んできて、魔法の使い方は理解していた。だが、問題なのはその魔法を発動するのに二つの条件があるという事だ。
一つ目は魔法基礎で得た魔法の呪文を唱えるということ。二つ目は魔法を発動するための媒体が必要であるということだ。では、なぜジェリダがその媒体である杖などをあの術者の男から剝ぎ取っていないのかというと。
「薪に使うんじゃなかった……」
ジェリダは肉を食べる前に火を起こした。その際に男の側に落ちていた媒体となる杖を真っ二つにして火にくべてしまったのだった。その為、ジェリダは知識はあっても魔法を使えないという微妙な状況になっているのだった。
「せめてあの男が剣術スキルでも持ってたらよかったのに……。村の皆は特にスキルなんて持ってなかったし」
ジェリダは村を出る際に鑑定スキルを使って村人から何か奪えるスキルはないかと死体のパラメーターを見てみたのだが、何も持っていなかった。だが、村人全員に鑑定スキルを使ったため、鑑定スキルのレベルが2へと上がっていた。
「はーあ。当分何かあったらこのナイフと短剣でどうにかするしかないか」
特に武術などを身に着けていないジェリダがどこまで対抗できるか分からないが、死に物狂いでナイフを振り回せば何とかなるだろうと考える事にした。全ては町についてから色々考えようと。
その日もまた野宿をして夜を過ごした。やはり、ジェリダの子どもの足ではやはり三日で町へは辿り着く事が出来なかった。だが、今日走った分もあって明日には着くだろうと疲れた体を休めた。
そして、ジェリダが村をでて四日目にしてようやく町が見えてきた。町の名はホロル。近くに国が三つも接しているため貿易などで栄えている町だった。
円形の大きな砦に囲まれたホロルは、いざという時は戦で重要な拠点にもなりえる。町の門近くまで来るとフルルという大きな鳥型の動物に荷馬車を引かせて町へと向かう商人を多く見かける。
ホロルの町へと入るには門を通らなくてはならない。そこで顔と荷物の検査を受け、通行料を支払い中に入ることができる。歩いてきた者と商人の荷馬車とで別々に並ぶ。ジェリダは歩いてやって来た旅人たちの列へと加わって大人しく順番を待つ。
ジェリダの番が来ると指名手配などがされていないか、目的は何か、手荷物の検査をされた。その際に大きさのちぐはぐな服を着て魔法鞄を所持していることについて門番に怪しまれてしまった。
「この魔法鞄や衣類はどこで手に入れたのですか? 貴女のサイズにはあっていないようだが」
「これは一度夜盗に襲われた際に服が汚れてしまったため近くを通った商団の人達に衣服を貰ったんです。サイズは私みたいに小さい物がなくて。鞄は亡くなった母がくれた大事な物なんです。ここには母の知り合いがいるから助けて貰いなさいと言われて……」
ジェリダはすらすらとその口から嘘を吐き出す。門番の同情を買う様に少し涙の滲む瞳で哀れな少女を装う。それにすっかりと騙された門番はそれ以上の追及はせず、通行許可書を渡してくれた。
「強く生きるんだぞ」
「はい、ありがとうございます……!」
通行料に銅貨三枚を支払い無事にホロルの町へと入る事が出来た。
(ちょろすぎ。あれで門番がよく務まるな)
少しも良心が痛む事も無くジェリダは門を抜けて町へと入った。すると、そこには今まで目にしたことがない華やかさと明るさがあった。
「こんな賑わい初めて見た……!」
ジェリダは瞳を輝かせて町を見た。賑やかな人々の笑い声、華やかな衣装を身に纏った少女たち。道に店を構えている者たちの明るい呼び声。その全てがジェリダにとって眩しかった。ふらふらと吸い込まれる様に人の波に入って行く。まずは自分の衣類をどうにかしなくてはと服を売っている店を探す。途中で美味しそうな肉を焼く店を見つけてしまい、引き寄せられるが今はぐっと我慢した。
その肉を売っている店から少し歩くと衣類を売っている店を見つけた。
「いらっしゃい。あら、可愛らしいお嬢さんだこと。何をお探し?」
様々な衣類や布を扱うその店の店主は少しボロボロになったローブを身に着けているジェリダを見ても嫌な顔をせず、可愛らしいと言ってくれた。お世辞でもジェリダには嬉しい言葉だった。少し頬を赤くしながら探している物を口にする。
「私、ここに来たばかりなんですけど、新しい服が欲しくって」
ジェリダは慣れない余所行きの声と言葉で話した。すると店主は頬に手を当ててキラキラとした目をジェリダへと向ける。
「まあまあまあまあ! 可愛い! あなた可愛過ぎよ! お姉さんが色んな服を見繕ってあげるわ! 予算はどれくらい?」
「あ、えっと銀貨1枚で足りますか? あと、出来たらスカートじゃなくてズボンがいいんですが」
「あら、それだけあったら十分よ。でもズボンがいいの? 女の子なんだからスカートにした方が可愛らしいのに」
店主はもったいなーいと言って少し悲しそうな顔をするが、ジェリダはスカートよりもズボンが良い理由があった。
「私、ここのあとに冒険者ギルドに行こうと思ってて。だからスカートよりもズボンの方が動きやすいですし、色々と便利な面もあるので」
「あら、あなた冒険者になるの? その年でなる子はなかなかいないけど大丈夫? ま、深くは聞かないわ。ちょっと待っててね」
店主はそう言うと店の中でジェリダに似合いそうな服を選びだす。しばらくして服を選び終わった店主が何着か服を持って来てくれる。
「これ、何着かサービスであげるわ。売れ残ってたもので悪いんだけど。それと、やっぱり女の子なんだから、スカートも大事よ。何か大切な時にでも着なさい」
「え、いいんですか!? 結構高そうな服なのに…」
「だいぶ流行おくれの服なのよ。どうぞ貰ってちょうだいな」
ありがとうございますとお礼を言って、ジェリダは買った服の中からシンプルなシャツとズボンの物を選び、店の奥で着替えさせてもらった。脱いだ服は処分してくれるという事で店主に預ける。そして、店を出て行こうとすると、店主に呼び止められる。
「あなた、髪がぼさぼさじゃない。こっちいらっしゃい。髪を梳いてあげるわ」
そこまで自分の髪に頓着したことがない、というよりそんな感覚の無かったジェリダはそんなにもひどいのかと疑問に思ったが、これが普通の感覚なのだろうと素直に店主に髪を梳いてもらう。
「あなた綺麗なブロンドね。少し癖毛だけど、それがまた可愛いわ。でも、あなたこれ自分で髪を切ったでしょ。ちょっと斜めに切れてるわよ」
確かにジェリダはここに来る前に村で伸び放題だった髪を短く切って来ていた。それこそ少年と見紛うほどにバッサリと。
「いいんです。そこまでオシャレは気にしてないし。それに、個性的でいいでし?」
「うふふ、そうね。でも、たまには何処かで髪を整えるのも大事よ。はい、できたわ」
店主が髪を梳き終わるとポンと肩を叩く。ジェリダは自分の頭を触って指で梳いてみる。ぼさぼさでみすぼらしかった髪がだいぶマシになったようだった。
「何もかもありがとうございます」
「いいのよ。可愛い女の子はいつでも大歓迎よ。いつでもいらっしゃ~い」
店主の明るい声に再びお辞儀をして冒険者ギルドへと向かう。ギルドの場所は先ほどの店主に聞いていたお陰で迷わずに来ることが出来た。
ギルドの周りには屈強な男たちがたむろしていた。店に入ろうとするジェリダにぶしつけな視線を向ける者やからかい交じりに口笛を吹く者もいた。だが、そんな視線を軽く受け流して中に入る。
中に入るとクエストを終えて来た冒険者の者たちが受付嬢に報酬を受け取ったりしていた。ジェリダは丁度空いた真ん中の受付嬢の元へ行く。
「ようこそ冒険者ギルドへ。初めての方ですね。私リリィと申します。今日はどのようなご用向きでしょうか?」
「ギルドカードを作りに来ました」
その言葉を聞いていた周りの冒険者たちから失笑やひそひそと話す声が聞こえる。それもジェリダは聞こえないふりをして受け流す。また余所行きの声でリリィへと答える。
ジェリダが作りに来た冒険者カードとは冒険者の証明となる重要なものだ。それを最初に発行しない限り、クエストを受けることが出来ない。
「畏まりました。では必要事項を記入いただきますが、代筆をした方がよろしいでしょうか」
「はい、お願いします」
ジェリダは字を習っていないため書く事が出来ない。読むことはギリギリできるが、あまり難しい言葉は読むことが出来なかった。自身の年齢や種族を簡単に答えると、リリィが引出しから青く光る小さな石板の様な物を取り出した。
「こちらに手を乗せて頂くとジェリダ様の詳細な情報を見ることが出来ます」
「あの、私、スキルを持っているのでそれは必要ないです」
その一言で今まで嘲笑っていた冒険者たちが驚いた反応でざわめく。
「まあ! その若さでスキルをお持ちなんですね! ではこの工程は省略させていただいて、次に何の職業になるのかお選びください。これには適性がありますので、その中からどうぞ」
この自分のパラメーターをなぜ見るという工程があるのかというと、殆どの者が自身のパラメーターを見た事がない。その為、自分の体力や魔力がどれほどあるのか分からない者も多い。だが、ここで自身のパラメーターを見る事で次の工程の職業選択がしやすくなるのだ。
再びリリィは引出しからさっきとは色の違う石板を取り出した。今度の色は赤く光っている。
「この上に手を翳してください」
ジェリダは指示通りに石板に手を翳す。すると目の前に適正職業が現れる。
『付与術師』、『魔法使い』、『魔導士』、『神官』、『召喚術師』が候補として現れた。
(やっぱりスキルの影響かな、これ。魔法系の職業ばっかり……)
「魔法系統の職業が向いてるみたいですね。職業はレベルが30になりますともう一つ職業を選ぶことができますよ。それと、サブ職業もその時点でお選びになる事が出来ます」
「サブ職業って何ですか?」
「サブ職業とは主に生活面で重宝される場合が多いですね。例えば『刀匠』、『商人』、『農家』などがありますね。他にもサブ職業は結構ありますよ。メインの職業よりも多いので」
(レベル30から結構幅が広がるのか…。とりあえず私は前衛の戦闘系が欲しかったんだけど。今は魔法系のスキルが多いから魔法使いが一番いいかな……)
「私、魔法使いにします」
「畏まりました。ではこの用紙に魔法使いと記入して――これに血判を押して頂ければ完了です」
ジェリダは渡されたナイフで右手の人差し指を小さく切り、受付嬢が書いてくれた用紙に血判を押す。すると用紙がぼんやりと光ったと思うとすぐにジェリダの情報が表示された。ジェリダは紙に写った自身のパラメーターを確認する。
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名前 ジェリダ
職業 魔法使い
種族 人間
年齢 13歳
称号 なし
LV 5
HP 164
MP 191
《スキル》
鑑定 LV 9 up
魔法基礎 LV 8 up
回復魔法 LV 8 up
死霊魔法 LV 8 up
付与魔法 LV 8 up
《固有スキル》
悪食 LV 10 up
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(おお、見事にMPが大幅に増えてる。最初確か61ぐらいだったよね? HPも増えてるし)
ここでジェリダのスキルが大幅に上がっているのが確認できた。これはこのホロルへと来る途中で摂った食事によって悪食が発動。その結果魔法系のスキルレベルが格段に上がっているのだ。
さっきまでただの紙だった物がいつの間にか硬質なカードへとなっていた。ジェリダは珍しそうに矯めつ眇めつしてカードを見る。と、何やら魔力を感じてリリィを見る。その目に魔力が集まっているのが視えた。ジェリダは鑑定をリリィに使う。
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名前 リリィ・ノイル
職業 ギルド受付嬢
種族 人間
年齢 23歳
称号 受付嬢責任者
LV 16
HP 160
MP 26
《スキル》
家事 LV 1
鑑定 LV 4
裁縫 LV 3
《固有スキル》
なし
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(この人鑑定を持ってるのね。だから目に魔力が集中したのか。でも、私の方がレベルは上か)
「……これで登録は完了です。この冒険者カードはご自身の情報が詰まっていますので、くれぐれも無くさないようにしてください。カードは一年ごとに更新がございますのでその際はどの町でも構いませんので冒険者ギルドにて更新を行ってください。
それと、ご存知かもしれませんが、冒険者にはランクがございます。DランクからSランクまでその冒険者の方々の実力に応じてランクが変わってきます。最初はどなたもDランクからのスタートとなります。クエストをこなして実力が認められるとランクアップとなります」
「分かりました。あの、私ここに来たばかりで宿も何もないんですが何処かいい宿を知りませんか?」
リリィは動揺しているようだったが、ジェリダはそれに気が付かない振りをして話しを進める。ジェリダは今自分の手に入れているスキルがどの様に使えるのか分からない部分が多い。ここでいらぬ突っ込みを入れてややこしくなるのは避けたかった。
「あ! それでしたらこのギルドでの宿泊が可能ですよ。お食事もお付けして一泊銅貨二枚になります」
石貨とは銅貨の下で一番価格の低い貨幣となる。石でできているという訳では無いが、価値が一番低いために石と言われているだけである。石貨十枚で銅貨一枚と同じ価値になる。銅貨十枚で銀貨一枚、銀貨は百枚で金貨一枚と同じ価値となる。そして、市民の間では出回る事の無い白銀貨は金貨百枚で白銀貨一枚となる。
「このあたりの家を借りるとしたらどれくらいかかりますか?」
「この辺りは町の中心に近い分高くなっていまして、一月銀貨十枚ですね。もう少し町の奥になりますと銀貨二枚の貸家もありますね」
(うーん、本当は自分の家が欲しい所だけど、綺麗な所にはあばら家みたいに勝手に住める場所なんてないだろうし、当分は宿にするしかないか)
「じゃあ、しばらく資金が貯まるまでここに宿泊させてください」
「畏まりました。宿泊費は先に貰う事になりますがよろしいでしょうか。あ、もちろん予定よりも早くにここを出て行かれる際はその分の日数分お返しいたしますので」
「分かりました。じゃあ取り合えず一週間でお願いします」
「では銀貨一枚、銅貨四枚になります」
ジェリダは巾着の中から丁度の代金を取り出して渡す。
「丁度お預かりします。こちらが部屋のカギになります。お部屋は入り口近くにあります階段を三階へ行っていただいて、この鍵に書かれているお部屋へお入りください。
二階は食堂となっていますので朝昼晩、いつでも食事を提供させていただきます。食事代はおすすめメニューを頼むと無料となっています。他の料理ですと別料金になります。食堂の女将さんの料理はとても美味しいのでぜひ行ってみてください」
リリィから渡された部屋の鍵を受け取る。鍵にはタグが付けられており、二〇六と書かれている。
「このままクエストを受けたいんですが、何かお勧めはありますか?」
「最初のクエストでしたらやはり薬草集めがお勧めですね。薬草などを取って来られましたらこちらで質や量で値段を付けて買い取らせていただきます。それ以外は魔獣退治がありますね。この時期作物を狙う魔獣が多いんですよ。いかがいたしましょう」
「うーん、私まだ戦闘力がないし、まだ媒体となる魔法道具を買ってないので薬草集めでお願いします」
ジェリダは自分の力を過信してはいなかった。慎重に物事を進めて行った方が今はいいだろうと考えて薬草集めを選択する。
「ではこちらが薬草集めのクエストで集める物の一覧になります。どれをお持ちいただいても結構です。ほとんどはこの町の西にあるトールの森で採れますので。料金は掛かりますが地図もお売りできますがいかがいたしますか?」
「今はあまりお金を掛けたくないので遠慮しておきます。それと、魔法の媒体になる武器などははどこで売っていますか?」
「畏まりました。魔法の杖や魔道具でしたらホロル中心街のここから北に行けばドワーフやホビット、いわゆる小人の方々がそこで工房を開いて商いをしています。冒険者の皆さんはほとんどそこで武器を買ったり、加工してもらっていますね。そこにお求めの物があると思いますよ。
それと、これには基本的な魔物を狩った際に売れる部分を記載しておりますのでよかったらどうぞ」
「ありがとうございます」
ジェリダはお礼を言って冒険者ギルドを出た。
そのジェリダを見送ったリリィは緊張していた肩の力を抜いた。
(あの子、私よりも鑑定スキルが上なんて……。私の鑑定が弾かれて一部しか情報が見れなかったけどスキルレベルが8ぐらいなかった!? さっき魔法使いになったばかりじゃないの? これはかなりの大物が来たかもしれないわね……)
リリィはギルド長に報告するため受付を閉めて奥のギルド長室へと向かった。
次は3月17日の21時に更新します。