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 翌日。

 モードレッドは肩にクロトを乗せて、真陽の鐘が鳴る前に東門のギルド支部に顔を出した。

 ギルドの作りは変わらないようで、取り敢えず建物奥にあるカウンターに行けばなんとかなる。

 昨日とは違うざわめきを響かせるギルド内をモードレッドは目もくれず進む。

 焼き回しのような光景だが、昨日と違うのは侮蔑や敵意といったものではなく、向けられた視線は畏怖や好奇のものであった。

 どちらも負に類するものではあったが、それでも後者の方がずっとマシである。

 カウンターの前に行けば比較的整った顔の職員が立っていた。

 中央のギルドの職員と比べれば背も低く身体つきも細身だ。

 だが、身に纏う雰囲気はこちらの職員の方が鋭い。

 キツネのように細長い顔つきと、糸のように細い目は何を考えているのかわからない。分かりやすく言えば、胡散臭いとモードレッドは思った。



「やあ、君がイフリーティアの加護を持っていたアリューゼを文字通り叩き潰した新人さんだね?」

「アリューゼ何某が何処の誰かはわからないけど、ギルドで絡んできたのを叩き潰した新人というのは私よ」

「いやあ、昨日の夜にゴルドーが慌てた様子でまくしたててた時はなにをふざけてるのかと思ったけど、こうして見ると実際にふざけてるのかと思えるねえ」



 だって肩に猫を乗っけてるんだよ? と笑うキツネ顔の職員。モードレッドは肩にのるクロトを睨むがクロトはそんか視線も何処吹く風とマイペースに顔を洗っている。



「ゴルドーから引き継ぎは受けているよ。私の名前はフォーカス。数いるギルド職員の一人さ。君を含めた数人を担当するからよろしく頼むね」

「ええ、こちらこそ」



 よろしくと、手を出しながらもモードレッドは頭の中でゴルドー? と疑問符を浮かべる。

 フォーカスは眉間にシワを寄せるモードレッドをみて「昨日、君を登録した職員だよ」と告げた。

 そう言えば名前を聞いていなかったと今更ながらに思ったが特に必要に迫られなかったので別にいいかと思考の隅に放る。



「それで、私以外はもう来てるのかしら」



 フォーカスは数人を担当すると言った。言葉通りであれぼ複数人数で行動する、ということだろう。



「ああ、君以外は既に待機してるよ。こういう時は時間よりも早く着きすぎるよりも時間の少し前に着くくらいが丁度いいんだけどね」



 イライラは冒険者の敵さ。何せ命を賭けてるんだからね。フォーカスは視線をツイッと横にスライドさせた(糸目なので雰囲気)。

 モードレッドもそちらに視線をズラすと、如何にもスレた感じの輩がイライラを隠そうともせずに待っていた。

 なるほど、とモードレッドは頷く。

 昨日の職員、ゴルドーが冒険者は信用が大事、というのがよく分かった。絡んで来たアリューゼは自分たちの領域に入り込んで好き勝手やられるのが嫌だから噛み付いて来た。

 こいつらは領域の外でも無闇矢鱈と噛み付いていく、そんなタイプだ。

 そんな者達とモードレッドの視線が交わる。フォーカスとモードレッドの雰囲気を察して、今回のメンバーなのだと把握したのだほう。



「っせーぞ!! っまでまっせんっだよ!!」



 頭の悪い絡み方であった。

 騒いでるのは一部だが、全員がこれだったら頭を抱えるレベルだ。

 なるほど、一部の印象が全体の印象へとかわるのはこういうことか。



「……これと同一と思われてるとか、かなりショックだわ」

「まあ、外見で判断するのも問題だから誰しもこうして信用を積み上げるシステムというのも大事になるんだよ。私たち冒険者が魔物だけを敵にするためにも、後ろから刺されないためにも、身内は毒が混ざらないようにも……ね」



 おそらくは貴族が名を上げるために無理矢理冒険者になるのを防ぐのもあるのかもしれない。

 防波堤がボイコットしたら被害を被るのは防波堤の内側にある者達だ。貴族の横暴には命を持って償わせる。そうなったら箔だのどうのと言わず、歴史に稀代の馬鹿貴族として名を残すだろう。

 冒険者側はそういう意味でも命を賭けているのか、とモードレッドは納得した。



「ゴルドーはしっかりした職員だったのね」

「そうさ、見た目はあいつらとあんまり変わらないけどね」



 モードレッドはこれから彼らが地雷を踏み抜きそうな予感がひしひしとあった。

 クロトはおとなしくしてくれるだろうか。


「んだよ! ったてんじゃねーぞ、忌み色ぉ!!」



 無理そうだ……。

 モードレッドは肩から感じる粘性を伴った怒りにはやくも諦めるのだった。

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