1
問おう。貴方は猫派か?犬派か?
その猫は甘い言葉を囁いた。
「ねえ、僕と一緒に世界を救う英雄にならないかい?」
ニタリと嗤うその姿はまるで悪魔の様だった。
少なくとも天使には見えない。
死に瀕した矮小な人間に、救いの手を差し出すのは何時だって天使ではなく悪魔だ。
だとすれば、この猫はやはり悪魔なのかもしれない。
「このまま死ぬのが君の望みかい? 無為に死ぬのが望みかい? 何も残せず、何も出来ず、ただここで朽ちていくのが君の本望だっていうのかい?」
黙っている私に痺れを切らせたのか、猫は煽るように歌う。
ギリッと自分の奥歯が鳴る音がした。
「……わけ……ない」
猫の瞳を睨みつける。
金色に妖しく輝く瞳の中に浮かぶ瞳孔が細められた。
この猫は悪魔だ。
だけど……。
「こんなところで……終われないっ……! だから……!」
少女は吠える。
それは生への執着。悪魔の手を取ってでも生き延びてやると言う決意の現れ。
「英雄にでもなんでもなってやろうじゃない……っ!!」
そして猫はその少女の猛る感情を一身に受けて、最初と同じようにニタリと嗤った。
「それじゃあ契約成立だ」
こうして少女は悪魔の様な猫と契約して英雄となる道を歩む。