第0章 闇風風魔の物語?? 「[_____]ノ記憶」
………………………………夢を………………見ていた。
そこにはなにもなかった。
周りにあるのは、無限に広がる闇以外、なにもなかった。
ここはどこなのか
どうしてこんな所にいるのか
自分は何者なのか
何もわからなかった………………………………。
そこは、途絶えることのない闇が広がる牢獄のような場所だった…………。
どこまで行っても、終わりのない空間をただただ歩いていた。
不意に、後ろに気配を感じた。
何もない、何者もいないはずの空間に………………。
そして、後ろを振り返る__________
そこには自分と同じ顔した人間が埋め尽くしていた。
必死になって逃げ出した。
同じ顔、同じ姿、同じ声の者共からではない。
いくつもの光の柱が降り注ぎ、何人もの自分が消えて逝く。
無数の悲鳴、無数の絶叫、無数の怒号、無数の絶望への声が無残にも光の中に消える。
自分を押しのけ、踏み台にし、突き飛ばして、ひたすら走る。
そしてそのまま、意識は消えていった………………………………。
意識が消える、その刹那。
その頬にひとしずくの涙が流れ落ちる。
彼の消えゆく心の底で、最後に何を思ったのか。
その瞬間、彼は彼ではなくなったそして……………………。
彼は<殺戮の操り人形>(サイレント・マリオネットドール)となった。
………………・暗い。
___暗い闇の中に「彼」はいた。
どこまでも続く、終わりのない闇だけが広がる____その世界。
_・・・怖い。いやだ・・・。出して、ここから出して・・・・・・・_
闇の中で出口を探し、彷徨うように歩き続ける。しかし行けども行けども、出口を見つけることはなかった。
代わりに辿り着くのは、いつも同じ。また、再びこの場所に行き着いた。
突然体が重くなり、膝から倒れ込んでしまった。手と膝から冷たく硬い床の感触が伝わってくる。
___と、その感触の中に別のものが混ぜっているのに気がついた。なんだろうかと、触れている手をそっと開いた…………___
___その手には、どす黒い血がベッタリと付いていた。
_・・・っ!!!? な、なんで・・・なんでこんなものが・・・。・・・・・・・・え?_
思わず血を拭おうと服に手を伸ばした___、その時気づいた。血がついているのは、手だけではないと………。
衣服も、腕も、顔さえにもいたるところが血に濡れていた。
怪我などはしていない。体のどこからも痛みなどは感じられず、それが自身から流れた血ではないことを晒していた。
全身に寒気が走り、何が何なのかわけが解らなくなる。パニックに襲われ、視線が逸れると___、そこにはさらなる光景が広がっていた。
一言で例えるとするなら、そこは学校の廊下であった。
ただし、目に映るいたるところに血が染み付いた場所、という事実を付け足さなくてはならないが………
その光景に、もはや判断する思考をショートさせられた「彼」はただただ呆然と座り込んでしまった。
___と、不意に背後に違和感を感じた「彼」は恐る恐る振り返る。
地に染まった廊下の奥は、いくつもの窓があるにもかかわらず、不気味なほど暗く見通す事ができない。
その暗い世界が、次第に「闇」に飲まれていく。まるで全てを飲み込めるかのように、全てを、奪い取るように___
「彼」は、血溜まりの中を必死に走った。
___だが、「闇」はたまたくまに追いつき………、「彼」は再び闇へ引きずり込まれる。
_いやだ・・・! いやだ・・・っ!! もう飲み込まれるのはいやだ!_
その瞳から、溢れるように涙がこぼれ落ちる。___しかし、いくら泣こうが叫ぼうが、救いの手などあるはずがない。
………それでも、それでも「彼」は手を伸ばした。救いの手を求めて___
_だれか・・・誰か助けて・・・っ!_
その願いが叶うことはなく、「彼」は「闇」に再び引きずり込まれる___
_「大丈夫です。「闇風」様は一人なんかじゃありません___」_
_・・・え?_
聞いたことのない声だった。ただ、その安らぐ声の「少女」の声だけは、忘れることはなかった___