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旋風の闇蝙蝠(せんぷうのダークネス・ゾルビバット)  作者: 黒流風流
第1章 「そのの者の名は[_____]」
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第0章 闇風風魔の物語4 「最善の誤算」 

作品に登場する僧侶の名前を「行基ぎょうき」から「雲海うんかい」に変更しました。

これまでの話を読んでいただいた方々には本当に申し訳ありません。

今後もこの作品よ読んでいただければありがたいです。

 影正かげまさ雲海うんかいは森の中を歩いていた。既に日も沈み、雲の切れ目から三日月の月光が辺りを照らす。

 

 時刻は夜の八時辺りを過ぎたあたり。本来なら、目的地に着いていた時刻のはずなのだが……。なぜ、二人はこんな時間のも関わらず、夜道を歩き続けているのか………。理由は、すぐに明らかになった。


 突如、木々の間から数本の剣(ナイフなどではなく、片手、あるいは両手で構えるタイプ)が影正へと向かって飛来してきたのだ!


 影正は、腰の小太刀を鞘から抜くと、飛翔してくる剣を叩き落とした。そしてまた歩き出す。


 (これでもう、十二度目になるな………。)


 そう思いながら、再び次々飛んで来る刀剣を薙ぎ払うのだった。しかし、今回は小太刀を戻さなかった。すでにここが敵の(おそらく、あの異形の左眼のの少年だろう。)狩場に足を踏み入れたからである。


 「これで十三回ですね。さて…今の所、人の気配はなかったはずですが、いったいどこに隠れているのですかね?」


 雲海がそうつぶやきながら辺りを見渡す。一見、今まで歩いてきた道と同じ。なんら変わらないように見えたが、これまで数えられない程の戦場を見てきた二人には、この場所におびき出され罠にかかったのだと理解していた。

 

 と、影正は暗闇に僅かに光る、小さな赤い光を見た。この直後、目線の先から三本の斧が投げ込まれてきた。それを弾き飛ばすと、その内の一本の斧を掴み、光を放つ物にめがけて投げ返した。

 

ガチャ―ンッ!!! バチバチバチッ!! と金属が割れるような音とともに、小さな雷にも似た異音が響き渡る。といっても、そこに何がいたのか、あるいはなにがあったのか、確認には行かない。相手もそれを狙いで、さらに仕掛けてくることは予想出来た。

 「………さて、次はどう出て来るか………」

 

 影正は、静かに辺りを見渡した。











 「…………………っ!」


 月明かりも届かぬ闇に満ちた森の中。暗殺者である彼は、自身が予想していたよりも悪い状況下に、一人焦りを感じずにはいられなかった。


 暗殺陣 <デストラップ・トライアングル>


 最低でも五人から構成される複数人での暗殺陣形。武装も銃器類で行うものであり、それぞれが標的を囲み、変幻自在に動き攻撃を仕掛ける。幾へもの方向から飛来する弾丸、暗闇により視覚を鈍らせ確実に仕留める。本来であれば………。

 こんなものであの白髪の老人ターゲットを殺せるとは思ってはいない。今までの攻撃はダミー、あわよくば、隙を生み出せれば……とは、考えなくもなかったが…。


 だが、今の状況は作戦としてはまずい状況に向かいつつあった。


 暗闇の森の中、幾つもの刀剣類、暗殺武器、即席で製作した凶器が次々襲いかかるが、ことごとく打ち砕かれ叩き落される。さらに、それらを投擲する飛行ドローンをも撃ち落とされている始末。


 このままでは、計画が水の泡と消えることになってしまう。暗殺陣 <デストラップ・トライアングル>もこの勢いでは、もって十分が限界………。彼は奥歯をギリッ、と噛み締めた。

 こうなった以上、多少のリスクは覚悟するしかない。


 足元に置いた小型の日本刀を手に取り、その場で抜き放ち鞘はそこらに放り捨てた。そして、気配を悟られないよう細心の注意を払いつつ行動を開始した。














 (これでいったい何度目だったか………)


 影正はそんなことを考えながら、次々襲い掛かってくる刀剣類を片っ端から叩き落とし続けていた。


この襲撃が始まって、もう半刻(三十分)は経過していた。予想では、そろそろ何か別の手段を講じてくる頃だが………。


 ふと、影正は雲海のいる方向に目線を向ける。そして、いくつか残る疑問の一つを口にした。


 「いったい、あの者の狙いはどちらですかね?」


 「そうですね……。最近は私も何かとありましたが、ここまでのことには、見に覚えはありませんね。影正さんは?」


 「………昔の因縁なら、星の数ほどありますが」


 「たしかに」


 雲海は、迫り来る凶刃を紙一重で躱しつつ話を続ける。


 「もっとも、両方とも考えられます。推測の域は、越えませんがね」


 「………………………………」


 そう答える雲海だったが、その言葉は影正の耳には届いていなかった。


(この状況、これが本命とは思えない………

 たしかに、暗闇の中から縦横無尽に飛来する有象無象の刀剣の数々は厄介だ。が、決定打に欠ける。それがわからないものではないはずだ。となると、これとは別の策を用意しているのだろう。


 そのように考察した、その時だった______。


 影正の背後、木々の間から周囲の景色と同化した人影らしきものが飛び出てきた。そして、その手に構えた小型の日本刀にて影正に斬りかかったっ!








 







 影正は、振り下ろされる斬撃を軽く躱した。周りの景色と同化した不可思議な外套の切れ目の間に、暗闇で不気味に光る赤い目を影正は見た。


 暗殺者の少年はすぐさま森の中に消え、その直後、影正の背後から数本の西洋刀ブロードソードが放たれる。

その刹那、暗殺者の少年が今度は影正の真横から斬りかかる。と、ここで影正は小さく息を吐いた。


 影正は、まず先に西洋刀の方を一振りですべて弾き飛ばした。それを待っていたとばかりに、暗殺者の少年は影正へと刀を振るう。その時だった。


 影正は、小太刀で振り下ろされる刀を真上に跳ね上げ、空いた手で暗殺者の少年の腕を掴んだのだ。


 「…………………っ!!?」


 まさかの行動に、暗殺者の少年は一瞬怯んでしまう。どうにか腕を振り払おうと、刀を振り回そうとする。が、影正は掴んだ手に力を込め、その抵抗を封じる。ミシミシと握られた腕が悲鳴を上げ、暗殺者の少年は苦悶のうめき声が口からもれた。しだいに掴まれた左手の感覚もなくなったらしく、持っていた日本刀がとうとう地面に滑り落ちていった。


 やっと、抵抗しなくなったか。そう思った影正だったが、そのほんの少しの気の緩みを彼は見逃してはいなかった。


 掴まれた腕とは反対の腕、「メモリーガントレット」その画面を目線操作アイコンタクトで操作し

、「武器セット」からサバイバルナイフを選択。虚空にサバイバルナイフが転送される。突然、虚空から現れた小刀?に、影正は対して反応はしなかった。それを手に取ると、影正の腕を突き刺そうと振り下ろした。


 当然、小太刀で受け止められるが、掴まれた腕の拘束も僅かに緩んだ。即座に掴んだ手を振り払い、いったん距離を取ろうと後方に下がった………。だが、________。


 それが、命取りになった。


 「…………………伏せろっ!!」


 突然のことだった。今まで暗殺しようとしていた老人に、そんなことを叫ばれ、一瞬理解出来なかった。遠方からの狙撃でも、暗闇から飛来する数多の剣刀類でも、その中に紛れながら迫ってきた暗殺者ものでさえ一切変わらなかった影正の顔に初めて焦りが浮かび上がった。


 …ありえない。なぜそんな顔に変わったのか、そんなことを叫んでだのか。


 答えは、自身の真後ろに迫る大剣が迫って来たことに気付いた時には、手遅れだった。


 次の瞬間、鮮血の混じった風が辺りに舞い散った!!。


 




 




 

 

 

 


 意識が消える、その刹那。


 その頬にひとしずくの涙が流れ落ちる。


 彼の消えゆく心の底で、最後になにを思ったのか。


 その瞬間、彼は彼ではなくなった。そして………………。























    彼は、<殺戮の操り人形>(サイレント・マリオネットドール)となった。

 














 

 

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