09 研究室
お風呂から出て、タオルでわしゃわしゃと拭かれる。
うむ、なかなかいい湯加減だった。
風呂場から、抱えられてまた別の部屋に連れて行かれる。
その部屋は少し埃っぽくって、木の机と椅子、小さな本棚、簡易なベッドにクローゼットだけしかない、物寂しい部屋だった。
子供はクローゼットを開けると、中から新品のシャツとズボンを取り出して着替えだした。
まぁ、さっきまで来ていた服はボロっボロだったもんね。
新品の服に身を包んだ子供は、何処かの貴族の子供みたいに上品さが漂っていた。
…というか、勝手に部屋使ってるけど…ここ、この子の部屋?お家?
じゃあ、貧困街は……?
なんだか混乱してきたぞ…??
子供は私の方を見ると微笑んだ。
「じゃあ行こっか」
頭にはてなを浮かべる。
いったいどこに行こうというのだろうか。
子供は私を抱えて部屋を出る。
廊下をまっすぐ行き、途中で右へ左へ曲がっていき、一体どうやってきたのか分からなくなるほどに歩いた頃になって、目的らしい部屋の前に着いた。
子供は分厚くて大きい扉を軽やかにノックすると、部屋主が返事をする前に中に入ってしまった。
…いいのか?それ…
部屋の中は凄かった、と言っておこう。
まず、目に付くところに本の山、山、山!
書類かなんかがばっさばっさと落ちてくる落ちてくる…。
なんか不思議な色した液体の入った試験管とかあるし…。
……何ここ、研究室かなんか…?
「シュテインバルト…来たよ」
子供は奥の方へ呼びかけるように声を出した。
それに答えるように、部屋の奥の方で何かがもぞもぞと動く。
「ぁー…ちょっと待っててくれ、坊っちゃん」
……… ぼ っ ち ゃ ん ! ?