08 お・ふ・ろ〜♪
しばらく妖精と戯れた後、子供は屋敷の扉を開け中に入る。
私を抱き抱えたまま薄暗い廊下を歩いてゆき、やがて一つの部屋の前に立ち止まると中に入った。
もわっとした空気がヒゲに触れて、なんか気持ち悪い。
猫のおヒゲと尻尾は敏感なのです。
「シュテインバルトに怒られるから体洗わせてね」
そう言って子供は私を降ろした。
…ここ、どうやらお風呂場らしい。
日本でいう檜風呂がある!!
この体になって水に濡れるとなかなか乾きづらいから、あまり水は好きじゃないんだけど、やっぱ日本人の性なのか、お風呂にはめちゃくちゃ入りたい。
期待で尻尾がピーンとなる。
子供は上だけ脱ぐと、洗剤を少し薄めて泡立てて、私の体を丁寧に洗っていく。
最初は怖々と触れる感じだったのが、私が大人しくしているのに安心したのか、それとも手馴れてきたのか、なかなかいい感じに洗うようになった。気持ちいい。
…………あれ?体洗われてるっていうのに、何の抵抗感も抱いてないってどうなの…?
元人間の女の子としてはもっと恥じらうべきでは…
悶々としているうちに、体を洗っていた手が離れたことに気付かなかった。
「かけるよー」 バシャァッ
『ぎゃぁああああっ!!!』
ブミャァアーーーっと壮絶な悲鳴をあげて、私はその場でバタバタ暴れた。
何だ何だ!?…ってお湯か。
泡が落ちた自分の体を見て、ようやく冷静になる。
あー吃驚した。お湯かけるなら、言ってよね!
そう思ってニャーニャー鳴きながら抗議すると、子供はぶぅっと膨れた。
「ちゃんとかけるよーって言ったからね?」
…そうなの?じゃあ、聞いて無かった私が悪いのか。
ごめんね、って気持ちを込めてにゃーと鳴くと、子供はニコッと笑った。
「いいよ、許すっ!」
可愛い笑顔だなーっと思いながら、ふと思う。
なんか、この子と会話が成り立ってるように感じるのは気のせいかな…?と。