04 餌付け
フラフラどこか目的地があるわけでもなく歩いていく子供を追いかける。
危なっかしい足取りに不安になる。
案の定、誰もいない狭い路地の隅っこでぶっ倒れていた。
『困ったなぁ…』
思わず私が呟いたのと、その音が聞こえてきたのは同時だった。
ぐぅぅうう〜〜
どうやら、子供は相当お腹が減っているらしい。
いつものように餌をたかりに大通りに出る。
親切なおばあちゃんから魚をもらって、それを喰わえて子供の元に戻った。
『ご飯だよー』
ニャーと声を出したつもりが、魚をくわえていたせいでちゃんと発音されなかった。
それでも子供は私の存在に気付いたようで、目線だけこちらによこす。
私は魚を押し付けるように子供の頬にぐいぐいくっつける。
最初訝しんだようすの子供は、次第に私の意図が伝わっていったらしい。
その瞳がゆらゆら揺れながら、食べてもいいのかと尋ねていた。…ように見える。
私はもう一度、声にならないニャーを言うと、子供はおずおずと私から魚を受け取り…掌にぼおっと火の玉を出した。
……………………………………!?
さっきもそうだったけど、この子は詠唱無しで魔法が使えるんだ…
以前魔法使いを見かけたと言ったけど、彼らは長ったるーい呪文をつらつら述べて、やっと火を出したり、水を出したりしていた。
私はファンタジーなんて縁のない生活ばっか送ってきたから、良く分からないんだけど、この子の実力は凄いんじゃなかろうか。
だって瞬間移動って高度な気がする魔法使えるし!
火の玉で焼いた魚を頬張りながら、子供はじっと私を見ていた。私も見返す。
年は5,6歳ぐらいかな。
もう少しふっくらしてれば美形な顔立ちをしてる。
うーん…この子はさっき家を追い出されてたんだよね?
誰か引き取ってくれる人いないかなぁ…
宿無し生活は子供には辛いもの…
「………ネコさん」
ポツリと子供が呟いた。
子供らしい高い声。だけど落ち着いた調子の声だからか、結構心地よく聞こえる。
「食べる……?」
差し出された焼き魚は既に半分以上食べられていた。
私よりこの子に食べてもらいたいのだけど、食べろと目で訴えかけられたので一口だけ噛じる。
もういいと言う意味でニャーっと一声鳴く。
そんな私を見て、子供はふわりと笑った。