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魔法使いの愛猫  作者: iyo
3/12

03 貧相な子供






おじさんはおもむろに懐中時計を取り出すと、


「あぁ、時間だ……それじゃあまたね」


そう言って去っていった。


なんだか不思議な人だったな。


何と言うか、今まで会ってきた人とは何かが違っていた。


ただ、その何かが分からない。


……まぁいいか。




私はまた歩き出す。


だが、宛もなく歩いていたからか、いつの間にか知らない道に入ってしまったようだ。


なんだか廃れた裏路地っぽいところだ。


困ったなぁ……。


キョロキョロしていると、いきなり怒鳴り声が聞こえた。


「…っの糞ガキぃぃ!!」

「っ……!!」


なんだなんだと思っていると、私のいる場所から3mぐらい先にある家…というか小屋っぽいところから子供が吹っ飛んできた。


まっすぐこちらに吹っ飛んでくる…


え…?えぇ………!?


どうしよう…このままじゃ私は子供に押しつぶされて死んでしまう。


圧死だなんて一番死後が酷いやつじゃないか。


―逃げなきゃ、そう思うのになかなか足が進まない。


まるでスロー映像のようにゆっくりと、そして確実に私と子供の距離は縮まっていく。


ふいに、子供と目が合った気がした。


ゆっくりと澄んだタンザナイトの瞳が見開かれていく。


―綺麗だ、そんな風に見蕩れてしまっていた。


あぁ、うん。最期にいいもん見れたよ。



私が諦めて目をつむった時、私はふわりとした感覚に陥った。


驚いて目を開けると、そこはさっきまでいた場所と違っていて、ただそう離れた場所でもないこともわかる。


ここは…あのボロ屋の屋根…?




「おい、さっきそこにいた猫が消えたぞ。」


「どうなってんだ…?」


「どうせあのガキがまた何かしたのさ。あいつは化物だ。」


「変な術を使うのでしょう?怖いわ…」


「さっさとどっかに行きやがれ、化物!」


地面に叩き付けられたのか、子供は苦しそうに息をしていた。


そんな子供の周りを囲んでいたぶる大人たち。


なんと残酷な光景だろう。


…私に力があれば良かったのに。



しばらくしていたぶるのに飽きたのか、子供の周りに人が居なくなる。


さっき大人たちが言っていたのと、私が瞬間移動?したことと考えると、この子は魔法が使えるのではないか。


ここは貧困街だし、魔法というものが認知されていないのかもしれない。

(以前大きな街に出た時には、魔法使いさんを数人だけど見かけた)


私は子供に近付いてみた。


灰色の髪、タンザナイトのような瞳。


食べてないのか顔はこけ、体はやせ細っている。


お風呂も入ってないのかな、ちょっと臭い。


何とかしてやりたいな。


そう思ってうんうん唸っていると、子供はフラフラと起き上がって歩き出した。


おぉぃ?どこ行くんだい…?








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