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第一話 機械と星と町2

どうやったらたくさんの人に読んでもらえるだろう?

……もっと上手に文を書くしかないですね。はいorz


 森をしばらく歩くと、聴覚センサーが少女とは違う声を拾った。

 男性の声だ。発信源は約2キロメートル先。……どんだけ高性能なんだ、この機械の身体は。

 その事に内心で驚きながら、少女と共にその声の方向へと進む。

 どうやら、目的の場所は声の発生場所と同じところのようだ。

 ……というか、結構遠いんだな。俺はともかく、少女は疲れないだろうか、と思うが結構歩いたというのに少女の息は少しも乱れていない。

 見た目は幼いが、体力はあるのだろう。

 そのまま無言で歩く。まぁ、俺は喋れないのだからなぁ、と。

 一人でロボット相手に喋ってたら、結構危ない人だ。最初は俺が動き出して興奮してたみたいだけど、今は落ち着いてるようだし。

 少女が歩く度に豊かに揺れる白髪を眺めながら、ゆっくりと歩く。

 ――それにしても、第四地球(Ⅳth‐Earth)移民宇宙船(ノア・三番艦)とは……SFか。

 ロボットの身体っていうのもその事実に拍車をかけてくる。

 本当に、ここは何処で、どうしてこうなったんだか。

 さっきから、同じ事ばかり考えてる気がする。……しょうがないだろ。こんな状況、どうしようもないし。

 そう自分に言い訳する。混乱しているのだ、と。

 目の前に人間はいるが、話す事が出来ない。情報は、この機械の身体が与えてくれる断片的なモノ。

 説明してくれる人が居ないし、説明を求める事も出来ない。

 そんな状況で、どうしろと。泣くぞ。泣けるか判らないけど。案外、泣こうとしたらオイルでも目から流せるかもしれない。

 そんな事を考えながら歩いていると、視界に振動発生源という単語が出てきた。

 今度は何だ?

 少女の進行方向の草むらが白い線で括られる。そこが振動発生源という事だろう。

 本当に便利だな、この目。


「あ」


 しばらく歩いていると、少女も草むらに何かがあるという事に気付いたようだ。

 少し驚いた声を上げて立ち止まる。

 その声に反応したのだろうか、草むらからは――犬が出てきた。……犬の後ろにクエスチョンマークが付きそうな犬だったが。

 強いて言うなら、狼。しかも、かなりの大型。

 視界には全長1.7メートル、重量141キログラムという情報が表示される。

 名称はアンノウン。まぁ確かに、見た事は無い。こんな怪物は。

 大きさもそうだが、唸る事無くこちらをジロジロと“観察”するなんて知能は、狼には無い。

 もしかしたら俺が知らないだけであるのかもしれないが、普通は唸って威嚇してくるはずだ。

 だというのに、目の前の巨大な狼は俺ではなくナーガディアという少女(獲物)を前にして、静かに観察していた。

 大きく裂けた口を、ニヤリという擬音が聞こえそうなほどに歪めて。

 その三本の尾をゆらゆらと揺らしながら。

 そう、三本の尾だ。よく観察すると四本の足の肘関節部分からも、見慣れない鋭利な刃物――骨だろうか、ソレが覗いている。

 見た目は狼に似ているが、決定的に違う、全く未知の怪物。確かにこれはアンノウンだ。

 反射的に身構える。関節部がヴン、と低い音を鳴らす。

 更に、視界の中の情報が追加された。

 危険度(レベル)は3。それが脅威なのか安全なのかは判断できないが。


「あら、ガルムじゃない。結構小さいわね」


 しかし、そんな大きな狼を前にして目の前の少女はとても落ち着いていた。

 そんな少女を見ていると、警戒していた精神が少しだけ落ち着いた気がした。

 人間と言うのは、どんなに混乱するような状況になっても、傍に冷静な人が居ればある程度落ち着くものだと思っている。まぁ、人間じゃないけど。ロボットだけど。それでも心は人間なのだ。うん。

 視界の中で、アンノウンの名称がガルムへと修正される。

 しかし、成人男性並みの大きさだっていうのに、小さいのか……。大型サイズになると、どれだけ大きいのだろうか。

 動物は好きだが、さすがに恐怖を覚える。

 物騒な外見だが、芸を仕込めばお手でもしてくれるだろうか。――無理っぽい気がするなぁ。

 そんな事を考えていたら、少女はガルムから視線を外す事無く後退りし俺の後ろに下がる。


「さぁカイム。貴方の力を見せてちょうだい!」


 俺かよ!?

 しかも、ナーガディアの大きな声に反応したのか、ガルムが唸り声を上げて威嚇してくる。

 身体を低くして、いつでも飛び掛かれる体勢――テレビとかで何度か見た、獲物を狙う体勢だ。

 ――飛び掛かってくる。

 そう判断した瞬間、ガルムが正面から飛び掛かってきた。

 無駄に高性能な目は、その体躯が示す通り、凄まじい勢いで飛び掛かってきたであろうガルムをスローモーションのように捉える。

 大きく開かれた口内には、サメのように二重三重と重なった鋭利な牙を覗かせていた。

 そんな牙で噛まれたら、最悪食い千切られるし、千切れなくても治療不可能なダメージを与えてくるだろう。そう想像し、無意識に足が一歩下がる。

 というか、マジで怖いっ。なんでスローモーションなんだよ! 内心で毒づき、反射的に装甲で覆われている右腕を盾にして、噛ませてしまう。

 突然の行動だった。何も考えていない、反射的な行動。

 だがそれが功を奏した。どうやら腕の装甲は相当強度が高いらしく、噛んできたガルムの牙の方が砕け散った。

 グギャン、と驚きの声を上げて、一気に飛び退く。

 足元を見ると、かなりの数の牙が砕け、散らばっていた。数は22個。どうでもいい。

 右腕を見る。傷一つ無い。ガルムの唾液で濡れ光ってるのが少し嫌だが。ダメージと言えばそれくらいだ。

 凄いな、未来ロボット。あんな怪物に噛まれてもへっちゃらだぜ、ってか。

 その事実に少しだけ恐怖が和らぐが、相変わらず怖いものは怖い。

 それでも少女を前に出すような真似も出来ないし、その恐怖を意志で押し込んで視線をガルムへ向ける。

 俺を脅威だと判断したのか、後退りしている。

 そのまま逃げてくれれば、と思うが向こうは退く気は無いようだ。その眼には明確な敵意が宿っている。

 牙が欠けた口を怒りに歪ませ、涎を垂らしながら唸り声を上げてくる。

 怖い。怖いが――視界の中の脅威度(レベル)が3から1に修正された。どうやらこの脅威度(レベル)というのは情報が揃うと下がる……のかもしれない。

 その辺りは要検証だが、とにかくまずは目の前の脅威だ。

 脅威度(レベル)1だとはいえ、怖いものは怖い。どうにかして追い払わないといけない。

 後ろに庇っている……というよりも、俺を盾にしている少女を守る為にも。

 憤怒に染まったガルムの瞳が俺を見据えてくる。……マジで怖い。


「カイム、ちゃっちゃと倒しちゃって」


 簡単に言ってくれるな、この白髪少女。

 こっちが喋れないからって好き勝手に言いやがって。怖いんだからな。

 そう内心で毒づく。

 まぁ、とりあえず右腕の装甲があれば噛まれても大丈夫と判ったのは大きい。気持ちに余裕がある。

 多分両足の装甲も大丈夫のはずだ。問題は左腕と胴体。装甲に覆われていない、剥き出しの部分。そこが俺の弱点になる。

 しかし、そんな大きな的を狙わせるつもりも無い。

 何か武器は無いのか、と思考する。

 案の定、視界に新しい文字が現れた。



 主兵装――思考感知型流動金属体、残量無し



 何その格好良さそうな名前の武器。あと、残量無しって使えないって事じゃないか。

 泣くぞ、馬鹿野郎。意味無いじゃないか。

 他には何かないのか、と思考するが新しい文字は現れない。そうしている間にガルムが再度身体を低くする。恐らく狙ってくるのは左腕。

 真っ黒な人工筋肉が剥き出しの場所は、白銀の装甲を噛んだ後のガルムからしたらさぞかし柔らかく見えるだろうから。

 その程度の知能はあると想定する。また正面から来たら、もう一度堅い装甲を噛んでもらうだけだ。

 俺もガルムの突撃に合わせるように構える。

 ――直後、一歩右側……俺から見て左に跳んだガルムは、全身をバネのように弾ませて突撃してくる。

 しかし、それでも遅い。俺の視界は、そのガルムの突撃をまたしてもスローモーションのように捕えている。

 狙いは左腕。一直線に狙ってくる。

 その突撃に合わせて左腕を引き、右腕を握り込んでカウンターで腹部を殴りつける。


「ギャィン!?」


 その突撃の勢いそのままに殴られたガルムが、真横に吹き飛んで細い木を二本ほどへし折りながら森の中へ消えて行った。

 ……え?

 右手を見る。

 どんだけ馬鹿力だよ。いやいや、そこまで強く殴ったつもりは……。追っ払うつもりだったのに、あれじゃ死んだんじゃ……。

 そう思ったが、聴覚センサーが森の奥へと物凄い勢いで逃げていく音を拾う。

 生きてるのかよ。

 あっちも大概だったようだ。良かった……いくら怪物でも、生物を殺すのは抵抗がある。狼に似てたし。尻尾は三本あったけど。


「ふふん。良くやったわ、カイム」


 そして、俺を盾にしていた白髪少女は嬉しそうに俺の腰辺りを叩いてそう言った。

 無事だったのは良いが、なんか納得がいかない。

 それと、俺……この身体の損傷は、確か5割近かったはずだ。

 そう思うと、視界にまた俺の全身像っぽいものが表示され、損傷率47パーセントという数字が表れる。

 相変わらず便利だな。

 それよりも、だ。5割でこれだけって、完全に回復したらどうなるんだ?

 満足そうに上機嫌な白髪少女を視界の隅に収めながら、心中で溜息を吐く。

 これ、全身凶器ってレベルじゃねーぞ。

 あと、あんな怪物を見ても驚いてなかったけど、あんなのが日常的に存在してるのだろうか?

 そんなのは勘弁してほしいんだが。裏山に野犬が出没したとか言うレベルじゃないんだが。


「さ、それじゃ早く帰りましょ。ふふん」


 内心で盛大に溜息を吐く俺を尻目に、歩き出すナーガディア。

 あんな大きな狼に襲われたのに、元気だなぁ。

 俺は自分の現状とあの大きな狼だけで気が重くなるっていうのに。

 ここは俺が知っている地球ではなく第四地球(Ⅳth‐Earth)なのだと実感させられた。

 あんな大きな狼は、地球には居なかった。

 あの宇宙船にしても、そうだ。俺の日常には無かった物。宇宙ロケットが精々だった俺の記憶の中では、宇宙船ですらオーバーテクノロジーに思えてしまう。そして、こうやって二足歩行するロボットも。中身は俺だけど。

 本当に、溜息しか出ない。心中でだが。現実の機械の身体は、黙々と先を歩く白い少女の後を歩いている。

 その少女は、付き従うような恰好の俺に満足しているようだ。

 内心でこれだけ悩んでると知ったら、どんな顔をするだろうか?

 そんな事を考えながら、もう一度溜息を吐いた。








 それからしばらく歩くと――幸いにも、ガルムには会わなかった――舗装された道に出た。

 コンクリートではなく、石畳の、だが。

 今まで歩いていた獣道よりは歩きやすいが、内心で首を傾げてしまう。

 こんな人型ロボットを作るほどの技術があるのに、石畳というのが不思議だった。

 しかも、機械で均等に舗装してあるのではなく、おそらく人力なのだろう。

 石の大きさはまちまちだし、凹凸も目立つ。何より、道の幅が一定ではない。

 だがまぁ、道に出たという事実は精神的にありがたかった。

 これでも生身の頃は引き篭もり一歩手前だったのだ、いくら機械の身体とはいえ長時間歩くのは結構辛かった。

 気持ち、足取りが軽くなる。相変わらず、ドスンドスンいわせているが。


「あー、疲れた。帰ったら、湯浴みしたいわ」


 まったくだ。

 というか、この機械の身体は、水は大丈夫なのだろうか。

 水に浸かったらショートしましたとか、笑うに笑えない。犠牲になるのは俺だし。

 そもそも、この機械の身体が壊れたら、俺の意志がどうなるのか、というのもよく判ってないのだが。

 そんな事を考えていると、鬱蒼と生い茂った森の隙間から、人工物が見えてきた。

 高い――俺ですら見上げなければならないほどに高い壁。

 高さ54メートル。ビルの、約十二階建てほどの高さだ。……高すぎだろ。

 そう内心でツッコミを入れてしまう。視界にモニターが現れ、倍率を上げた映像が表示される。

 ……もう何が視界に写っても驚かないぞ。うん。

 『壁』の主材料は俺が知っている石や鉄、鋼などではなく先程見たノア・三番艦に使われている装甲と同質の材料のようだ。

 そう説明に出ているから、そうなのだろう。

 ちなみに、俺……この身体の装甲もあの『壁』と同じ『エルメルテ装甲』というものらしい。

 名前の由来は、地球の学者エルメルテ・リーガンさんが見付けたから、その名前が付いたそうだ。どうでもいい。

 そのまま歩くと、その『壁』の下に、入り口を発見した。

 高い壁とは真逆の、小さく質素な入口だ。扉は左右への開閉式。

 そして、見張りと思われる二人の男性も。やっと第二、第三村人発見だ。と冗談のように思っていたのも一瞬だった。

 変なのだ。

 うん。

 変だ。

 だって、その男性の頭には、見慣れないモノがあった。

 姿形は人間だ。身長は――その情報はもういいっての。視界から身長と体重のデータが消える。

 頭には、ケモノミミと呼ばれるものがあった。そう、ケモノミミ。アニメとかファンタジーの。

 しかも犬っぽい。

 よく見ると、腰……お尻の部分には、尻尾も。

 それと、その手には映画とかでよく見る槍が握られていた。

 取っ手の部分は木製、穂先は鋼だそうだ。その胸元を覆うのは何らかの獣の皮で作られた胸当て。


「ただいまっ」


「…………えー、っと」


 少し離れた場所から、元気よくナーガディアが二人に声を掛ける。

 後ろだから判らないが、声音から満面の笑顔なんだろうなぁ、というのは予想できた。

 だが、声を掛けられた二人は、遠目から判るほどに困惑した顔だった。

 そりゃそうだろう。

 いきなり俺みたいなロボットが現れたら。しかも二人が持っているのは中世とかRPGとかで見る槍なのだ。

 ロボットと美少女。男二人と鋼の槍。ミスマッチにも程がある。俺も困惑するしかない。どうしてそうなった。というか、浮いているのは俺だけだという事実に泣きそうになる。

 パワードスーツとか銃とかなかったのか。

 そう考えると、また視界に文字が並んだ。

 銃、暗器の携帯は確認できません、だそうだ。見れば判るわ。


「お、お嬢さん? もしかしなくても、そっちは最近よく話してた……」


 とは、俺から向かって右側の男。

 お嬢さんという事は、もしかしたらナーガディアは良い所のお姫様なのかもしれない。

 ……自分で思ってなんだが、それは無いな、と。

 視線を下に向ける。豊かな白い髪は腰まで伸び、手入れはあまりされていないので気付かなかったが、微かにウェーブ掛かっている気がする。

 身長148センチのデータ通り、小さく華奢な両肩と細い腕は見た目以上に健康的に感じられる。

 スカートに隠されている両足も同様だろうと、想像には難くない。あの森の道を息切れする事無く歩いたのだから。

 年齢はおそらく十代半ばほどだろう。年相応のふくらみしかない胸元も、少女らしさを現していると言える。

 意志の強そうな黄金色の瞳も相まって、まるで西洋人形や一種超然とした存在のように思えなくもない。

 そんな少女に、三十歳は越えているであろう二人が頭を下げながら話している。

 お姫様とはいかなくても、金持ちとか貴族とか、そんな感じなのかもしれない。

 鋼の槍を装備している二人と、ロボットである俺を起こしたこの少女の知識レベルが同等とも思えないのもこの考えに至った一因でもある。

 良い学校を出たとか、知識を学ぶ環境が整った場所で生活している。

 それが金持ちの特権なのは、どの時代でも同じ事だろう。

 そもそも、この星が――今のこの状況が、どういう状況か俺はまだ理解できていないが。


「ええ、この子はカイム。五十三番目の機体よ」


 と、無い胸を張って笑顔で言う。

 五十三番目?

 俺以外にも、後五十二体はロボットが居るのだろうか。

 それはそれで中々に希望が持てる話だ。

 もしかしたら、意思の疎通が出来るかもしれない。会話が出来るかもしれない。そう思うと、少しだけ気が楽になる。

 やはり、会話が出来ないというのは辛い。

 この短時間で、それは嫌という程理解した。

 こちらの疑問に答えてくれる人が居ないのだ。鬱憤ばかりが溜まって精神的にキツイ。


「さっきなんて、3メートルくらいあるガルムを対峙したんだから」


「そりゃ凄い!」


 いや、嘘を吐くならもう少しマシな嘘を吐こうよ。

 流石に3メートルなんて大きすぎるだろ。

 実際は1.7メートルなんだから。せめて2メートルくらいの大きさにしとこう。

 そう視線を向けるが――。


「3メートル級のガルムなんて、確認されている中でも最大級じゃないですか」


 マジか。居るのか、3メートルクラスの狼っぽいヤツ。

 流石にそれは勘弁してほしいな。首から上が噛み千切られそうだ。


「流石はアルシエフ家の御息女様。立派な機体を従えましたな」


 とはもう一人の兵士。

 はい?

 それは、俺も初耳なんだが。

 騎士? 俺が?

 何の冗談だ、と。

 そう思い、視線を傍らに向けると、少女の表情は少しだけ強張っていた。

 視界には、ナーガディアの心拍数やら体温やらが上昇している事を表示しているグラフが現れる。

 緊張している? 今の会話のどこに、緊張する要素があったのだろうか。


「そんなんじゃないわ」


 そう言うと、話は終わりだと言わんばかりに歩き出す。

 俺も門の中に入って良いのかな、と思ったが、とりあえずナーガディアに付いて行く。

 駄目なら止められるだろう、と考えて。

 結果、止められなかった。どうやら俺も町の中に入って良いらしい。


「お嬢様をよろしくな、機械の騎士殿」


 それどころか、結構フレンドリーに話し掛けられた。

 割とロボットって普及してるのだろうか? 見張りの装備は鋼装備だけど。

 よく判らない世界だなぁ、と。

 二足歩行のロボットが普及してるのに、中世みたいに見張りの兵士が居るし。装備は槍だし。

 しかもケモノミミ。ファンタジーなのかSFなのか。はっきりしてほしい。混乱するから。

 そんな事を考えていたら、白い扉が左右へと自動で開いた。

 うーん。ここはSFだよなぁ。


「行くわよ、カイム」


 そう言って門を通った少女を追い掛ける。

 門の――『壁』の中は予想していたのとは全然違う風景だった。……この言い回し、目を覚ました場所から出た時も使ったような気がするな。

 まぁ、とにかく。

 『壁』の中には、石造りの家が立ち並ぶ町があった。

 石である。コンクリートとかではない。

 しかも、道は馬車が走っている。引いているのは馬ではないので、馬車とはまた違うのかもしれないが。

 馬は六本足ではないし、角も生えていない。

 でも、見た目は何処となく馬っぽい。そんな生物が荷駄を引いていた。

 他にも、町を歩いている人。

 そのほとんどに獣耳と尻尾があった。兎だったり猫だったり犬だったり。

 それこそ、ナーガディアのような人間の方が少数なのではないだろうか。

 どうなってるんだ?

 移民宇宙船ノア・三番艦のデータを呼び出す。


 全長 1.550m。

 収容人数 24.300人


 そう、収容人数二万四千人。

 これだけの人間が居るはずなのに、町に居るのは獣人ばかりだ。

 しかも、俺の存在に気付いたのか、皆の視線がこっちに向く。

 滅茶苦茶目立っていた。

 ……そりゃそうだ。だって、街並みは完全に中世のソレだ。RPGの世界だ。

 だというのに、俺一人SFなのだから、目立って当たり前だ。

 ロボットは結構普及していると思っていたが、見た限りでは俺以外には一体も居ない。

 そんな周囲の視線に気付かず、もしくは気にもせず、白髪の少女は迷いなく真っ直ぐと歩く。

 何処を目指してるのか判らないけど。取り敢えず付いて行く。犬か、俺は。


「従えたんじゃない――私はお兄様とは違うもの」


 どうやら、ナーガディアにはお兄さんが居るらしい。

 まぁ、今はどうでもいい情報か。

 そんな事を考えていたら、視界の隅にまた文字が浮かんだ。



 『ナーガディア・アルシエフ』個人情報追加。



 そんな機能まであるのか、この機体。



喋らない主人公って珍しいだろうか?

なんか、書いててそう思いました。今更感が凄いですけどw

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