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淳于瓊☆伝  作者: けるべろす
南方篇
71/89

第67話 潁陰(えいいん)の名士

間があきましたm(__)m

次話は今日中に更新できるかと思います

 洛陽(らくよう)から潁川(えいせん)へ向かう道すがらデキウスは笮融(さくゆう)淳于瓊(じゅんうけい)波才(はさい)にこれからの予定を説明していた。豫州(よしゅう)潁川(えいせん)郡では賈郷(かごう)の前に寄るところがあると言うのである。


 「まずは潁陰(えいいん)劉陶(りゅうとう)さまに挨拶をしにいかねばならんのだ」


 洛陽からみて潁川(えいせん)北部の潁陰(えいいん)潁川(えいせん)南部の賈郷(かごう)へゆく通り道にあたるから寄り道としては問題ない。淳于瓊(じゅんうけい)賈郷(かごう)と洛陽を行き来する際には潁陰(えいいん)(じゅん)家に寄るようにしている。


 「ま、まさか潁陰(えいいん)劉陶(りゅうとう)さまといえば清流派として有名なあの劉陶(りゅうとう)さまのことか?」


 笮融(さくゆう)は驚きの声をあげた。劉陶(りゅうとう)の名前は淳于瓊(じゅんうけい)にも聞き覚えがあった。たしか賈彪(かひょう)潁川(えいせん)における清流派の一人としてその名を挙げていた人物だ。もっともなぜデキウスが清流派の劉陶(りゅうとう)に挨拶に行かねばならないのかはさっぱり判らない。


 「その劉陶(りゅうとう)さまだ。ある交州(こうしゅう)の豪族の子弟が洛陽に遊学していた際に劉陶(りゅうとう)さまに師事しておったらしくてな。劉陶(りゅうとう)さまの伝手(つて)で紹介をしてもらうって算段になっておるのだ」


 涼州(りょうしゅう)交州(こうしゅう)といった僻地の豪族の子弟は中央からやってきた文化人に師事することが一般的ではあるが、より箔をつけるために洛陽や長安へ遊学するというケースも少なくない。 劉陶(りゅうとう)もそういう田舎者を受け入れていた一人なのであろう。


 「なるほど、たしかに交州(こうしゅう)にも協力者は必要ですからね。都に遊学していた人物なら信用も出来ますし。で、その豪族ってのはなんて名なんですか?」


 「うむ、士燮(ししょう)とかいう名前だったかな。交州(こうしゅう)蒼梧(そうご)郡(現在の広東省)の豪族で、()県の県令を務めておったのだが今は交州(こうしゅう)に戻って交趾(こうし)郡の太守に任じられておるそうだ」


 士燮(ししょう)といえばゲームなどでは空白地の交州(こうしゅう)に出てくるかなり政治力に優れた武将だったはずだ。 口にはだせないが笮融(さくゆう)より余程頼りになりそうである。

 とはいえ、この段階ですでに郡の太守だというのには驚いた。


 "おいおい、士燮(ししょう)っていえば孫権(そんけん)の時代にようやく名前が出てくる人物じゃないか。まだそれまで少なくとも三十年はあるぞ。いま三十歳としてもその頃には六十歳越えとか、どんだけ長く活躍してたんだよ"


 とにもかくにもこれで南方交易のルートにおける各地の協力者が揃ったことになる。豫州(よしゅう)潁川(えいせん)淳于瓊(じゅんうけい)揚州(ようしゅう)丹陽(たんよう)笮融(さくゆう)交州(こうしゅう)士燮(ししょう)

 淳于瓊(じゅんうけい)潁川(えいせん)に数多くいる名士たちと賈彪(かひょう)の伝手でつながりがある。笮融(さくゆう)は現役の三公にして揚州(ようしゅう)の大物豪族である周景(しゅうけい)とつながっている。そして士燮(ししょう)は自身が交州(こうしゅう)の大物豪族でありなおかつ潁川(えいせん)とも劉陶(りゅうとう)の縁でつながっている。

 デキウスはなかなか良い協力者のチョイスをしたなと、感心する淳于瓊(じゅんうけい)であった。


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 一行が劉陶(りゅうとう)の家に着いたとき、あいにく劉陶(りゅうとう)は来客中であった。暫しこちらでお待ちくださいと家人に案内された待機部屋には淳于瓊(じゅんうけい)も良く知った人物たちがいた。鍾繇(しょうよう)郭図(かくと)、それに荀攸(じゅんゆう)だ。

 彼らは淳于瓊(じゅんうけい)の顔を見るや張譲(ちょうじょう)の家の葬儀に参列したことを口々に責めてきた。


 「奇妙、なんで小黄門(張譲(ちょうじょう))の家の葬儀になんかに行ったんだ。見損なったぞ」


 「まったくだ。少し機転がきいて賈彪(かひょう)さまに認められてるからって調子に乗り過ぎなんだよ。まったく不肖の弟子と言うべきだな」


 「郭図(かくと)、言い過ぎだぞ。悦兄さん(荀悦(じゅんえつ))から淳于家の事情はきいてはいるよ。しかし家の事情がどうであれやはり行くべきではなかったと俺も思う」


 事前に予想していたこととはいえ宦官の家の葬儀に参列したことに対する風当たりはすこぶる強いようだ。しかし同世代(同じ子ども)の批判に対してここで弱気を見せては将来にまで響いてしまう。


 「兄が涼州で夷狄(いてき)の侵寇を防いでいる中ではそうすることが最善だと判断したのです。決して天に対して恥じ入るものではありませんし後悔もしていませんよ。それとも涼州(りょうしゅう)の守りがどうなろう構わないとでも?」


 まあ曹操と対立したのは完全に誤算だったけどな、とは口に出さず淳于瓊(じゅんうけい)は胸を張った。なまじ優秀な彼らには淳于瓊(じゅんうけい)の謂わんとすることが理解できてしまうのであろう、悔しそうに押し黙った。


 「奇妙、なにやら揉めているみたいだがこの子たちは知り合いなのか?いいとこの坊っちゃんっぽいが」


 笮融(さくゆう)が心配するふりをして口を挟んできた。実際には名家の子弟然とした面々への興味が隠せていないが。


 「たいしたことではありません。こちらは鍾繇(しょうよう)郭図(かくと)荀攸(じゅんゆう)、みな潁川(えいせん)を代表する名家の有望株です。おそらく荀爽(じゅんそう)さまあたりに付き従って劉陶(りゅうとう)さまの家に来ているのでしょう」


 荀爽(じゅんそう)劉陶(りゅうとう)は同じ潁陰(えいいん)の清流派の名士であり昨今の情勢について話し合うことも当然頻繁におこなっている筈である。そして荀攸(じゅんゆう)ら年少組みは荀爽(じゅんそう)に付いてはきたものの清流派の密談に参加することは認められずここで待たされていたのだろう。

 すると郭図(かくと)がとんでもないことを言い出した。


 「ふん、よくわかったな。荀爽(じゅんそう)さまは劉陶(りゅうとう)さまと清流派の反撃について話し合われているんだよ。いつまでも手をこまねいているわけにはいかんからな。特に何顒(かぎょう)どのは実力行使を考えておられる。もちろんそうなれば俺たちだって参加する覚悟でいるぞ。宦官に尻尾を振るお前とは違うからな」


 「実力行使?」


 郭図(かくと)の不穏な言葉に淳于瓊(じゅんうけい)は眉をひそめた。


 「そうだ。獄を襲って囚われた清流派の方々をお救いするのよ」


 余りに無謀な話に淳于瓊(じゅんうけい)は頭を抱えてしまった。せっかく天子を説得して解放される目処がついったってのに台無しである。そんな真似をされたら獄につながれた者の身はかえって危険に晒されてしまうだろう。絶対に止めなければならなかった。淳于瓊(じゅんうけい)は立ち上がって家人の人を呼び’奇妙が来ている’と荀爽(じゅんそう)らに伝えるよう頼んだ。


 「お、おい、奇妙。いったい何の真似だ?」


 驚く鍾繇(しょうよう)淳于瓊(じゅんうけい)は答えた。


 「もちろん、軽挙妄動をせぬようにお止めするのです」


 「だからって何でお前が来ているって伝えるだけでそんな話になるんだよ。俺たち年少組は密談に入れてもらえずにここで待機させられてるってのに!」


 「ですが私が来ていることを知ればすぐにお会いになろうとするでしょうね。ほら、戻ってきましたよ」 


 淳于瓊(じゅんうけい)がそう言い終わらぬ内に先ほど伝言を頼んだ家人が部屋に駆け込んで来た。淳于瓊(じゅんうけい)をすぐに呼べといわれて慌てて戻ってきたのだろう、息があがっている。


 「し、子奇(劉陶(りゅうとう))さまたちがすぐにお会いになるそうです。こちらへどうぞ」


 荀爽(じゅんそう)には洛陽へ向かう際にその旨を告げている。洛陽の最新情報を知る淳于瓊(じゅんうけい)の帰還を知れば直ぐに呼び出すのは当然であろう。そのような事情を知らず唖然とする鍾繇(しょうよう)らを尻目に、淳于瓊(じゅんうけい)荀爽(じゅんそう)たちのもとへと急ぐのであった。

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