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淳于瓊☆伝  作者: けるべろす
賈郷篇2
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第44話 少女との再会

これまで実態に即して会話での呼びかけは(あざな)を優先していましたが

登場人物が増えるに従いこのままでは収集がつかなくなると

今更ながら気付いてしまいました。


これより(あざな)で呼ぶのを親しい間柄に限定することにしますm(__)m

 大秦国の使節(偽)のデキウスらが洛陽に出立して5日後、并州(へいしゅう)太源(たいげん)より郭泰(かくたい)が賈郷に訪れてきた。郭泰(かくたい)は友人の賈彪(かひょう)に会うためによく賈郷に来るのだが今回は少し様子が違った。


 「奇妙の(ぼん)よお、郭泰(かくたい)さまのお供の子を見たか?」


 賈子(かし)のリーダー格である陳良(ちんりょう)淳于瓊(じゅんうけい)に聞いてきた。淳于瓊(じゅんうけい)はいま郭泰(かくたい)の到着を知ったばかりでそんなのは初耳であった。淳于瓊(じゅんうけい)は首を振る。


 「いや、まだ見ていない。そもそも林宗(りんそう)(郭泰(かくたい))さまはあまりお供を連れては動かない筈なんだが珍しいな。どこかで見所のある子どもを見つけたのか?」

 

 昨年、淳于瓊(じゅんうけい)張奐(ちょうかん)将軍を清流派に引き入れにいく旅で郭泰(かくたい)とともに并州へ赴いた。その際は行く先々で郭泰(かくたい)が供を連れていることに驚かれたものだ。


 "あの時の郭泰(かくたい)さんはあきらかに楽しんでいたからな。でも今回はいったい誰を連れてるんだろう?"


 「いや、それがな俺と同じか少し上くらいの女の子なんだよ」


 「はあ?」


 陳良(ちんりょう)は今年で10歳である。郭泰(かくたい)にロリコンの気は無かった筈なんだが、と淳于瓊(じゅんうけい)が目を白黒させているところに波才(はさい)が屋敷からやってきた。


 「奇妙さま。偉節(いせつ)(賈彪(かひょう))さまと郭泰(かくたい)さまがお呼びです」


 「わかった。すぐに行く」


 師を待たすのは非礼に当たる。淳于瓊(じゅんうけい)波才(はさい)とともに屋敷へと急いだ。




 「あれ、君は・・・」

 「あーっ!奇妙!やっと会えた!」


 淳于瓊(じゅんうけい)が挨拶をして部屋に入るとそこには見知った顔があった。 

 并州雁門(へいしゅうがんもん)で官軍である虎賁(こふん)の兵に掠奪を受け拉致されていたところを助けた少女だ。さらに彼女の姉が陣中で産気づき淳于瓊(じゅんうけい)が赤子を取り上げたりもした。たしか名前は・・・


 「張青だっけ?どうしてここに?」


 正直なところ2度と会うことはないだろうと思っていた少女との再会であった。交通の発達していない時代にそうそう気軽に行き来できる距離ではない。


 「あんたが豫州(よしゅう)に住んでるなんて聞いてなかったから大変だったんだから。あの後に董羽林郎(とううりんろう)(董卓)さまからはあなたが郭泰(かくたい)さまに付いてきた子どもだって聞いてたから(同じ并州の)太源(たいげん)までいけばすぐに会えると思ってたんだけど」

 「でも太源で郭泰(かくたい)さまから奇妙が賈彪(かひょう)さまの弟子だって謂われてね。今さら郷に帰ることもできないしあの時は焦ったわ」


 苦労して豫州(よしゅう)潁川(えいせん)郡の賈郷までやってきたのは判ったが何故そこまでして会いたがっていたのかが判らない。しかも郷に戻れないとは穏やかではない。


 「もしかしてあの赤ん坊死んじゃったの?」


 淳于瓊(じゅんうけい)は恐る恐る聞いてみる。ぱっとみ障害があるようには見えなかったが逆子だけにどこかに不具合があったのかもしれない。


 「死んでないわよ。(逆子じゃなく)普通に生まれた子どもより元気なくらいよ。」


 「じゃあなんで僕に会いに来たんだい?」


 いろいろ苦労しただけにあの赤ん坊には是非元気に成長してもらいたいと思う。お産に問題があったわけではなさそうで淳于瓊(じゅんうけい)はとりあえずほっとする。

 しかし続く張青の言葉がほっとした淳于瓊(じゅんうけい)を愕然とさせた。


 「うん、それでね。あんたに医術をおしえてもらおうかなって」


 「へっ?」


 予想外のことをいわれて淳于瓊(じゅんうけい)は思考が追いつかず2、3度目をしばたたかせる。たしかに彼女の姉のお産のとき'医者の息子'とか誤解を受けたのを面倒くさいからと放置していたように記憶している。しかしだからといって誰が後になって弟子入りに押しかけてくるなんて予想するだろうか。


 「ちょっちょっちょっと待って。林宗(りんそう)(郭泰(かくたい))さま。私が医者の子じゃないことを教えておかなかったんですか?」


 「うむ。おもしろそうだからな」


 「どうするんですか!?女の子をこんな遠くまで連れてきちゃって!?」 


 「ははは、希望通り医術を教えてやったらどうだ?」


 他人事だと思って笑いながら適当なことをいう郭泰(かくたい)淳于瓊(じゅんうけい)が睨みつけるのだが7歳児に睨まれたところで郭泰(かくたい)がビビる筈も無く平然としている。思わず淳于瓊(じゅんうけい)は叫んでしまった。


 「出来るわけないでしょう!!私は医者の息子でもなんでもないんですよ!」


 「やっぱ無理かな?」


 そう聞いてきた張青の不安そうな顔をみて淳于瓊(じゅんうけい)ははっと我に返る。


 「いや、あれだ、ええと、そういうわけじゃなくて、その、今さら郷に戻れないってのはどういうことなの?」


 しどろもどろになりながらも気になっていた点を問いただす。普通なら太源で郭泰(かくたい)から奇妙が医者の息子では無いことを告げられ雁門の故郷へ帰って終わる話だからだ。

 しかし張青から詳しい話をきいてみるとそう簡単な話ではなかったのである。


 「虎賁(こふん)の連中に荒らされた痕がそんなに厳しかったんだ」


 「うん。働き手になる郷の男たちが結構殺されちゃったし家畜も全滅。別駕従事(べつがじゅうじ)(王允(おういん))さまが税を減免してくださってるけどやっぱりね」


 このままいよいよしのげなくなれば待っているのは口減らしだ。流人となるかそれとも()や娼妓として売られるか。状況的に男児や子どもを産んだ女は郷に残されるだろうが、そうでない張青は口減らしの対象とされる可能性が高い。つまり張青は故郷にかえっても(ろく)な未来が残っていないのだ。


 "さて、どうしたものかな"


 難題を抱えさせられた淳于瓊(じゅんうけい)はとにかく一晩考えさせて欲しいと願い出たのであった。

長いので2話に分割しました。

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