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淳于瓊☆伝  作者: けるべろす
賈郷篇
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第2話 回想

淳于瓊の父親はまだ母親のお腹にいるあいだに、母親も産後の肥立ちが悪く産まれて間もなく他界しており、年の離れた兄淳于沢が実質親代わりであった。

赤ん坊時代はいたって普通で手もかからなかったと淳于沢が遠い目をして話していたのを聞いたことがあるが、淳于瓊は三歳になった頃から前世の記憶が自分の中に存在していることを認識するようになって豹変したのであった。

といっとも最初はただただひたすらパニックになるだけであったが。


"ここはどこなんだ?なぜ俺は赤ん坊なんだ?"


すったもんだの末、自分が転生したことをどうにか理解したのだが、次は古代の生活レベルにパニックの連続である。


"板の床に麻の布だけって寝れるかよ!畳ないの?綿入りの布団も?"

"身体は拭うだけ?たまにはお湯につかろうよ!石鹸もないのかよ!?"

"飲み水って濁ってるじゃん。煮沸もしないの?ムリ!ムリだっつーの!"


あまりに不便な生活であったが、慣れとはおそろしいもので、いつのまにか適応できているのだから不思議なものである。

それにいくら21世紀に比べて不便であっても、淳于家は当時の上流階級である。

寒さをしのぐ家があり、餓えや渇きの心配もなく生きていけるというだけで、相当恵まれているのだということに気付いてからは、あまり文句も言えなくなってしまったのであった。


そうやって徐々に新しい生と向き合おうとした淳于瓊だったが、この新しい'現在'が自分の知る'過去'であることに気付いて、また一悶着があった。


"洛陽?漢の都?それって後漢じゃないか!"

"光武帝が没して既に100年以上経ってるの?ヤバいって!董卓に燃やされるって!逃げないと!"


この時は幼児がイキナリ街が燃えるとか言い出したもんだから、本当に気が触れたんじゃないかとずいぶん心配されたものであった。

結局黄巾の乱も未だ起きてないことを知って人心地ついたものの、別の問題は残っていた。そう、自らの末路についてである。前世で三国志演義のゲームは何度もやり込んでいた。


"淳于瓊ってあれだよな。袁紹の配下で官渡の戦いのとき食糧貯蔵所を守備してたのを曹操に強襲されて捕らえられて処刑だっけ。冗談じゃねえぞ!"


淳于瓊の自らの知る未来を変えるための奮闘はこうして始まったのであった。


それから三年〜


淳于家の本籍は潁川であるが実態は洛陽に居をかまえてきた。この時代の士大夫は地方に郷(村)を持つ豪族出身か、都で仕官して禄を受けとる官吏の家柄出身であるのが相場であった。

淳于家は後者で代々三公とはいかないまでも九卿や太守を出すぐらいの家柄である。逆に賈彪は潁川郡定陵県に郷を持つ豪族出身者であり、兄の涼州行きに合わせて淳于瓊も賈郷に移ることになっている。


ものごころついた時には既に両親がいなかった淳于瓊にとって兄、淳于沢がまさに親代わりで、初めて別れて暮らすことになる。


本当は兄と涼州に赴き力になりたかったのだが、兄のいつにない強い拒絶にあったのだ。

曰く、

「兄弟共倒れになったらどうする?家を断絶させる危険はおかせん。奇妙が想像するよりずっと危険なんだぞ。」

とのことで、淳于瓊が

「危険な任地だからこそ、そばにあって力になりたいのです。」

と食い下がっても、取り付く島もなかった。


そんなやりとりの中で賈彪と出会い、結局潁川で兄の帰りを待つことになったのだが…


"果たしてこの選択がどうでるか。西暦184年黄巾の乱、189年董卓の上洛、200年官渡の戦い。やはり鍵は黄巾の乱がいつ起きるのかだよなぁ。延熹八年って西暦で何年になるんだよ…"


淳于瓊の旅立ちが近づいていた。














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