表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
淳于瓊☆伝  作者: けるべろす
党錮篇1
26/89

幕間 そのころ涼州では

短いです。

淳于沢の近況を書いてみました。

伯簡(はくかん)どの、輜重(しちょう)の兵がまた到着したみたいですよ。」


「またですか。なんか最近やたらと輜重(しちょう)()を通ってませんか?」


漢陽郡冀県に赴任してきている淳于沢は毎度恒例となっている泣き言を口にした。

淳于沢が泣きついたのは同年齢の県丞(下級役人)で赴任してすぐに意気投合した相手だ。


「ん~、これまではそんなことはなかったんですけどね。なんでも段校尉(段熲(だんけい))の指示で全ての輜重が冀を通るようになったみたいです。冀を通せば軍の末端まで糧食が行き渡るって評判が耳に入ったとか。」


「兵数に応じて糧食を分配してるだけなんだけど。それにしたって文和どのがいなけりゃとっくに手が回らなくなってたし。」


文和と呼ばれた若者は苦笑いを浮かべた。

この律義な新しい県令は判っていないみたいだが、いかに物資をちょろまかすかに頭を使うのがこれまでの役人の常なのだ。軍事物資が目減りせずに届けられる現状は奇跡に等しいとさえいえる。


「分配の正確さだけでなく、伯簡が採用した割符(わりふ)の効果も評価されていると思われます。」


「へえ、でも割符は弟の発案ですよ。」


割符は兵站業務に兄が関わっていることを知った淳于瓊が、間違っても横領の疑いをかけられないように証拠のこしとして採用するように提案してきたのだった。

物資の届け先に事前に割符の片割れと目録が届けられており、物資が目減りしていれば一目瞭然になってしまうため、横領を防止する効果が生まれている。


「そういえば伯簡(はくかん)どのが愛用している算盤(そろばん)も弟さんが考案したものでしたか…。今はあの高名な賈偉節どのに師事されているそうですが、いつかお目にかかりたいものです。」


「弟は私と違って優秀ですから、文和どのとは話が合うでしょうね。」


「私はただの木っ端役人ですよ。相手にもされないんじゃなですか?」


「何いってるんですか。文和どのはかの張良陳平の再来とまで言われる'西方の賢士'じゃないですか。大丈夫ですよ、すぐに私なんかより出世しますって。」


淳于沢の陽気な物言いにお世辞や美辞礼句の匂いはない。

その為人(ひととなり)とでもいおうか、中原の人間には珍しく涼州人を見下すところも全く感じさせないこの若者はおおむね好意をもって迎え入れられていた。


"私が張良や陳平なら、あなたには高祖に通じる何かがあるんですけどね。"


心のなかでそうひとりごちながら、賈詡(かく)は淳于沢とともに届いた荷をあらためるために街のはずれへと足を向けたのだった。


賈詡(かく) 字を文和(ぶんわ) 147年生まれ 武威郡姑臧県(ぶいぐんこそうけん)の人 

    後の'西方の謀士'

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ