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それから数日後。文芸部の部室に三人はいた。外は運動部の声でにぎやかだった。
「あれからだいぶ経つけど、誰も見学にも来てくれないね。・・・・・・私最近思ったんだけど、もしこのまま誰も来ないで私たちが卒業したら、この文芸部ってやっぱりなくなっちゃうのかな」
扉を見ながら杏がぽつりと呟いた。
「・・・・・・」
裕文はなにも言うことができなかった。
この文芸部には、一年生おろか二年生がいなかった。裕文たちが引退して部員がいなかったら、この学校から文芸部はなくなることを意味していた。
三年生が受験勉強のために引退して三人だけになっても、それでも楽しかった。部室でお菓子を食べながら色々なことを話したり、トランプで遊んだり、勉強を教えあったりもした。創作活動にも真面目に取り組み、部誌も作った。来年になればきっと一年生が入ってきてくれるだろう、このままでも大丈夫だろうと思っていた。
しかし、現状は違う。他の部活には新入生は見学に来ているというのに、ここには誰も来ていない。そんな甘い考えでいられる場合ではなかった。このままでは、文芸部はなくなってしまう。
・・・・・・そんなことには絶対にさせない。ずっとずっと前からあったこの文芸部を、自分たちのところでなくさせやしない。
裕文に部長としての強い決意が生まれた。待っていて駄目なら、自分から動けばいいのだ。
「まだ俺たちが引退するまで時間がある」
えっ、と言って、口をあけたまま塚本と杏が裕文を見た。
「文化祭のときにみんなの前で話してやる」
「な、なにを?」
塚本は戸惑いながらも聞いた。
「文芸部のことを」
裕文は笑っていた。