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始めに書き忘れてましたが、これは短編です。
文字数の関係で、6つに分割しております。
「いてっ。」
昼に外で豚ロースかつ定食を食べたその帰り、俺の頭のに何かが当たった。
「レジ袋・・・の中に箱? いや、牛乳パックか?」
しかし、ずれた眼鏡の位置を直して拾ったそれには、液体など入っておらず、振ってみるとカサカサとビニールの擦れる音がした。
どこから落ちてきたんだ?
オフィス街の真ん中で上を振り仰いで見ても、開いた窓など見当たらず、誰かの落し物という線は薄そうだ。
周りを見回してみても、放り投げてぶつけてくれたような、不審な素振りを見せるヤツはいない。
カラスが咥えて飛んでて、落としたか?
しかし、袋にも箱にも咥えたような跡などまったく無くて、謎は深まる一方だ。
袋には店のロゴマークらしきものがプリントされ、中の箱はやたらとカラフルな色使いで、幼稚な印象を受ける。
そして、どちらにも文字らしきものが書かれているが、それはまったく見た事のないもので、さっぱり読めない。
一緒に袋に入っていたレシートも、同様に意味不明だ。
とりあえず、事務所に戻ってから中身を見てみるか。
そう思い、俺はカバンに放り込んで・・・結局そのまま忘れてしまった。
・・・今思えば、この時点できちんと交番に届けておけば、この後の面倒な事態に巻き込まれる事など無かっただろう。
日々、普段通りの生活を送り、人としての一生を送る事が出来たはずだ。
人間の好奇心を恨むべきか、浅はかな行動を取った自分を恨むべきか・・・。
しかし、今更どうこう言った所で、もうどうにもならない。
俺の生活は、今日を境に180度変わってしまったのだから。
予想外に長引いた相談の後、それを書類にまとめた。
それから帰宅したのだが、家に帰りついた頃には日付が変わりそうになっていた。
ま、長引いても、その分金になるから苦にはならない。
しかし、夕飯はどうしたものか・・・空腹のピークを過ぎ、今更の感はあるが、まったく減ってない訳でもない。
そんな事を考えながら、部屋の鍵を外してドアを開けると・・・ピンクの羽根を背負った、茶色い頭の若い女が家の中にいた。
「飴を返して下さい。」
そしてその女は唐突に、そう訳の分からない事を言う。
その物言いは丁寧だが、声には迫力があり、どこか否定出来ない威圧を感じ・・・そこが気に入らないなと、まず感じた。
しかし、何でこいつ羽根なんか背負ってんだ?
そもそも何でうちに居るんだ?
・・・こいつは頭のイカレた痛いヤツか?
「お前誰だ?」
「天の使いです。」
即答された言葉に、俺はうんざりした。
・・・やっぱり頭の可哀想なやつか。
綺麗な顔してるのに、もったいない。
「・・・で、どうやって入った?」
「どうやっても何も、私達に人の物理法則なんか通用しませんよ。それより飴を返して下さいってば。」
さすが頭の可愛そうな女だ。今、さらっと妙な事を言いやがった。
それより、複数形だった事が気になる。
・・・他にお仲間がいるのか?
「飴って何の事だ?」
「飴の入った牛乳パックみたいな箱です! 空から落ちてきたでしょう?」
「・・・あぁ、あれか。」
必死な様子の女を横目に、カバンに放り込んですっかり忘れていた箱を手探りで出した。
「それです、それ!!」
女は箱を目にした途端に喜んだので、俺は目の前で、その箱を無造作に破って開けた。
「あーっ!?何するんですか??? 復刻版ですよ、それ! すっごい行列に並んで買ったのに・・・。」
「知るか。この箱を知ってるって事は、お前がぶつけたんだろう? しかも不法侵入までして、高圧的な態度を取ってるのが悪いんだ。」
そのまま中身を1つ取り、何の躊躇も無く袋を破った。
「ほぉ・・・確かに飴だ。しかし、すごい色だな。」
袋から現れた球体は、輝石のように虹色に煌いていた。
すごい進歩だな。今はこんな物が作れるのか? お菓子メーカーの技術はすごいな。
もちろん俺は、その飴を口に放り込む。
その瞬間、女は悲鳴を上げ、口の中には不思議な味が広がった。
嫌がらせのためだけに、別に食べたい訳でもない飴を舐めたんだが・・・驚いた。
俺はこんな味は知らない。
飴だから甘いのは甘いんだが、それだけじゃない。
本当に、お菓子メーカーの技術はすごいものだと再び感心した。