『同級生の元伯爵夫人』
あなたが連絡してこられた……記者さん? 随分お若いのね。
ああ、ごめんなさい。
王室付きの記者と伺っておりましたし、何より何十年も前のお話を聞きたいとおしゃっていたものですから、てっきり同じくらいの年齢の紳士が来られると思っていましたの。どうかお気を悪くなさらないで。
ありがとう。
それで、クローデット伯爵家の御令嬢のお話をということでしたけれど、どちらのお話をすれば良いかしら?
ええ。長女のケイト様と次女のカーレン様。
……そう。まずはケイト様のことね。
ケイト様は……容姿端麗で気品と教養を兼ね備えたまさに『貴族令嬢の鏡』と呼べる方でしたわ。
艶やかな黒髪をいつもきっちり結い上げて、黒曜石のような瞳は常に淑女の微笑みを絶やさず、指の先まで上品に振舞っておられました。
幾ら貴族の娘とはいえ、あの年齢であそこまで完璧に振舞える方はそうそう居ませんわ。
近い世代の令嬢達は皆、両親から一度は『ケイト様を見習いなさい』と言われたものですよ。もちろん、私もね。
ケイト様と仲が良かったのかと?
……いいえ。
同じ学園に通う同級生ではありましたけれど、あまり交流はありませんでしたわ。ケイト様は大層お忙しい方でしたから、気軽に話しかけるのは躊躇われましたの。
たしか十歳になるかならないかの頃にお母様をご病気で亡くされて、それ以来、当主教育の傍ら女主人の仕事も代行していらっしゃったんですって。
だからでしょうね。私たちと比べてずっと大人びていらっしゃるように感じていましたわ。
当時も大変そうだとは思っておりましたけれど、実際に結婚して伯爵夫人の立場になってみれば、ケイト様の状況がそんな簡単な言葉で言い表せるものではなかったと痛感しましたわ。
少なくとも私が同じ年齢の時には到底こなせない仕事量でしたもの。やっぱりケイト様は特別な方だったのよ……
ですから、あの方が学園卒業と同時に姿を消してしまったことには驚きましたわ。
……
嘘はよくありませんわね。
実は薄々そうなるのではと思っていましたの。
私だけではありませんよ。皆です。皆、ケイト様が噂で聞いた『自由奔放な異母妹』に嫉妬していらっしゃることに気づいておりました。
当然でしょう。同じ歳で同じ伯爵家の娘でありながら、カーレン様にはケイト様のような重責は無く、重苦しい伝統にも縛られず自由に過ごされていらっしゃったそうですもの。
そうですね。次はカーレン様のことをお話しましょうか。
ですが、その前にお茶が冷めてしまいましたので入れ直しますわね。
当家オリジナルのブレンドティーですの。お口に合うと良いのだけれど。
ところで、少し気になっていたのだけれど……貴方、どこかでお会いしたことはないかしら?




