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終章「クローデット伯爵家長女失踪事件に関する調査報告」

 話し合いの後、アーサーとキャロラインは連れ立って伯爵家の庭を散策していた。

 カーレンが愛したという庭は今も季節に応じた色とりどりの花を咲かせている。


「お婆様はお爺様や曾お爺様のことをどう思っていらっしゃったのでしょう?」


 生前、祖母も祖父と一緒にこの庭をよく散歩していた。

 二人の仲睦まじい姿に幼いながら自分もあんな風になれたらと憧れたものだ。


「私は二人の仲睦まじい姿ばかり覚えております。でも、私に見せていなかった部分もあったのかもしれません……」

「そうだな。だけど、見せていた姿も全てが演技という訳では無いだろう。少なくとも、あの(・・)カーレン伯爵なら本当に嫌いな相手と長年連れ添ったりはしないさ」


 妙に自信満々に断言するアーサーに、ようやくキャロラインも笑顔を見せた。

 そう言えばカーレンは第四王子相手にも一切媚びたり遠慮したりせず、イタズラでもしようものなら孫娘相手同様厳しく叱り、反対に良いことをすれば手放しで褒めてくれる快活な人だった。

 いつでもはっきり自分の意思をもっていた彼女ならば、確かに夫に不満があればはっきり言葉と態度で示しただろう。


「そうですね。お婆様は最期まで笑顔でいらっしゃいました……過去のことはわかりませんが、きっとご自分が選ばれた人生を後悔されてはいなかったと私も思います」

「きっとそうだ! 俺もキャロとそんな風に人生を歩んでいけたら良いなと思うよ……」


 アーサーの何気ないようにみえて僅かに照れを含むその言葉に、キャロラインは彼からプロポーズを受けていたことを思い出して頬を赤らめた。

 祖母のことがあり、一度は断ってしまった。だが、この幼馴染は事態が解決した今、きっともう一度同じ言葉で求婚してくれるだろう。

 今ならあの時と違う答えが返せるだろうか。

 そこまで考えて、不意にちょっとした質問が頭をよぎった。


「アーサー様。もし私が髪を染めたいといったらどうされますか……?」


 遠慮がちに問いかけるキャロラインに一瞬目を見開いた後、アーサーは軽く考えこんだ。


「そうだな……キャロが染めるならば俺も染めようかな。折角ならお揃いにしたいし」


 大真面目に答えた彼に、キャロラインは今度こそ最近ずっと見せられていなかった満面の笑みを浮かべたのだった。




 『クローデット伯爵家長女失踪事件に関する調査報告』

 とある国の王子が個人的に作成したその調査報告書は特に誰にも見せられることなく、暫く保管された後に破棄された。

 ちょうど、その国で名が知れた伯爵家の次期女当主の元に、長年の恋人である第四王子が婿入りした頃の出来事である。

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