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〈クローデット伯爵家客間にて②〉

 そこまで話してキャロラインは一度口を閉ざした。

 その先の言葉は聞かなくても想像がつく。


 最も確実なのは、相手を殺してしまうことだ。


 死人に口なし。相手をこの世から消してしまえば、カーレンに成り代わっても文句を言う人間はいなくなる。

 突拍子もない話だと笑い飛ばしたかったが、考えれば考える程、祖母が成り代わっていたという心当たりが浮かんできてしまった。

 日記の筆跡。孤児であるはずのカーレンがわずか数年で貴族当主として活躍できるほどのマナーと教養を有していたこと。異母妹である二人の顔立ちが非常に似ていたこと。

 そして何より、曾祖父や祖父が大切にしていたはずのケイトを差し置いてカーレンを受け入れたこと。


 “ケイト”と“カーレン”の確執を考えれば二人が同意の上で入れ替わったり、カーレンが自主的に出ていってくれたとは思えなかった。

 そうなるとケイトがカーレンを黙らせる方法は一つしかなかっただろう……

 大好きな祖母を疑いたくはない。しかし、万が一この妄想が当たっていたならば、許されない罪を犯したかもしれない身内を持つ自分が王族であるアーサーと結婚することなどできなかった。


「キャロライン、どうして……」


 「どうして相談してくれんかったんだ」と言いかけてベルナルドもまた口をつぐんだ。

 言えなかった理由などすぐに思い当たった。

 もし本当にケイトが異母妹を殺して成り代わっていた場合、父親である前伯爵や婚約者のベルナルドが気づかないはずがない。

 入れ替わりを成立させるには二人の協力が必要となるのだ。

 大好きな祖父に「貴方も共犯なのか?」などと聞けるはずがない。

 気まずい雰囲気の祖父と孫娘に対して口を開いたのは第三者であるアーサーだった。


「心配しなくても大丈夫だよキャロ。カーレン様は罪など犯してはいない」


 自信たっぷりにそう断言するアーサーにキャロラインは不思議そうに顔を上げた。


「何故そう言い切れるのですかアーサー様?」


 その言葉に応える前に、アーサーはベルナルドに話しても良いかと確認の視線を送る。

 これからする話はベルナルドや前伯爵にとっては不名誉なものとなるだろう。


「……殿下はすでに真実を察しておられるのですね。折角お調べになったのです。私が話すより、殿下自身がお話になられる方がよろしいかと」


 ベルナルドの承諾を得たアーサーは改めてキャロラインに向き直り、これまでの調査で出した結論を告げた。


「大丈夫だよキャロ、ケイト様は異母妹を殺してなどいない」

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