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昭和54年。夏の終わり。
パトカーやバイク音、そういった騒音がなく、ごくごく平和な村、禍狩村。そんな村のはずが彼女、藤村優子の家では怒号が飛ぶ。
「なんだぁ、このうっすい飯は。まともに飯も作れんのかっ?!」
と酒瓶を片手にガタイだけは良い、髭を生やした大男、優子の父が茶碗を投げる。
ドンッ! という音を立てて、扉に当たる。
いわゆる先の時代で言う、亭主関白的なものなのだろう。男は仕事、女は家事。そんな思考なのだろう。もう時代は変わりつつあるというのに。
「やめて、お父さん!」
「なんだ、お前も反抗する気か!」
と今度は酒瓶をぶん投げる。それを反射的に避ける。
「秀次さん、やめて下さい! 今度こそはちゃんと作るので」
「母さんは何も悪いことしてない! 人の作ったものにケチをつけるクソ親父が悪いんだから」
と反論をぶつける。その度に熱を帯びていく。それに対して、
「私が『悪かった』ですから。やめてください!」
優子は母の反抗する気概すら見せないその姿にも失望に近い何かを感じていた。
言ってしまえば、亭主関白というより、DVなのかもしれない。
「母さんも謝ってばかりじゃ、いつまで経っても情けない醜態を晒すだけだよ!」
我ながら親に対して、酷い言い様だな、なんて俯瞰的な視点で思う。
「優子、もう良いの」
と諦めた口調で言った途端、衝動的に家を飛び出した。
早足で坂を駆け下りていく。
服はセーラー服だ。時刻は家中から、料理の匂いが漂い始める18時頃である。外は生温い。それは体に絡みつくように気持ち悪い。
この村には展望台のようなものがある。そこに優子はいた。そこで、大口を開く。
「このくそボケナスがァァー!!!!」
という知能が低い悪口をひけらかしたところで、周りが霧に包まれていることに気がつく。
それは濃く、より濃くなっていく。
「な、なに?」
頭が痛くなり、キーン、と声が響く。
ーーーあなたは、選ばれましたーーー
目を覚ました先には、赤いカーペット、シャンデリア、どデカい屋敷のような場所。
そこには九人の人間がいた。
一人目は金髪をストレートで耳にピアスはめた、ブレザー制服を着た女性。
二人目は眼鏡をはめて、髪を目の辺りまで伸ばした、そばかすが多い高身長な制服を着た女性。
三人目はゴシックっぽい格好をし、背中にギターを背負ったバンドマンらしい女性。
四人目は金髪で学ランを着崩しいかにもヤンキーな感じの男性。
五人目は茶色い軍服にライフル銃を背負った目が少しバキバキな青年。
六人目はレオタードの上から、スカートを付けた感じで、白髪の若い女性だ。
七人目はボディビルダーなのか、パンツ一丁でポージングをしている中年男性。
八人目はいかにもお嬢様というのが似合うような清楚に身を包んだ女性。
九人目は平凡中の平凡って感じの学ランに身を包んだ不真面目でも真面目でもなんでもないような感じのモブAっていう感じの男子学生だ。
そんな九人を見下ろすように、階段の上から、口が裂けてしまいそうなくらい笑ってる仮面を付けた、小柄なというより、ぬいぐるみサイズのモノがいた。
ついに一同が会したと言わんばかりに、アレは宣言する。
ーーーあなたは選ばれましたーーー




