305号室の女
怖い話が好きな方におすすめの短編ホラーです。
ほんの数分で読めます。
午前二時。ナースステーションの時計の針が、
2秒も止まっているように見えた。
廊下を歩くと、自分の足音がコツン…コツン…と
音を立てて響く。
巡回表を手に暗い廊下を進むと
「し…て……」
小さな声が、305号室から聞こえた。
一週間前に亡くなった患者の部屋だ。
「誰かいるんですか?」
扉の前で立ち止まり、声をかけてみる。
もしかしたら、深夜徘徊をする高齢者の
患者さんかもしれない。
懐中電灯を手に中に入ると、女が立っていた。
白い病衣に覆われ、顔は髪に隠れている。
恐怖で動けない私に、女が――
『……かえして』
後ずさると廊下の照明がチカチカと瞬き、
目を開けた瞬間、女はすぐ目の前にいた。
皮膚はただれ、頬は裂け、黒い液体が滴る。
笑ってるような、かすれた声が聞こえてきた。
『かえして……わたしの、顔。』
翌朝、同僚は巡回表を見つけた。305号室の欄に、
赤黒く滲んだ文字で、“私”の名前が書かれていた。
『誰かのイタズラなんじゃない?』
同僚は軽く笑う。
そして数日後。私は仕事の帰りに
交通事故に合い305号室に入院することになった。
車椅子で案内される廊下の奥で、長い黒髪の女が、
天井から垂れ下がるように私を見つめてる。
――低く、湿った声が耳元で囁く。
「……やっと、きたんだ……」
もう、逃げられない――。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
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