婚約破棄された悪役令嬢はすぐに囲まれました
処女作です
私の名前はミレイユ・アルデンヌ16歳。銀髪に赤い目が特徴だ。今日は王様が開催した年に一度のパーティに子爵の立場として来ていた。そして今とてつもない場面に直面しているのだ。
「ミレイユ・アルデンヌ。貴様との婚約を破棄とする。そしてカオリと婚約する。」
そう、大勢のまえで婚約破棄を頭が少し悪い金髪に青い目をしたこの国の王子ヴィンセント・ローエン様が隣にいる異世界から来た黒髪に茶色い目をしたカオリさんの腰に手を当てた状態で私に言い放った。
そして思い出してしまったのだ、ここが私が中途半端に遊んでいた乙女ゲーム「貴女の花のために」の世界であることを。「貴女の花のために」通称「あのはな」は逆ハーレムができてしまうR18のゲームだ。スチルのイラストがとても豪華のため一部の層にはとても人気のあるゲームでもある。主人公の名前は固定のカオリである。今どき変えれない珍しいゲームでもある。
そう、私は異世界転生をしてしまったのである。しかもミレイユ・アルデンヌは悪役令嬢ポジションなのだ。なんでこんな時に思い出すのかな…。まぁ仕方ない今はこの状況をどうにかしないと。
「ヴィンセント様、なぜそのような事を……しかもこのような場で」
「ミユ、私は真実の愛を見つけたのだ。貴様は何もしなかったがカオリは私のとこを大事にしてくれた。だから貴様とは婚約破棄とする。」
「ミレイユさん…ごめんなさい。このような形となってしまい。」
「な、何を言っているカオリそのような事…ゴニョニョ…………」
異世界からきたカオリさん。ゲームの主人公である。異世界からきたため色々と権利が渡されてるようだ。詳しくは知らない。ゲームのファンブックには書いてあったかもしれないが私は買ってない。
ヴィンセント様とカオリさんがイチャイチャしている。非常に鬱陶しい。面倒なことになった私は面倒事が嫌いだ。もうどうにでもなれ状態だ。
「……そうですか。わかりましたわ。お受けいたしますわ。」
営業スマイルで言ってやりましたわ。
「本当か!ミユ」
「ヴィンセント様、婚約破棄したのですよ。馴れ馴れしく愛称で呼ばないでください。」
「す、すまん」
何とかなったか。今後どうしよう。1度婚約破棄されたとなると名誉に傷あり状態になり縁談の申し込みも減るだろ。このまま修道院に入ろうかしらそう思っていたら。
「面白いことになってんじゃん。ミレイユさん可哀想……だからもらうね」
「はい?」
「誰だ貴様」
「申し遅れました。わたくし、ダリウス・ノクテンと申します。ミレイユさん私と婚約してください。今破棄されたばかりだから大丈夫だよね。てか今しかないと思ったんだ。」
「……はい」
にこにこした笑顔で言われてしまい、もうどうにでもなれ状態で了承してしまった。
ダリウス・ノクテン様、黒髪の短髪襟足が長く束ねており健康な褐色肌、紫色の瞳をもつ21歳。隣国の外交官を務めている方ですわ。
「ありがとう。とても嬉しいよとりあえ明日家に行くね」
ダリウス様はとてもニコニコしながら明日家に来る宣言をし帰っていった。ダリウス様が帰ると同時ぐらいにパーティもお開きとなった。ようやく帰れる。私は疲れた…今日は早く寝よ。
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次の日。ダリウス様は本当に家に来た。
両親はダリウス様との婚約を大歓迎しており、特に母は目を輝かせていた。
「まぁまぁ、ミレイユ!まさかこんな立派な方と!昨日の出来事も無駄ではなかったのねぇ!」
昨日の出来事=公開処刑のような婚約破棄。母上、それを“無駄ではなかった”で片づけるのやめていただけませんか。
「昨日は驚かせてしまいましたね」
ダリウス様は昨日と同じように穏やかな笑みを浮かべていた。外交官らしい、相手を安心させる微笑み。だが、よく見るとあの目の奥、何かが笑っていない。
「ミレイユさんを放っておくのはもったいないと思ってね」
「……そう、ですの」
この人、思いつきで婚約したようでいて、実は全部計算してるタイプでは? 外交官ってつまり、笑顔で国を売る職業では?(偏見)
紅茶を前に、母が浮かれながら話を進める。
「正式な婚約はいつにいたしましょう?」
「明日でも構いませんよ」
「えっ」
「早い方がいいでしょう。逃げられたくないので」
にっこり。
はい? 今さらっと怖いこと言いませんでした?
「……冗談ですよ」
「は、はぁ……」
いや、冗談じゃなかった。絶対。昨日の“もらうね”発言からすでに思ってたけど、この人、ちょっとおかしい。笑顔のまま距離を詰めてくる。紅茶のカップを持つ手が自然に私の指先に触れ――
「冷たいね。ちゃんと食べてる?」
「えっ……」
「顔色も少し悪い。無理して笑ってるでしょう」
図星を突かれた。なんで初対面でそんなこと分かるの。凄すぎる。
「無理して強がらなくていい。君はもう、“あの王子”のことを気にしなくていいんだ」
その優しい声が、逆に妙に胸をざわつかせた。……なんだろう。私、今、すごく危ない橋を渡っている気がする。
「ありがとう、ございます……」
とりあえず無難に頭を下げてみる。彼は少し目を細めて、満足そうに頷いた。
「じゃあ、明日、正式に婚約書を交わそう。ああ、ついでに君の好きな花を教えてほしい」
「花……ですか?」
「うん。贈りたいんだ、“君の花”を」
「ありがとうございます。そうですね…ききょう…とかですかね?」
「そう。ききょうね。とてもあなたにそっくりな素敵な花だ。」
そう言って、彼は嬉しそうにそっと私の髪を撫でた。まるで恋人のように。
え、距離近くない?おかしい。昨日婚約したばかりなのに、もう“恋人ムーブ”が自然に出ている。
「…だ…ダリウス様」
「ん?」
「その……わたくし、昨日のことで少し疲れておりまして」
「うん、分かってるよ。君のこと、全部分かってる」
にこり。
“全部分かってる”って、何を。どこまで。どうして、私の指が震えていることまで気づくの。彼は立ち上がり、そっと私の肩に触れた。柔らかい声で、しかし逃げ道を塞ぐように。
「もう誰にも傷つけさせない。昨日みたいな思い、二度としなくていい。だから――」
指先が顎をなぞり、赤い瞳が彼を見上げる。
「これからは、俺だけを見ていればいい」
……ダメだ、この人。沼だ。
「ふふ、少し怖がらせたかな?では、また明日伺うよ。婚約書を持ってね」
軽く頭を下げ、去っていくダリウス様。扉が閉まった瞬間、私は大きく息を吐いた。
「なにこれ……どうなってるの……」
昨日の婚約破棄で地獄を見たと思っていたのに、今日も別の地獄が始まっている気がする。運命が変わったんじゃなくて、別ルートに進んだだけなんじゃ……?そう、私はこのゲームを中途半端に終わらした。なんならクリアしていない。だからエンディングを知らない。大丈夫かな……。
夜になり、部屋のランプを灯すと、昨日の出来事が頭を離れない。ダリウス様の笑顔も、優しい声も、すべてが何か計算されたものに思えてくる。
――“全部分かってる”って、どういう意味?
そのとき、窓の外で微かな影が動いた。
――まさか?
違う、外交官ならそんな時間に家に来るはずがない。いや、来るかもしれない。分からない。
不安に押し潰されそうになった瞬間、窓がノックされた。
「ミレイユさん、こんばんは」
振り返ると、そこには微笑みを浮かべたダリウス様がいた。
――え?!
「もう…夜遅くなのに、どうして…?」
「君が一人でいるのが心配だったから来ちゃった」
にこり。
笑顔のまま距離を詰め、私の目をじっと覗き込む、優しさの皮をかぶった獣のような視線。目が離せない。
「……ダリウス様、わたくし、眠いですし、もう…」
「うん、分かってる。でも、ちょっとだけ……君の顔を見たくて」
そう言って、手を伸ばし、私の頬に触れ顎に手がくる。あまりに自然すぎて、拒否できない。ドキドキが止まらない。
「ミレイユさん、君は俺のものだから。誰にも渡さない。」
そう言ってとても甘いキスをされた。はじめてのキスで動揺したがとても気持ちよく拒めなかった。明日、婚約書を交わしたら、もっと深く絡まれるだろう。どうなっちゃうんだ私。
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次の日約束通りききょうの花束と婚約書を持って現れたダリウス様。まるで昨日の夜のことはなかったような顔をしていた。やっぱ昨日のは夢だったのだろうかそんなことを考えながら、今後の話などあれやこれや決め私は隣国に引っ越すこととなった。
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引っ越しの日。ダリウス様と馬車で2人揺られながら隣国へと向かっていた。
「ダリウス様!海です!綺麗ですね…」
「そうだね。でもミィちゃんの方が綺麗だよ。」
「あ…ありがとうございます。」
「そろそろ、ダリと呼んでくれないかな?ダリウスって長いし。俺はミィちゃんって呼んでるのにダリウスって呼ばれると距離感じちゃうよね」
「えっ、そ、そんな……恥ずかしいです…ダリウス様」
「ダリ」
「えっ」
「ダリ」
「だ…ダリ様」
「うん、いい子だね。これからダリで呼んでね。」
こんなようなことを話しながら進んでいた。心臓もつかな?
馬車が揺れるたびに、隣で笑うダリの声が耳に心地よく響く。
「ミィちゃん、慣れない馬車で疲れたでしょ?僕の膝に乗っていいよ」
「えっ、そんな申し訳ないです。大丈夫です。」
そう答えると、ダリ様はほんの少し眉をひそめて、口元に笑みを浮かべた。
「大丈夫?じゃないでしょ。無理はさせたくないな、俺は」
心臓の鼓動が早くなる。なんて人だ……。ダリ様に抗うことが出来ず膝の上に乗ることになってしまった。
窓の外を流れる海の景色が、静かに私を落ち着かせる。
「ミィちゃん、今日からずっと一緒だよ。俺が守るから、怖いことは何もない」
そう言って手を握られる。握る力はとても優しい。
次の瞬間、馬車の揺れに合わせて、彼の手が私の指先に触れ、自然に指を絡めてきた。
「……ダリ様…」
「うん、俺だけのミィちゃんだ」
その声はとても甘く到着までの時間、心臓が早くなるのを必死で抑えた。
隣国の城が見え始める。白亜の壁に青い屋根、海に面した立派な建物――。
「着いたよ、ミィちゃん」
ダリ様は馬車を止め、にこやかに言った。
「……ええ、素敵なところですね」
でも、胸の奥はざわついている。
こんなに完璧に守られること、こんなに近くにいること、心臓がもたない。
「さあ、これからは俺たちの城だ。君のすべてをここで守るから」
にこり。
……甘い声に込められた独占の色。私は思わず、顔を背けた。
――どうやら、隣国生活は想像以上に刺激的な日々になりそうだ。
でも、少しだけ心のどこかで、楽しみな自分もいた。
これが、悪役令嬢の新しい“日常”の始まりだった。
ありがとうございました




