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ー 6 ー 緊急会議

謎の襲撃があった翌日、紫礼は約束通り学校ではなく碧の家にやって来た。そこに集まっていたのは全部で四人。碧と紫礼と由依、それから阿笈(あおい)(まな)。本当なら愛の妹の(かな)も来る予定だったが、流石に叶に学校を休ませる訳にはいかないということで愛だけになった。愛は今年で二十五歳、叶は現在中学二年生だ。愛は“水無月碧”にとって非常に重要な存在だ。碧にやや、と言うかかなり傾心している節があるが、その一点を除けば有能である。全員揃ったことで話が始まる。


先日紫礼と別れた後、帰宅した碧は愛に連絡して急遽集合して欲しい旨を伝えた。『母さん』ではなく『由依さん』と呼び掛けたことで、由依も“碧”にとってイレギュラーなことが起こったのだと分かる。由依にもざっくりと説明したが、詳しい話は皆が集まってからということになった。


「えーっと、じゃあまずは昨日起こったことから説明します。────」


友だち四人で遊びに行ったところ突然妙な気配を感じたこと。他の人には見えない黒い靄が多数出現したこと。プラスチック片を破壊すると消滅したこと。


途中、紫礼が『怖かった』ということを過度に補足しながらも丁寧に説明していく。


「……まぁ、こんな感じのことがあったということで」


説明を終えて一息吐いた碧に、黙って聞いていた愛が身を乗り出して尋ねる。


「お怪我は大丈夫なんですか? 碧さまの姿が見られていたりは? 向こうに情報が漏れていたりは?」


普段は有能なので“水無月碧”と“橘水咲”を使い分けてほしいという碧の無理難題にも的確に応えているのだが、『碧さま』などという大層な呼び方をしないでほしいといくら言っても聞き入れてくれなかった愛は碧のことになると途端に過剰に反応する。休みの日くらいカジュアルな服装にすれば良いのに、愛は常にフォーマルな装いである。曰く、碧に会うときにラフな格好をする訳にはいかないとのこと。


「落ち着いて、私は大丈夫だよ。ちゃんと神色(しんしょく)で全身覆ってたし見られたりはしてないよ。けど……」


ちらりと紫礼を見ると、彼女も軽く頷いた。碧の言葉を紫礼が継ぐ。


「逃がしてしまった二十体、あれは多分操ってた人の元に戻ったんじゃないかと思います」


「じゃあ碧や紫礼ちゃんがやったことは全部筒抜けってこと?」


そう言う由依の表情は心配そうに曇っている。しかし、あの状況で何もしないという選択肢はなかった。加えて言うならば相手サイドには優秀な密偵がいるようで、こちらの行動は大体読まれている。そうでなければ碧たちが出掛けた先に偶然現れるなどということが起こる筈がない。


「まぁ、今更だけどね」


言いながら碧はプラスチックの破片を取り出した。昨日いくつか回収しておいたものだ。


「で、これ。灯和(とうわ)(にい)に送って分析してもらったんだけど、これポリアセチレンらしいの」


碧の言葉に愛が「導電性プラスチックですか?」と確認するように尋ねる。


「そ。紫礼は分かると思うけど、これ……」


「すいちゃんの色力(しきりょく)で上書きされてるけど、これあの男のだよね」


「うん、私もそう思う」


“あの男”の姿が脳裏に浮かび、脱色された部分のサイドの髪の毛の生え際がずきりと幻痛(いた)む。犯人が分かったところで警戒するくらいしか出来ることはないが、するに越したことはない。話しながら、碧はブルーライトカットの眼鏡を掛けパソコンを開くととあるグループチャットにメッセージを送る。次いでスマホで画像を探してパソコンでMoonall(ムーナル)というSNSのアプリを開くと、画面を回して三人に見せた。


「そのプラスチックを見て思い出したんだけど、これ。似てない?」


碧が示した画像には拡大されて画質が悪いが、そこには(いびつ)な球体の黒いプラスチックが写っていた。色は違うものの、今テーブルの上に置いてあるものと似ている。それを見て、愛が口を開いた。


「確かに似ていますが、それだけで関連性があるというのは(いささ)か早計ではないでしょうか」


「まぁ、そうなんだけどね。でも、この黒いやつ色んな人の写真に写り込んでるんだよ。北海道から沖縄まで」


碧の言葉に「どういうこと?」と紫礼と由依。それに対して碧が答える。


「日本中、逃げ場はないって言いたいんじゃないかと思って」


「……だからわざわざ“普通の黒”を使っているということですか?」


「多分ね……」


辺りに重い空気が溜まっていく。が、それを断ち切るように紫礼が立ち上がる。


「でもでも、まだそうと決まった訳じゃないし、別に何も起こってないから! いや、昨日のはあったけど、頻度的には今までと同じくらいだしね」


明るく言う紫礼のお陰で和んだ空気の中、細かい話をしたりお菓子を食べたりとやや緊迫感のある女子会を開催していると、いつの間にか日が沈み掛けていた。そろそろ解散という雰囲気になり、紫礼と愛が帰る直前、愛が紫礼に言った。


「私は碧さまのことを四六時中お守りすることは出来ないから、学校でのことは頼むからね。如月(きさらぎ)紫礼さん」


紫礼がはっと息を呑む。


「……気付いてたんですね」


九谷紫礼を名乗る彼女の本名は如月紫礼。碧と同じく月の名を持つ者である。

お読み頂きありがとうございます。


ファンタジーっぽいワードがいくつか出てきました。

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