走馬灯
「議長、さっきの回答まだです。
文教委員会の取り消しは、わかりました。
取り消されて陳情書が出てくるのは、わかりましたが。
なぜ、同じ内容が来るんですか?
それに、一緒に来るっておかしくないですか?」
議長?おれがキョトンとしていると、周りからの視線が集中してくる。そうか、おれは議長になったらしい。
さて、この回答・・県の買収が関わっているのだが、彼女らに教えたなら、就業迄に庁内に知れ渡るのは火を見るよりも明らか。だと言って教えないわけにもいかないのだけど、隣の課長を見ると机の木目を数えるのに忙しい。では、上司の課長は、斜め上をみて『知らん、お前の裁量だろう』との顔。ええぇ、おれ、いつの間にそんなに偉くなったんですか?
一瞬、走馬灯があたまを通り過ぎる。
知らないと回答を拒否か、お茶を濁すように回答をごまかせば、何処まで知っているのか不明な彼女らの協力は無くなるだろう。なにかと理由をつけてこちらの都合は無視、仕事が止まってしまうのは目に見えてる。
なにも出来ないでいると、市議会に出て来た会長は、言い訳しかできない。満足な回答出来ない会長は かなりまずい立場に追いやれる。
学校設立そのものが危なくなる。こうした状況だと、えてして校内で事故が起こりやすくなる。
万が一、死亡事故でも起きたら、市議会は紛糾し責任のなすりつけが始まる。
議会解散や市長弾劾へとなりそうな、嫌な予感しかしない。
頭を振って、思考消去。すると、次の走馬灯がひらめく。
そうかと言って、全てを素直に話した場合。彼女らの恰好の餌になってしまう。
そもそも庁内の一部女子は、出世にこだわっているようだけど。ここにいる彼女らは、出世に興味を持っていない。どうんなにこびへつらっても、課長になれればいい方だろう。それなら、楽できる職場で定年退職出来ればいいと考えている。
男子が出世争いを繰り広げているのを、横目で眺めながら 面白いことがないか常にアンテナを張り巡らしているのが現状だ。
そこにおれが餌を与えたなら、「あの人が言ったのだけど、・・・」から始まる噂話は、尾ひれや誇張をふんだんにつけて庁内を駆け巡り、あっと言う間に噂好きな女子職員に広まるだろう。
これで収まれば良いのだろうが、彼女らがそれで満足する訳が無い。退庁後、それぞれの知人や家族に「ここだけの話だけですよ。・・・」と伝播していく。
一週間もすれば、噂好きなジャーナリストモドキに届き、ある事ない事書かれた怪文書が出回るだろう。ついでにゴシップ記者の恰好の餌食となって週刊誌を賑わせるのだろうか。
結果、噂の出処を探られ・・おれと課長が、査問委員会?に呼ばれるのだろう。
当然、課長は知らないと突っぱねだろう。おれは、ダンマリ?しかない。
課長は、別室に呼ばれ・・何事か言われると、おれを指さす。
結果、おれは、山奥の老人しか住んでいない寒村の公民館長に任命され。そのあと、定年まで放置される今後が見えてくる。
はてさて困った。このままだと、おれの人生は死んでしまう。走馬灯が現実味を帯びて来た。




