太陽と月!学園に行く!?
ソールがルアの家に利用者としてでなく、居候として過ごし始めてからまた月が三回ほど流れた。
ソールには両親がいないのだが、それを聞いたルアの父親が、
「そんな子供からお金はもらえない。なんなら、ここに住んでくれ」
といったのだ。
本人は「そんな、!そこまで尽くしてもらうのは申し訳なさすぎる」と言っていたのだが。
「子供は大人に頼るのが当たり前だ。もしお金が、とか気になるなら、俺の息子と一緒に少し手伝ってくれればいい」
これ以外にも、何回か申し訳ないと言って断ったりしていたのだが、結局
「私を頼ってくれ…!」
などと大の大人が泣きそうになりながら頼んできたら、子供の身であっても断ることが難しかったのだ。
なんかそーいう感じで、今は二人仲良くお部屋の掃除の最中である。
「ねぇねぇソール。君もこの街に来て三カ月だろ?そろそろ慣れた?」
「慣れたよ、さすがにな。というかそう言うのは普通1週間とか、そんぐらいで聞くもんじゃないのか?」
「あ~うん。それはそうなんだけど!」
急な大声を上げたかと思うと、今度は急にとても姿勢のいい姿でソールに向かい合った。
「急にどうした?なんかかしこまって」
「僕来年から学園に行こうと思ってるんだけど――というか推薦状が来たんだけど――君も一緒にどう?」
「学園???」
その立ち姿からは想像できないほど普通な言葉だった。
「だって一人とか寂しいじゃんか!」
「いや学園ってあるのか」
「あ、まずそこからか。この都市にはいくつかの街と、中心に都市区と呼ばれるもので作られてて、」
「さすがにそれは分かる。図書館で本を読み漁った時に地図と一緒に覚えた」
「君ってそういうところはすごいと思うよ。ほんと天才肌って感じだよね。
まぁそこは置いといて。とりあえずそれぞれの街に一つは学校があるのね、大体のほかの都市でもそんな感じの形をとっているらしいんだでど。まぁ戦いがない世界だからあんまり多くのことを教えるわけじゃないけど、この時代の人たちが読み書きに困らなかったりするのはこの学校のおかげ」
「なんというか寺子屋みたいな感じだな」
「日本の寺子屋に比べると見劣りはするけどね…。それで、学園ていうのは大都市に一個あるかないかの、その都市を象徴すると言ってもいいくらい目立つものなんだ!都市の中に暮らしている将来有望な若者を推薦状で集め、他に漏れた子たちでも救済措置として受験が用意されてて、それらの子たちに魔法とか武術とか、その他もろもろのことを教えるんだ」
「トップ層のための生育機関ってことか。それで、そこにルアは推薦で入学をしようとしていると?」
「そーいうこと。強制じゃないし、学ぶこともあんまないし、両親のためにどうしよう、とか考えてたんだけど。いいところに君が来た!一緒に学校生活をやり直そうよ!」
「はぁーーーーーあ」
結構なキラキラとした目でルアという少年に詰め寄られていた。彼の正直なところは、結構めんどくさいんじゃね?という疑問だけだったのだが、この際この時代の知識がないとどこかで詰まるかもしれないし、と一瞬の間逡巡した後、結論を出した。
「どう?!」
「え?」
またもや急な大声で少しびっくりした声を上げただけなのだが、その反応を拒否ととらえたのか、ルアは目に見えて落ち込んでしまったように見えた。
「そんなに俺と行きたいのか?」
「そりゃそうだよ。僕だって一人とかまだ怖いに決まってる。それに、やり直せるなら少しくらい穏やかに暮らしたい」
ソールは少しだけ悩むようなそぶりを見せた。だがあんな顔を見せられたら、答えはもともと一つしかなかった。
「いいぞ。一緒に行くか」
「やったっ」
うし!とガッツポーズを横目に受験しなきゃいけないと考えるソールの目の色は闘志に燃えていた。
もともとこういうものに手を抜けないタイプであり、自分の力を最大限伸ばし、最大限活かす方法は常日頃探している。
ルアは、ソールならそのままでも余裕だと思っていてそれは殆ど間違っていないが、彼の努力性と天才肌が組み合わさり、この三か月間完璧を追及していた。
推薦状の受理日と、受験日は同じで、試験に一日かかるためソールがいない日に親が聞いてきた。
「二人が仲良かったから聞いてなかったんだが、無理やり勉強させたとかないよな?」
「いやいやそんなことしないって。僕よりできる奴なんだよ?ソールって。それに、一緒に行きたいって言ったら、頑張ってくれたんだ!」
「そうかぁ。それならよかった。合格報告を待ってるか」
「そうだね!!」
「まぁ落ちるわけないよなぁ」
そう言って合格書をもつ赤髪の少年は帰ってきた。
彼が持つ書類には合格した旨と必要なもの類が書かれた紙と、得点や順位が書かれた紙と、もう一枚紙があった。
「その二枚の意味は分かるんだけど、もう一枚の紙って何が書かれているの?それ」
「あ、これ?両親に渡せって言われたけどいないから、じゃあ保護者に渡せって言われた。ということなので、おじさんよろしく!」
「あ、えぇ。うーんと、あぁ推薦と同じ扱いになるってのと、そうだな…。後は大人の話だ!」
「それよりもソールすごいじゃない!!こんなのこの学園が始まって初めてじゃない?!全試験フルスコア以上なんて!!」
「あ、母さん!僕にも見せて!」
母親が言う通り、その力をいかんなく発揮したソールはことごとく最高点をたたき出し、あまつさえ測定不可能とまで試験官に言わしめたのだ。それは推薦組と同じ扱いでなくては、同じ受験組がかわいそうな話である。
「少なくとも運がよかったところもあるから、そんなに言われても困る」
「でも!そのおかげで、同じ授業を受けられるんだよ。ほんとにすごい!」
ここまで純粋に褒められるのも久しぶりな気がするソールは少し恥ずかしながら、部屋へと戻っていった。
こうして、ソールとルアの学園生活が幕を開けることが決まった。
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