7.アンスの調査報告「令嬢」
「少々遅くなってしまいましたね……」
……突如始まった幹部会議により、クレイン殿追放が決定しまして。
その後も会議は盛り上がり、酒盛りまで始まる始末。
……とんでもないことが決まった気がするのですが、一旦忘れましょう。
目下、私の目標は……。
「ここが、あのリリデスの……」
――冒険者ギルド「導きの光 ~シルティ同胞団~」
人員2名のみ。一見すれば、大した実績もない零細ギルド。
……なのですが、かのリリデスが在籍している要注意団体。
主な活動は敵性生物の処理と対処。
その実体は、単なる害虫駆除を請け負っているとの事で。
何が冒険者ギルドか。
……リリデスという存在、そして先日の「デーモン」騒動にて無視できぬギルドとなった今。
彼女たちをどう扱うか、上層部は判断を迷っております。
「勇者」パーティーへ組み込むことも考えているようですが……。
本ギルドに対しての私の任務は二点。
「デーモン」に関するいくつかの確認、そしてリリデスら自身の調査。
覚悟を決め、いざ中へ入らんとしますと。
事務所から出て来たるは……。
「……おや? もしや使者の方でしょうか?」
「! ……その銀の御髪。もしや……」
「シルティと申します。はじめまして」
「……」
――シルティ・フォン・ギーゼル。
魔術に秀でし名門ギーゼル家が「令嬢」。
貴族でありながら冒険者へ身を投じる、常軌を逸した人物。
リリデスが危険であることは言うまでもありませんが。
ある意味、それ以上に注意を払うべき危険人物。
……恐らく、彼女こそ実質的なギルドマスターと見ていいでしょう。
ギルド名からもそれは伺えます。
「シルティ同胞団」……。己が名を恥ずかしげもなくつけるとは。
冒険者としては正しいのでしょうが、いささか厚顔無恥。野心を隠す気が見られません。
なにより、追放されしリリデスを一人で抱え込み、手懐けているという事実が問題です。
今やリリデスは彼女の忠実なるしもべと化しているとの噂まで。
……冒険者にまで転身し、何を成さんとしているのかまでは分かりませんが。
腹に一物あることは間違いありますまい。
同業者からの評判は悪くないのですが、評価が不安定な点は気になる所。
相当な凄腕という評もあれば、まあまあの腕前と評する者も。
振れ幅が見て取れます。
内容を紐解いてみますと、彼女の評価はほぼサポーターとしてのもの。
なんでも出来る器用さから、パーティーの足りない部分を的確に補う役割が主のよう。
彼女の活躍は仲間次第、といった事なのでしょう。事実、単身での功績はほとんど無く。
……故に強力なリリデスを囲った、とも言えます。
通り名。
銀の令嬢。
実力より、身分と容姿がもたらす印象の方が強いようですね。
「……やや、これは失礼、アンスと申します。いささか来るのが遅くなってしまいまして……。早速中でお話を……」
「申し訳ありません。実は他ギルドとの情報交換の予定がありまして。もう行かねばならず……」
「おや……。ではシルティ殿は同席されぬので?」
「ええ。あとのことはリリデスにまかせておりますので。では失礼します」
「……そうでしたか、残念。ではいずれまた……」
一礼して去っていく御令嬢。
……引き出したいことはあったのですが、まあいいでしょう。
(……ここからが本番ですね)
意を決し、「邪教徒」との対峙へ――。




