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「宗教勧誘しただけなのに追放されそうです……」  作者: 頭いたお
9章 それぞれのロール、ひとつの物語
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6.アンスの調査報告「回復術師」

「では最後にブレトン殿、よろしくお願いします」


「うむ、よろしく」




 ――ブレトン・ハイウォート。「回復術師」。

 クレイン殿の右腕……というより、実質的頭脳としてギルドを運営する人物。

 少々アレなクレイン殿に代わり、辣腕を振るっているとのこと。



 驚くべきはその回復術。即死さえしなければ一切を治すとの噂。

 頭部を切断された者まで治したなどという眉唾な話まで……。

 真偽はともかく。前身ギルドから今に至るまで、死者を一名も出していないのは事実。

 本ギルドの屋台骨と言えましょう。



 ただ能力への評価は高いのですが、どうも生真面目すぎるようで。

 特に笑い話やジョークの類が大嫌いらしく、それらに触れようものなら怒りに震え始めるとのこと。

 こうした頑迷さから、同業者との交友関係は広くない模様。



 彼も珍しい経歴の持ち主ですね。

 神学校を卒業後、そこから冒険者に。

 教会関係の職に就くか修道院へ入るのが筋ではありますが……。



 通り名。

 質実、聖なる手、震えし憤怒、等々。

 人柄が伺えます。




「ブレトン殿は様々な団体に赴き、回復術の講義も行っているとか」


「うむ。他ギルドから依頼されることが多い。たまに医療団体へも」


「本職以上の回復術を修めているとは。本当に素晴らしいものですね」



 戦いに身を置く者は、大なり小なり自己回復術は扱えるものですが……。

 他者を回復するとなると、途端に使用者は少なくなります。

 医療知識も必要になることから、冒険者として扱える人物はわずか。



「わたくしもある程度の回復術は扱えますが、彼の足元にも及びませんわ。本当に頼れる方でしてよ!」


「アエラ殿から見ても高い技量の持ち主なのですね」


「ええ。自分で回復するより彼に回復してもらった方が早いぐらいですもの。本当にすごいことですのよ!」


「……そういえば先日、真っ赤に焼けただれたお前を治療したな。あれは難儀だった……」


「痛みで発狂死するかと思いましたもの……。マジでヤバすぎましたわ……」


「俺ァてっきり生まれたてのゾンビが襲来してきたのかと……」


「卒倒しそうになりましたよ僕、あはは……」


「何があったんです……?」







「……ところでブレトン殿は神学校を卒業してらっしゃいますが。何故そこから冒険者に?」


「深い理由はない。強いて言えば、今までとは別の環境に身をおきたかった。それだけだ」


「……今でも信仰は?」


「とうに捨てた」


「……何故お捨てに?」


「そもそも何故信仰をしていたのか。そこから疑問が始まって、今に至る。以上だ」


「……そうですか」




 信仰の欠如。

 昨今では珍しくもありませんが……。

 しかし専門教育を受けた人物ですらこうとは。嘆かわしいことです……。



「……つってもブレトン。お前この間、墓参りに行ったっつってなかった?」


「? それがどうした」


「信仰捨ててるなら普通行かなくね?」


「む……そう言われればそうだが……。もはや生活習慣に根ざした行動というか……」


「わたくし墓参りなんぞ行ったことありませんわよ。めんどくせぇですし」


「俺も実家出てからは行ってねえなあ。たまに思いだしてやりゃいいかなって」


「むう。……そうか、まだ徹底できていなかったか……」


「まあ別にいいんだけどさ。そういやミナトは行くのか、墓参り?」


「え? いや、僕は……」


「!? ちょっとスティキュラ!!? ミナトさんは幼き頃ここより遥か遠き地で家族を失ってるんですからお墓参りなんて気軽にできるわけないじゃありませんの!!?」


「おいスティキュラ、何も吹っ切れていないミナトの悲しき過去を想起させるような話題を振って未だ治る見込みのない心の傷をこれ以上無闇に広げるんじゃない」


「し、しまった! 過去を乗り越える切っ掛けとしての復讐が不完全燃焼に終わったことから今後の人生をどうしていくか答えが見いだせていないお前に悪いこと聞いちまった、すまねえ!」


「あ、あは、はは、あは……あは……は……」


「ミナト殿このギルド辞められた方がよろしいのでは……?」









「……で、では最後に。些細なことでも構わないのですが、何か変わったことなどは……」


「特に無いが。……いや、そうだな、身の回りに関してだが。クレインが少し変わったか」


「……クレイン殿が? ……どのように?」


「どんどんアホになっていくようだ」


「…………」



 にんじんをねぶる怪人が脳裏に。

 ああ、思い出したくない……。



「あー、確かにマスター最近変だな。ほとんど仕事しなくなったしよ」


「元から仕事しないクソアホじゃありませんのあいつ」


「奇行が増えてちょっとこう、僕は大変というか……。ふ、ふふ……。ふひぉぅっ……」


「新ギルドになってからは特にだな」


「……」



 ……「勇者」抜擢のせいでしょうか。

 精一杯の反抗、とでも言うのでしょうか。

 …………。



「しかし仕事しねえのは本当に問題だよなァ」


「しょうがない。そろそろ私がギルドマスターになるか」


「お、いいじゃん! ブレトンで決まりだな!」


「適任ですわね! 早速そうしましょう!」


「ぐふっ……。ふ、ふふっ……い、いいですね……。ふふ、ふっ……」


「え」




 ……いきなりすごいこと決め始めたんですけども……。

 い、いいんですかこれ……?




「いっそクレイン追放してみるか」


「最高かよやろうぜ」


「めっちゃ面白いじゃないですのそれ」


「げひっ……ぐひひひっひへっ……!」






 ……一層とんでもないこと決め始めた……。




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