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「宗教勧誘しただけなのに追放されそうです……」  作者: 頭いたお
9章 それぞれのロール、ひとつの物語
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5.アンスの調査報告「弓術士」

「ではミナトさん、よろしくお願いします」


「よろしくお願いします」



 ――ミナト・モリヤ。「弓術士」。

 弓の腕もさることながら、魔物の発見や追跡を得意とする冒険者。

 戦闘力ではなく、支援能力にて本ギルドを支える人物。



 特に上級ギルドからの評価は目を見張る程。

 彼を引き抜くために接触してくる者も多いと聞きます。

 「功績」を考えると当たり前とも言えましょう。



 ……彼の功績。

 なんと今まで、複数のダンジョンを単身で発見しているのです。

 新ダンジョンの発見、そして探索の独占はそのギルドにとって大きな富をもたらすもの。

 冒険者から見れば、まさに喉から手が出る程に欲しい逸材でありましょう。

 事実、ミナト殿のおかげで前身ギルドは相当に潤ったようで。



 温厚篤実な人柄から周囲との関係も問題なし、ではあるのですが。

 生い立ちには少々懸念すべき点が。

 彼の故郷、幼き時に滅んでいるようで……。



 通り名。

 儚き狩人。静かなる追跡者。小さき賢者。

 なんと真っ当な。





「あなたも大変に評判がよろしいですね。引き抜きの声も多いようで」


「俺達はファミリーだぜミナト……! なァ……!」


「あはは。大丈夫ですよ、抜けませんから」


「わたくし達はファミリーですわよミナトさん……? なァ……?」


「アエラさんのそれは報復とか示唆してません……?」


「ファミリーはさておきまして……。ミナト殿の功績といえば、やはりダンジョンの発見ですね。一体どのように見つけだすのでしょうか?」


「いやあ、全て偶然の産物といいますか」


「偶然?」


「ええ。ダンジョンの生態系って特殊でして。その地帯には本来いない魔物ですとか、微妙に形質が変化している個体がいるんですよ。それらが外に漏れ出したのを見つけて、後を追っかけてみたら……という感じで」


「なるほど。魔物の違いから発見する、と……。深い知識がなければ難しいことでしょう」


「恐縮です」



 さらりと言ってのけましたが、それができれば誰も苦労はしませんでしょう。

 得難き人材。スカウトに躍起になるのも頷けます。



「そう、俺達はファミリー……。これぞ絆……」


「ええ、わたくし達はファミリー……。逃さん……」


「……人権侵害等ございましたらお力になれることも……」


「だ、大丈夫です……多分……」







「……ところでミナト殿は、何故冒険者に? きっかけ等は?」


「……え? いやあ、あはは……。まあその、色々と……」


「……」


「……」


 一転、言い淀み始めるミナト殿。

 ……彼の村は、とある盗賊団の略奪のため滅んでいます。

 それは凄惨だったようで、生き残りは僅か。

 盗賊団。通称「蜥蜴」。



 あのリリデスによって壊滅した、盗賊団。




「……やはり、過去の影響で冒険者になられたのでしょうか?」


「あ。ええと。まあ……」


「噂ではありますが。ミナト殿は復讐がため冒険者になられたとか……」


「……あの。それについてのお話はすみません、ちょっと……。あはは……」



 いけません、流石に不躾が過ぎたよう。

 反省せねば……。



「これは大変に失礼致しましたミナト殿。誠に申し訳あ」


「ちょっとアンスさん!? 家族や故郷を失いながらも懸命に生きてきたミナトさんの惨い過去を思い出させるだなんてあんまりですわ!」


「そうだぜ! 腕を磨きながらようやく掴んだ復讐の機会を一瞬にしてリリデスに全部もってかれちまったミナトの気持ちも考えろよな!」


「うむ。事があまりにあっけなく終わってしまったことから気持ちの整理が未だ全くついていないミナトにあれこれ聞くなど傷口をえぐるようなもの。自重せよ」


「あ、あは、あは、は、は…………」


「傷口えぐってるの皆さんの方では……?」









「え、ええと気を取り直しまして。……昨今の魔物増加に関してはどうお考えですか? 終末思想に関連付ける方も多いようなのですが」


「そ、そうですね…‥。確かにそういう傾向にありますけれど……。周期的なものだと思いますよ。二、三年もしたら逆に減るんじゃないですかね」


「ははあ。そうお考えになる根拠は」


「生態系ってそういうものですから。何かが増えれば何かが減って、何かが減れば何かが増えて……。その繰り返しですよ。ちょうど周期が重なって魔物全般が増えているように見えてるだけですね」


「ふむ。狩人としてのご意見ですね」


「例えば最近の傾向ですと、鳥獣系は逆に数を減らしているようでして――」



 ――事細かな推察、彼の見識の深さが知れます。

 ミナト殿がこのギルドにいること、クレイン殿にとっては最大の幸運と言えましょう。

 よく引き入れたものです、本当に。



「……こんなに魔物に詳しいミナトですら、マタンゴは……」


「す、すみません。本当に聞いたことがなくって……マタンゴ……」


「本当に有名な魔物なのか? 私も知らんぞ」


「うーん……」




 だからマタンゴとは一体……。


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