4.アンスの調査報告「魔術師」
「お次はアエラ殿。よろしくお願い致します」
「よろしくお願い致しますわ!」
――アエラ・ローゼリス。「魔術師」。
貧民出身ながら、奨学制度を用い王立学校へ入学を果たした才女。
周囲との身分差から一時かなり荒れたようですが、無事好成績で卒業しております。
成績表を拝見しましたが、実技に関しては首席。なんともはや。
口を揃えて誰もが言及するは、その禍々しき魔法の数々。
多数の属性を組み合わせた独自の攻撃、その苛烈さは大変な評判で。
時に周囲に甚大な被害をもたらし、仲間まで巻き込むとの噂……。
通り名。
七色。狂虹。狂える貴人、狂血の刀剣等々。
「狂」ばかりなのが気がかりに過ぎます……。
まあ、それも分かるといいますか。
少々、同業者からの評判がよろしくないといいますか……。
というか、問題点だらけといいますか……。
「ええと。まずですね……」
「はい! なんでもお聞きくださいまし!」
「あなた、先日酒場で傷害事件をおこしておりませんか……? 早急に重要参考人として出頭し、状況説明をお願いしたく……」
「…………」
「……こと酒場での評判が著しく悪いご様子で……。ぜひとも素行の方を改めていただかねば、その……」
「チッ……」
隠す気のない舌打ち。
傷付きますねこれは……。
「は、話を変えましょう。……アエラ殿は、何故冒険者になられたので?」
「それは勿論、優秀なる先達……シルティさんの後を追ってですわ!」
「……シルティ殿への憧れから冒険者に、ということでしょうか?」
「ええ、ええ! あの麗しく、力強きお姿……。在学時、誰もが憧れを抱いたものでしたわ! わたくしもう大ファンでして……!」
「……」
シルティ。
アエラ殿からの評価は相当に高い様子。
近しい者ほど、彼女を高く評価しているようですが……。
「王立学校を出て冒険者、というのは……シルティ殿も含め大変珍しい経歴ですね。公職への斡旋も多々あったはずですが……」
「ふふふ。安定よりロマンを求めた、ということですわね!」
「あなたのその無茶苦茶な進路のため、奨学制度の枠が激減したことに関しましてはどういうお気持ちで……」
「……チッ」
二度目。
傷付きます……。
なんというか、すっごい苦手です……。
早々に切り上げましょう……。
「で、では最後に。冒険を通して何か変わった事などは……。どんな些細なことでも構わないのですが……」
「そうですわねえ。冒険中という訳ではないんですけれど……数日前に死体が歩いているのを見ましたわ」
「……え!? 死体!? ど、どこでです……?」
「夜に大通りを普通に歩いてましたわ。ねえミナトさん?」
「いやあ、びっくりしましたねぇ……。すれ違った途端、死臭がするんですから……」
「わたくし、言われるまで気づきませんでしたわ。ずいぶん堂々としているものですから……」
「ちょ、ちょっとお二方……!? 死霊術は重罪ですよ!? すぐに通報していただかなくては……!」
「? それこそ御公務中かと思って放置したんですけれども……。噂になっておりますわよ? 国で死霊術師を抱えていらっしゃるとか」
「追跡したらお城へ向かっていったものですから、僕もてっきり……」
「……っ」
人の口に戸は立てられぬといいますが、噂にまで……。
「死霊術師」……。……いやしかし。人間の死体を往来で動かすなど……。
確実に「公務」ではない。一体何を……。
「……ま、まあいいでしょう。その件に関してはこちらでお引き受けします……。ええと、他に変わった事などは……」
「あとは特にありませんわねえ。平和ですわ」
「そうですか……」
「平和すぎて色々と持て余しまくってまして。スティキュラでも虐めましょうかしら」
「たすけてアンスさん」
「……」
……問題だらけの彼女ではありますが、腕に関しては疑う余地なし。
いや正直不適格な気もしますが……。手綱をひく人間さえいれば問題はない……のでしょうか?
判断に困りますが、ひとまず保留で……。
「たすけてアンスさん」
「…………」
ひとまず保留で……。




