3.アンスの調査報告「戦士」
「――そういう訳でして。陛下がクレイン殿と昵懇の間柄ということもあり……。我々は今後、公務を本ギルドへ依頼せんと考えております。その前段階として、皆様方から直接話をお伺いし、適性判断をと……」
冒険者ギルド「昼のランプ」。
構成員18名、事務2名。
分裂騒動から日も浅いですが、その名声はまた上がりつつあるようです。
最大の特徴は、ギルド幹部らの練度の高さ。
実績を聞くに、上層部が「勇者」パーティとして見込むのも納得の面子と言えましょう。
……彼らの人となりを見極める、これが本日の最も重要な任務となります。
「クレインから話は聞いている、よろしく頼む」
「これはこれはブレトン殿、お噂はかねがね。では早速ですが……」
「うむ。ではスティキュラ、話を聞かせてやれ」
「……え、俺から? 普通お前からじゃねぇの……?」
「我らがギルドの一番手はお前と決まっている」
「初耳過ぎる……。うわあ、こういうのって結構緊張すんだよなあ俺……! 面接みてえなもんだろ……?」
「ははは、ご安心ください。雑談程度のものと思っていただいて結構ですよ。……相対せねば分からぬお人柄とてあるでしょう? 本日はそれを知りたくて参っただけですので。形式的なものですよ」
「まあ、そういうことなら……」
――スティキュラ・ピラー。「戦士」
驚異的な頑健さとタフネスによる突貫を得意とする冒険者。
その戦いぶりはまさに狂戦士との評判。話に違わぬ凶暴な顔付きであります。
素手にて魔物を屠る様は他冒険者からも畏怖されているとのこと。
とはいえ、人柄は悪くないようで。
同業者との関係は甚だ良好。
見た目とは裏腹に、素行問題は特になし。
交流関係は広く、助っ人として他ギルドへ赴くことも多々あるとか。
懸念点は特になし。
強いていうなら冒険者以前の経歴でしょうか。
謎の空白期間がございます。
通り名。
暴腕、不死身、ゴリラマン、ゴリラ、オークキング、マスタートロール等々。
後半もうただの悪口では……?
「スティキュラ殿は皆様からの評判も大変によろしいですね! 誰とも良好な関係を築いていらっしゃるようで」
「え? そ、そう? いやあ、嬉しいなそいつぁ! はっはは!」
大きな声で、大きく笑う様。
周囲を照らすような、気持ちのいいものです。
裏表の無い心根を感じます。
「ところでスティキュラ殿は、冒険者以前は何を?」
「あー。学校出てからは、まあ、ブラブラ……っつーかなあ……」
「はあ。特に目的などはなく?」
「まあ、そんな感じ……」
「嘘おっしゃい! あなた、役者を目指していたと言っていたじゃありませんの!」
「うわっ! 言うなよアエラ、恥ずかしいだろ……!」
「ははあ、役者ですか。意外ですね」
「いや、まあ……。劇団員目指してたんだけどもさ。図体でかすぎて役が限られるっつって……どこも駄目でなァ……」
「されど今はその体躯を活かして『戦士』、ということですね。立派な役ができたではありませんか」
「お。洒落たこというねえアンスさん」
「その役もほぼリリデスさんに奪われてましたわよね。ウケますわ」
「あいつと比較すんなバカ」
「ははは。今現在、その役割を立派に果たしているなら素晴らしいことではありませんか」
「アンスさん好き~! アエラ嫌い~!」
「ボーイズラブですの……?」
「そういうんじゃなくて」
……妙な茶々が入りましたが、まあいいでしょう。
他に数点質問をしてみましたが、受け答えに問題は見られず。
安心してもよさそうですね。
「では最後に。最近、冒険中に何か変わった点などはございませんでしたか?」
「変わった点?」
「ええ。例えば、魔物の数が増えている、だとか……。妙な魔物を見た、だとか……。なんでもいいのですが」
「うーん、よくわかんねぇかなァ……。すんません、あんまり考えてねえもんで」
「いえいえ。では、これにて……」
「あ、ちょっと待ってくれ。……もしやアンスさんって魔物に詳しかったりする?」
「魔物? 大抵の情報は頭に入れているつもりですが」
「あ、そうなのか。いや、そのさ、逆に聞きたいことあってさ。魔物に関して……」
「なんでしょう?」
「マタンゴ……? っつー、魔物に関してなんだけども……」
「……マタンゴ? 初めて聞く名ですが、それは一体……」
「え!? あ、いや!! 知らないんならいいんだ……! いや、ほんと何でもねえから、ははは……!」
「? 詳しくお聞かせ願いたいのですが……」
「いや、いい、いい! あれ多分冗談だから……! はははは、はは……!」
「…………?」
マタンゴとは……?




