1.アンスの調査報告「勇者」①
クレイン殿が陛下と謁見して約一ヶ月。
全く報告がないため、調査を命じられた次第でありまして。
アポを取り、自宅へ伺いますと。
…………。
「こんにちは! 僕は兎のウサインだぴょん!」
クレイン殿は、兎になっておられました。
眼前に、大きな兎耳をつけた髭の成人男性。
困惑。目眩。吐き気。なにより二人きりという恐怖。
言葉を紡がんと努めますが、何も出てきません。
「ウサインはにんじんが大好きだぴょん! がッぁふがぁッふァ!」
生のにんじんを貪りはじめる怪人。
白目を剥きながら、唾液を飛び散らし、ぐちゃぐちゃ、ぐちゃぐちゃと。
――神は何故かような試練を私に?
思し召しなど、知る由もなく……。
「……クレイン殿、クレイン殿? ……クレイン殿、正気を……」
「クレインじゃないぴょん! ウサインだぴょん! ファック!」
どたんどたんと部屋中を跳ね回りはじめるウサイン殿。
そこらに飛び散るにんじんの破片と涎。あまりにも穢らわしく。
あまりにも。あまりにも……。
「……ウサイン殿。鏡をごらんください……。これはあまりに……あまりに……」
「何を言うぴょん! ウサインはこんなにかわいッ……ッヴぉええぇぇぇえぁッ!」
自身を認識し、嘔吐するウサイン殿。
神はなぜかような試練をわたくしに。
神はなぜかような試練をわたくしに。
ああ。ああ……。




