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8.ブレトン死す

 ――生還。





 耐えた。

 私は耐えてみせた。

 あの空間を、生き抜いた。

 長い長い、死闘であった。





「――しっかしなんだよブレトン。お前、聞きたいことあるっつった癖に。なんかあったのか?」


「……」






 エピクル教にカルラン教。

 リリデスとその家族。もはやどうでもいいことだ。

 どうでもいいだろあの状況は。何だってどうでもよくなるだろ。

 仮に世界の命運を賭けた大事な会議の最中でさえどうでもよくなるだろ。



 どうでもいいどころか、なんだか恥ずかしくなってきたな。

 いや凄い恥ずかしいな。なんなんだろうな。

 真面目に問題意識をもって事にあたろうとしていた事実が恥ずかしいな。

 自分だけ盛り上がってたみたいですごく嫌だ。ああ~~~。





「…………」





 ……いや待てブレトン。待つのだ私。

 冷静に考えて、恥ずべきはアイツ等ではないか。

 ジャーキー肩に乗っけたりマジックおっ始める奴らこそ、恥ずべきではないのか。

 己は真面目にやるべき事をやろうとした訳だ、それは素晴らしい事じゃないか?

 真面目は美徳だろう、そうだろう。今までそうしてきた。これからだってそうするべきだ。



 そうだスティキュラを見ろ。こいつはやるべき事をやった男だ。素晴らしい。見直した。

 筋肉な見た目に違わず、まっすぐ力強くこいつは歩いているのだ。まさに漢じゃないか。

 リリデス一家の関係修復のため、己の益にならんことをしているのだぞ。なんてナイスガイだ。



 そうだそうだ惑わされるな。自分を取り戻すのだブレトン。

 己は正しい。間違っているのはあの女ども。

 真面目さを茶化しまくるあいつらこそ、恥そのもの。

 自分の正義を、信じろ。




 ……そう。私には成すべき事があった。

 あの手紙で覚えた、恐怖と罪悪感を思い出せ。

 恐ろしき存在に餌を与えてしまった、あの後悔を思い出すのだ。

 私には、やらねばならん事が、ある。

 そう、使命が――。





「……。今日はすまなかったな、スティキュラ。どうかしていた……」


「……ブレトン?」


「少しばかり、いらん事で錯乱したようだ……。次回があれば、また同行しよう。いや同行させて欲しい。次こそ、彼女の信仰について……」


「な、なあ。ブレトン。おい……」


「……なんだその顔は。一体どうした」


「いや、どうしたってブレトン、お前……。それ何だ?」


「……? なにがだ?」


「いや、肩……」


「――――ッ」













 「肩」。

 走る戦慄。

 見る、己が両肩。















 ――右肩。

 ビーフジャーキー。















 ――左肩。

 ビーフジャーキー。

















 ――両肩ビーフジャーキー。


















 ――往来にて死を迎えながら、強く決意した。

 あのギルド、二度といかん。





8章 ブレトン死す ~終~


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