7章おまけ「幼き者より愛を込めて」
「おかーしゃん、みてぇ、みてぇ」
「あらリリデス、何を拾ってきたの?」
「キノコ、あげるう」
「あらまあ! ありがとうねリリデス、とってもうれしいわ!」
「えへへ」
「でもねリリデス? 中には毒キノコもあるから、気をつけなきゃ駄目よ?」
「どく?」
「今度採るときは、お母さんにも教えてね? 一緒にとりましょうね」
「はあい」
「さあ、おててあらいましょうね。みんなでおやつの時間にしましょう」
「やったー!」
「うふふ……」
* * *
「おかあさん、みてみて!」
「あらリリデス、今日は何を拾ってきたの?」
「キノコです! いっぱいとりました!」
「! リリデス、これは毒キノコですよ! めっ!」
「え、どく?」
「キノコを採る時は、お母さんと一緒にって言ったでしょう?」
「ご、ごめんなさい……」
「危ないから捨てちゃいましょうね」
「はあい……」
「今度はお母さんと一緒に採りにいきましょうね? キノコのこと、いっぱい教えてあげるから」
「……うん!」
* * * * *
「ただいま戻りました! お母さん、これみてください!」
「うふふ、今日は何を拾ってきたかしら? また立派な木の棒?」
「違います! 今日はモリーユ茸をたっくさん見つけました!」
「あらすごい! 晩御飯はキノコパイにしましょうね!」
「お手伝いします!」
「じゃあ、早速準備……。…………っ!? ちょ、ちょっとリリデス! これは何!?」
「はい?」
「こっちの赤いキノコの事よ! これは猛毒よ!?」
「知ってます!」
「え?」
「クッタラソクシスルダケですね! 食べたら最後、肝臓が一瞬にして破壊されて即死します!」
「そ、そのとおり! 危険なキノコですよ!?」
「はい、お母さんのために採ってきました、どうぞ!!」
「えっ……?」
「どうぞ!」
「…………? あ、ありがとう……?」
「~♪」
「………………っ?」
* * * * * * *
「――このピンク色のはゲロブチマケテシヌダケ! こっちの変な模様なのはゲンカクアホホドミルダケ! 発光してるのはジンルイミナゴロシダケ! いーっぱい採ってきました!!」
「そ、そう……。すごい量ね……」
「いやあ素晴らしい群生地を見つけましてね!? それはもう美しい光景で! お母さんも一緒に行きましょう!」
「わ、私は遠慮しておこうかしら……。ほら、子守もあるし……」
「それもそうですね。それよりどうぞお母さん! これ、みーんなあげちゃいます!!」
「あ、ありがとう…………」
「~♪」
「……リリデス、普通のキノコはないのかしら。食べられる奴……」
「あ、今日はないですね。これだけです」
(とうとう毒しか持ってこなくなった……っ!)
「アッ! 忘れてました、これも拾ったのであげます!」
「な、何かしら?」
「カツオノエボシ!」
「ここ森の中よ……!?」
「――子供に憎まれているかもしれない、と?」
「そうなんです猊下。いつも毒キノコばかり渡してくる子がおりまして……」
「毒と認識していないだけでは?」
「それが私以上に完璧に理解しているんです! もはやキノコ博士というレベルでして、学名すら諳んじる程なんです! なのに成長するに従い、何故か毒物ばかりを……っ。こんなこと初めてで、もうどうしていいのか……」
「そうですか……。その子からのメッセージなのかもしれませんね」
「私に死ねと……っ」
「いいえ、早とちりしてはいけませんよ。子供には子供なりの『伝え方』があるものです。もしやその子は毒キノコによって、あなたに愛情を示しているのかも」
「あり得るでしょうか……? 毒ですよ……?」
「愛によって育まれた子は、必ず愛をもって返してくれるものです。ミューゼ殿、貴方が誰よりも愛に生きていることを、私は知っておりますよ」
「もったいなきお言葉です……」
「その子に直接聞いてみるといいでしょう。きっと良い答えが返ってきますよ」
「ですが私、恐ろしくって……。もしも恨まれていたらと思うと……」
「安心なさい、大丈夫です。私が断言致しますとも。さあ勇気をだして」
「わ、わかりました。次のお茶会までには必ず……」
「お待ちしていますよ」
「――ねえリリデス、お母さんに教えてほしいことがあるの」
「あ、カラスの声帯模写ですか? あれは喉の震わせ方にコツが」
「いや、それはまた今度……。ほら、キノコに関してなんだけども……」
「キノコ?」
「どうして毒キノコばかり採ってくるのかしらって……。いつも私にくれるでしょう? 理由を教えてほしくって……」
「? 何かを拾うのに理由がほしいとでも?」
「『誰かを助けるのに理由が~』みたいな調子で言われても……」
「理由……。強いていうなら、かわいいので!!」
「かわいい……。…………かわいい?」
「はい! とってもかわいいし綺麗ですし、かっこいい! 色とか模様とか、佇まいとか! 大好きです!」
(わ、わからない……)
「……。あ、もしかして……迷惑、でした……?」
「え!?」
「キノコ、いらなかったですか? それでしたら、もう拾ってきませんけれど……」
「そ、そんなことないわよ!? むしろとってもうれしい! なんてったって、リリデスからの贈り物だものね!」
「本当!? よかった、もしかしたら私、悪い事をしてしまったのかと……」
「い、いえいえ! そんな事は……」
「お母さんには一番に、私の好きなものをあげたいって思ってるので……」
「!!」
* * * * *
「――という顛末でして。私もう、涙ぐんでしまって……! その場で強く強く抱きしめてしまいました……!」
「ね、言った通りでしたでしょう?」
「はい! これも猊下の御助言あってのこと! 本当にありがたく……!」
「それは違いますよ。貴方の撒いた愛が、そのまま貴方に返ってきただけの事。全ては貴方の心の美しさが故です」
「私には過ぎた御言葉です……!」
「今後も施設の運営に励み、たくさんの愛を子供たちに注いでくださいね。期待していますよ」
「勿論です! ……ああ、そうですそうです! 感謝の意をこめて、これを猊下にお贈りしようかと! 些細なものではありますが……!」
「おや、お菓子でしょうか? 早速一緒にいただきましょうか、ふふ」
「とびっきりの毒キノコでして!!」
「!!?」
~Fin~




