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「宗教勧誘しただけなのに追放されそうです……」  作者: 頭いたお
7章 スティキュラ、迷子になる
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4.スティキュラ、保護される②

「――先は誠にすまなかったスティキュラ殿。幼女誘拐犯だとばかり……」


「いや、いいよ……。誤解とけたんなら……」



 十分ぐらい全力で逃げ回った。

 最終的にすっ転んだ所を、とんでもない怪力で組み伏せられた。

 抵抗したら余計誤解されそうなんでじっとしてた。

 クソガキのネタバラシが遅かったら骨折られてたかも。



「あひゃひひひぃ……ッ! や、やばい、ツボった……ツボった……あひひ……ッ!」


「クソガキッ!! 笑ってんじゃねえ反省しろッ!」


「そうだぞエーリス。危うくスティキュラ殿を嬲り殺すところだったではないか」


「嬲ろうとはすんなよ潔く殺せよ」


「あひひひぃ……ッ! ご、ごめんなしぁ……っひひひぃ……!」


「まあクソガキは置いといて……。ええと、あんたは?」


「キミエラと申す。エーリスを探しにやってきた」


「もー駄目じゃんキミちゃん! 真名は気軽に教えちゃ駄目! 今のあたしはジェノサイドファントムだから!」


「もういいだろその名前は」


「キミエラと申す。ジェノサイドファントムを探しにやってきた」


「律儀だなお前も」



 このキミエラという奴。

 態度がやけにこう、武人っぽい。

 そしてめっちゃ姿勢が良い。なんかこっちも背を正しちまう。

 対してジェノサイドファントムの背はぐんにゃりしてる。姿勢は性格をよく表す。




「しかしアンタ、すげえ腕力だな……。ちと驚いたぜ」


「キミちゃんすっごいんだよ! あの『聖徒守護騎士団』だから! マジで超強ぇの! エリートエリート!」


「え? それめっちゃすごい奴じゃん。教会最強の騎士団だろ? 道理であの怪力……」


「うむ。悪しき者らと戦うため、日々研鑽を重ねている」


「キミちゃん、悪しき者が目の前にいるよ! ほらめっちゃ顔怖い! ぶっ殺さなきゃ!」


「おい、このガキ顔で差別してくるぞ。悪しき者だ殺そうぜ」


「……!? いや……、ぬぅ……?」


「めっちゃ混乱してんじゃんうける」



 クソ真面目らしい。からかいやすいんだろう。

 ジェノサイドファントムもといエーリスが懐いてんのも分かる。

 ウザさが数段増した。困る。



「とにかく帰ろう皆。ミューゼ殿が待っている。積もる話はそちらで交わそう」


「そうだねー。ママ心配してるだろうし、帰ろっかあ」


「ついてきてくれスティキュラ殿。きっとミューゼ殿――家主も快く泊めてくれるだろう」


「おう、悪いな……。いや、ほんっとに助かるぜ……。マジで疲れた……」


「まだ疲れるなスティキュラ! かったぐっるま! それかったぐっるま! へい!」


「へいへい……どうぞジェノサイドファントム様。肩をお使いくださいませ」


「くるしゅーない」


「では行こう。ミューゼ殿は大変に優しき御仁、大いにもてなしてくれるだろう」


「ママくっそ優しいからね! スティキュラみたいなスネに傷持ちにも超優しいから!」


「持ってねえわ。大道を胸張って歩いてるわ」



 胸を張りつつ、とりあえず今は夜の森を歩く。

 なんやかんやあったが、とりあえず野宿は回避された。

 キミエラの力強い足取りに励まされるよう、後をついていく。

 なんとかなるもんだ。本当に……。

































「――迷った……」


「だからなんでッ!!?!」




 遭難。

 三度目。

 なんでやねん。




「すまないスティキュラ殿……。実は土地鑑ほぼゼロで……」


「土地鑑ねえのに颯爽と先陣切るなよ!? なんだったんだよあの自信満々の態度!!?」


「う、うける……ひひひ……ッ! や、やばいツボった……あっひひぃ……!」


「つーかこのままじゃマジに野宿だぞ……! いいのかよアンタらは……」


「火起こしなら任せて! 炎魔法は大得意! 周囲を業火で焼き尽くすしか能がないの!」


「それさっき聞いた」


「君の炎魔法は禁止されているだろうエーリス。危険だから駄目だ」


「ああ~一切を焼き尽くしてぇ~……!」


「こいつの教育どうなってんだよ」


「私が代わりに火を起こそう。古代人は確か……木の板と棒をこすり合わせ……」


「魔法使えや」


「しゃらくせえよキミちゃん! 木まるごと燃やそう! ほら、このぶっとい枝使って! 幹に擦り付けて!!」


「承知した」


「お前らもしかして俺と同程度の知性しかないの……?」




 キミエラが木をへし折るのを眺めつつ、一人で寝る支度を初めた。

 エーリスにバレて腹にパンチを喰らった。このやろう。

 結局二人が飽きるまで火起こし作業は続いた。

 火はつかなかった。知ってた。




「――よし! そろそろ飽きたし、帰る方法探そっかキミちゃん」


「うむ。とってもたのしかった」


「よかったね……」


「オラ! スティキュラ考えろ! 帰る方法考えろスティキュラこのやろう!」


「もう諦めて寝ようぜ……。朝になりゃなんとかなるだろ……」


「明り点滅させるね……♥」


「どういう情緒で寝りゃいいの俺」



 パッカパッカ明滅を繰り返すエーリス。うぜえ。

 それを見ながらキミエラがひらめく。



「……そうだ。救難信号を送ろう」


「え? 救難信号?」


「うむ。《光源》魔法を空高く飛ばし、炸裂させるのだ。こちらに何かがあったとすぐに分かるだろう」


「おいおいおいおいなんだよ! 便利な魔法あるじゃん!」


「光で文字を描き、メッセージを送ることも可能だ。どうしようか」


「『迷子』とかでいいんじゃねえの?」


「面白味ねーから却下だね! ママ大爆笑必至のギャグ信号を送るっきゃないっしょ!」


「遭難中に面白味求めんな」


「こちらとしても爆笑ギャグで抱腹絶倒させたい所存」


「堅物みたいな喋り方すんなら内面も伴えよお前」



 かくして信号の文字を如何にするか、会議が始まる。

 不毛すぎる……。



「なんでもいいからとっとと決めてくれ……」


「どうするキミちゃん!」


「む。特に思い浮かばぬが……」


「そっかあ……うーん……じゃあねえ……んーとぉ……」


「……」


「……」


「……」


「『迷子』でいいよキミちゃん」


「『迷子』でいいかなスティキュラ殿」


「アイデアないんかい」





 ――ようやく上空に打ち上げられる、強烈な光。

 「迷子」の文字が、一帯を照らす。

 明るいのだいすき。





「おお、すげえ。結構派手なんだなァ」


「気づくかなあ、ママ」


「待ってみよう」


「……」


「……」


「……」


「……あ!」


「おお!?」


「む。きたか」




 上空へ、これまた強烈な明かり。

 家の方角を示す、光の文字の返答。












『↓↘→ + P』












「なんで波動拳コマンドなんだよ」


「キミちゃんあれどういう意味?」


「皆目わからん」


「伝わってねえし」




 家行くの嫌になってきたな。

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