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「宗教勧誘しただけなのに追放されそうです……」  作者: 頭いたお
7章 スティキュラ、迷子になる
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3.スティキュラ、保護される①

「――いや助かったぜ嬢ちゃん……。マジで困ってたんだよ……マジで……!」


「こ、怖がりすぎでしょおじさん……あひひひ……!」


「いや、まあ……うん」




 ツインテールの生意気そうなガキ。

 こいつに俺は、保護された。



 大の大人が子供に助けられるとはみっともねえが、背に腹はかえられない。

 いやぶっちゃけ子供とかどうでもいい。マジで嬉しい。

 ありがとう謎のガキ。ありがとうありがとう。



 そのうえまたひとつありがたいことに、こいつ魔法が使えるらしい。

 小さな手から灯りが迸り、周囲をこれでもかと照らしている。

 見えるって最高。俺明るいのだいすき。

 明るいのもきっと俺のことがだいすき。相思相愛。灯りと結婚してもいい。



「つーかおじさん、こんな所で何してたの? 犯罪者? 逃亡犯? 見るからにそんな顔してる~」


「いきなり失礼な奴だな……。いや、俺は冒険者でな。コボルトぶっ殺しに来たんだが、迷っちまって……」


「コボルト? ああ、ママが依頼出したのかな? なんかめっちゃ増えるもんねあいつら」


「つーか嬢ちゃんこそこんな時間に何してたんだよ」


「キノコ採ってたら夢中になっちって。今から帰るとこぉー」


「そうか……。わりぃ嬢ちゃん、家まで案内してくんねえかな? お礼はあとですっからよ……」


「え!? 宝石くれるの!? わーいありがとおじさん! こっちこっち!」


「それは困る……」




 宝石はないんで、すっっごい丸い石で手を打った。

 めっちゃ喜んでた。丸い石すごい。

 拾っといてよかった丸い石。




「……にしてもおじさん、クソでっかいね! あたしの知ってる中で一番でけぇ! キングトロールって呼んでいい?」


「呼ぶんじゃねえ。名前はスティキュラっつーんだ」


「スティキュラ? 変な名前! スティキュラだって、あははは!」


「人の名前を笑うんじゃねえよ! ……そういう嬢ちゃんはなんて名前だ?」


「あたし? あたしの名前はそう……ジェノサイドファントム……」


「お前の母ちゃんどういうセンスしてんだ……」


「我が真名は明かせぬ……」


「へいへい……。ジェノサイドファントムちゃんのお家はどこですかねえ」


「我が真家はあちらぞ……ゆくぞスティキュラよ……」


「はいはい仰せのとおりに」


「くくくくく……」



 ジェノサイドファントムに先導されながら夜道を歩く。

 歩幅が合わんので肩車してやった。ジェノサイドファントムはめちゃくちゃ喜んだ。

 子供には丸い石と肩車。これでなんとかなる。




「しかしよく道わかるなぁ。俺には見分けつかねえや」


「この森はあたしの庭みたいねもんだからね! 楽勝楽勝!」


「マジで頼りになるぜ~」


「あ、そっちじゃなくてこっちね。突き進めスティキュラァ~!」


「おうよ!」



 道が分かりゃ、足取りも軽い。

 頼りになるナビと共に、温かい家を目指す。

 助かったあ……。






























「――迷っちゃったぁ……」


「なんでッ!!??!?」




 遭難。

 二度目。

 なんでだよ。



「どこだろここ……? 全然わかんない……」


「庭っつったじゃん! 庭っつったじゃん!」


「死ぬまでに言っておきたいセリフの1位だったから……」


「『庭みたいなもんだから』が!?」


「もう悔いはないや……。ここであたしと共に果てようスティキュラ……」


「どうせそれも言っておきたいセリフだろ!!?」


「4位でぇーすあはははは! いやー遭難しちゃった超うける……! あひひひ……ッ!」


「おいおいおいおいマジかよぉ~……! 結局野宿かぁ……!?」


「あたし野宿ってしたことねえんだけど! めっちゃ面白そうじゃん!」


「テントも寝袋もねえんだぞ……。嫌だよ俺ァ……」


「のっじゅっく! のっじゅっく! へい!」


「はああぁ~……。まあ明るいだけいいとすっかあ……」


「灯り消すね……♥」


「つけて……」



 結局野宿になる。

 ジェノサイドファントムの灯りだけが俺の心の支えだ。

 奴はそいつをしきりに消そうとする。やめろ。



「ああくそ、腹減ったなあ……。火さえおこせりゃ、そのキノコとか焼いて食えるんだけどな」


「火!? 火起こしなら任せて! 炎魔法は超得意! 周囲を業火で焼き尽くすしか能がないの!」


「無能の方が勝ってる奴だなそれは」


「どこ燃やす!? いま燃やす!!? どんだけ燃やす!!!?」


「なんでそんなに興奮してんだよ怖えよ! 薪拾ってくっから待って……。……お?」


「ん?」



 遠くにもうひとつ。灯りが見えた。

 確かにこちらへ近づいてくる。

 人だ。人がいる。



「あー! あれキミちゃんかも! 来てくれたんだ~!」


「キミちゃん?」


「あたしのマブダチ! おおーいキミちゃぁあーん!! こっちぃ~!!」



 キミちゃんとかいう灯りの主は、まっすぐこちらへ近づいてくる。

 マブダチっつーから、またガキが来るのかと思いきや。



「……エーリス、ここにいたか。探したぞ」


「キミちゃあーん!」


「ありゃ?」


「……む?」




 現れたキミちゃんは、大人の女だった。

 高めの背丈に、ホワイトブロンドのショートヘア。

 長い睫毛と、やけに目力の強い眼光が暗闇に浮かぶ。

 ……麗人っつーんだろうか。こんな森の中じゃ、ずいぶんと場違いな印象というか。



 警戒したんだろう。立ち止まって、俺をじっと観察している。

 見たことない大男がいりゃあ、誰だってそうなるだろう。

 これを筋肉差別とは言わん。



 警戒したのはこっちもだ。

 腰には随分と立派な剣。真っ白な鞘には精密な装飾。

 冒険者が持つにしては、ちと派手な武器というか。

 大丈夫だとは思ったが、反射的に身構える。




「……貴殿は?」


「……ああ、いや。怪しいもんじゃねえよ。俺はスティ」







「ッッッキミちゃん助lけてええええええぇえええ誘拐されるうううううぅぅうゥゥッッ!!!」


「貴ッ様あぁあアアァァアアアアア!!?」


「!!?」






 叫ぶジェノサイドファントム。

 抜剣し襲いかかってくるキミちゃん。

 逃げる俺。




「何言ってんの!!? 何言ってんのお前ッ!!?!」


「あはははははははは!! あひひひひ……ッ!」


「このクソガキァアアァアア!!?」


「逃げるな貴様ああああァッ!」


「ッおあああぁああああぁあッ!!?」




 火やら雷やらなんやら。

 高速で飛んでくる魔法の数々。

 殺される。殺されるマジで。




「あっひゃひゃひゃ、ひぃっ、ひぃ……ッ! ちょ、超うける……!」





 後ろから悪魔の哄笑。

 ふざけんな。


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