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「宗教勧誘しただけなのに追放されそうです……」  作者: 頭いたお
7章 スティキュラ、迷子になる
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2.スティキュラ、絶叫する

「――暗くなってきたぞ、おい……!」



 歩いて歩いて数時間。

 まっすぐ歩いてんのに、一向に森から出られん。

 地図で確認した限りじゃ、さほどデカい森林地帯でもなかったはず。

 どういうことだ。なんだこの地図は。本当に地図なのか。どう見たって地図だ。じゃあ何で出られねえんだ。世の中間違ってる。



「まっずいな。野宿するにしても何も持ってきてねえぞ……!」



 一応荷を確認してみる。

 火を起こせりゃいいが、そんなモンない。



「魔法は使えねえしなあ俺……」



 魔法は才という。

 俺は自己強化しか使えん。

 なんとかならんか考える。



「なんともならんわ……」



 冴えるかと思い、頭を集中的に強化してみる。

 案の定なんともならん。悲しくなってきた。

 この悲しさを振り払い、明日へと駆けていこう。

 いい歌詞が出来た。冴えてる。



「……あ、そうだ! 確か古代人は、木の棒で火を……」



 小さい時に確か習った。間違いねえ。

 木の板に、棒を回転させながらこすりつけるやつ。キリモミ式とか言ったっけ。

 早速手頃な棒と木片を見繕う。準備万端。



「よっしゃあ! いくぜ!」



 棒が折れた。

 やめた。



「……。いや、もう一回やってみよう」



 短気は損気。

 もう一度、より頑丈そうな棒を拾う。

 さっきよりも優しく棒を回してみる。優しく、やさぁしく。



「……よし」



 棒が折れた。

 やめた。



「……要は摩擦熱だろうがッ!」



 でけぇ枝をもぎとり、適当な木の幹に全力で擦り付ける。

 一本まるごと燃やしてやらあ。



「うッらあああああああどうだあああッ!」



 木が折れた。

 心も折れた。

 やめた。



「もう何もしねぇ……」



 全てを諦め、そのまま寝っ転ぶ。

 朝までここでじっとするしかねえ。

 腹は減るが、まあなんとかなるだろ……。












「――ああ、日が落ちていく……」



 夜の帳が徐々に降りてくる。

 黒き垂れ絹は孤独者を包み込み、時の流れから隔絶させゆく。

 なんて詩的な表現だろう。冴えてる。



 今頃みんな何してんだろ。

 帰ってこない俺を心配してくれてっかな。

 だとしたら悪いことしたな。帰ったら謝らねえとな。



 ……いや心配してねえな。あいつらはしねえな確実に。

 絶対俺のこと忘れて酒飲んでるな。腹立ってきた。

 しかし立てた腹もすぐに座った。随分腹が減った。そりゃ座りもする。




 ……だんだん眠くなってきた。

 結構歩いたからな。明るくなったら、絶対、帰るぞ。

 帰ったら、パンケーキ食いたいな。バター、いっぱい乗っけて……。

 十枚ぐらい……。………………。




「……うおッ!?」




 がさがさと茂みの揺れる音。

 跳ね起きて目を凝らす、分からん。

 が、何かが駆けていったようだ。小動物だろう。



「……」




 既に日は落ちた。

 ほぼ何も見えん。

 明かりなし、夜の森。



 ……思っていたより、ちょっと。

 いや、これはかなり。

 なんというか、うん。



「…………」




 募りゆく不安感。

 周囲を警戒する。が、やっぱり見えん。見えんからわからん。

 よくわからんこの状況で、よくわからん何かに襲われたら、どうしよう。




「いや、大丈夫……何が来ても勝てる……俺なら勝てる……」




 腕に自信はある。暗闇でも問題ねえ。大丈夫だ。

 ドラゴンとか来たら流石にアレだが、ここにそんな大物はいない。

 いるとしたらコボルトとか……。いたとしてもトロールとか……。その程度の……。




 ……いや、いるとしたら。




「………………」





 「デーモンには気をつけてねえ~」。

 マスターの言葉が、頭をよぎる。よぎってしまった。

 世間を賑わせている、謎の存在。デーモン。




 話を聞けば、とんでもなく強いらしい。

 上級魔法を連発するとかなんとか。しかも飛ぶ。なんじゃそりゃ。

 その攻撃力たるや、ダンジョンをまるごと崩壊させるほどだ。ありえん。

 殴るしか出来ん俺じゃあ、絶対に勝てん。

 リリデス――あの化け物でさえ、苦戦したっつーんだからな。



「……………………」



 既に三人、殺された。しかもめちゃくちゃな殺し方だったと聞く。

 殺された内の一人は、名の通ったベテランだった。それが惨殺された。

 死か。この仕事にはつきものだが。死。







 死――。








「――ッ誰かあぁあああぁあッ!! 誰かッいねぇかああァアアアーッ!!?」





 叫んだ。

 なりふり構わず、叫んだ。

 だって怖いから。すごく怖い。怖いから怖いとしか言いようがないぐらい怖くなった。

 怖い。不安だ。つーか暗い。だから怖い。暗いは怖いで怖いから叫ぶのだ。




「うおおおおおおいッ!! 誰かぁああああぁあッ!! 遭難してまぁあああああすッ!!」




 叫べば叫ぶ程怖いし怖くなれば怖くなる程怖くなって叫んで怖くなってる。

 つまり怖くなって叫ぶからまたそれが怖くなっておれはもう訳がわからず叫んだ怖いから。




「誰かああああぁあッ!! いたら返事してくれええぇえええッ!! 誰かぁあああああッ!! 誰かあぁあああッ!!?」


「? 遭難してんのおじさん? うける」


「誰か助ッ……ッイヤアアアアアァアアアアアアアァアアアッ!!!!??」


「うあッ!?」


「……えッ!!? え!? えッ!!? こ、こどッ……!?」


「あはははは! はひひひ……!『イヤア』だって! あは、あはははひひ……! う、うける……! あひひひ……! めっちゃビビってるう……!」


「……ッ!?」




 声だ。灯りだ。光だ。

 誰だ。子供だ。女の子だ。

 尻もちをついた俺を見て、爆笑している。




「あひひひひ……ッ! や、やばい、ツボった、うぇっひひひ……ッ!」




 かくして俺はこの日。

 小さな子供に、保護された。


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