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「宗教勧誘しただけなのに追放されそうです……」  作者: 頭いたお
6章 アエラのたのしい魔法教室
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5.アエラのたのしい魔法教室 三日目①

「――さあ! 今日も元気に魔法のお勉強ですわ!」


「うわっ、やっぱり来たぁ……」


「『うわっ』てなんですの!? そりゃあ来ますわよ! 結構楽しみにしてるんですから!」


「私はまだ恐怖が勝ってるんですけどもぉ……」


「もうっ! そろそろわたくしにも慣れてくださりませんと!」


「というか自然にスラムに通ってきますねアエラさん……そんなドレスみたいな服で……」


「随分とジロジロ見られますわね。さっきなんて物盗りに遭遇しまして……」


「物盗りさんかわいそう……。儚き人生で……」


「流石に殺ってはいませんわよ!? 多少ボコすにとどめましたわ……!」


「後遺症とか……」


「それは、まあ、どうでしょう」


「かわいそッ……」


「多少は襲われた私に同情してくださっても良いのでは……?」








「――さて! 昨日話したことを踏まえ、本日はモジャさんの魔法使いとしてのステータスを分析していきましょう!」


「はあ……」


「まずは魔力量と放出力の分析から初めましょう! 《球》を全力でめいっぱい出してみてくださいませ! 全力でかったいボールを作りましょう! 恨みある奴を撲殺できるぐらいに!」


「撲殺したい人は特にいないんですけども……」


「モジャさんって本当にお優しい方ですのね、尊敬しますわ……!」


「優しさの基準値見直した方がいいですよ……」


「とにかく《球》ですわ! さあさあどうぞ!」


「《球》……う、ううーっ……!」


「…………」



 アエラさん、普通に出せばボール状になると言ってましたけど……。

 出てくるのは、やっぱりぐにゃぐにゃした奴ばっかりで……。

 全然球にはなりません。



「す、すみません……。やっぱ出来な……ひッ!?」



 爪をガリガリ噛みながらこちらを凝視するアエラさん。

 目をひん剥き、前傾姿勢。

 逐一怖すぎるこの人……。



「あの、アエラさん……!?」


「あ、失礼……。やっぱり分かりませんわ、なんですのこのぐにゃぐにゃの魔力……!? 妙に弾力が……!?」


「や、やっぱり変なんですかこれ……? あの、もうやめます……?」


「……まあいいでしょう。この《ぐにゃぐにゃ》を、可能な限り出してみてくださいませ。なんとか見極めましょう……!」


「わ、分かりました……。う、ううーんっ……」



 と、頑張って魔力を出してみましたけども……。

 三十秒もしないうちに息切れと立ち眩み。

 気持ち悪い……。



「う、うう……すみません。もうだめです……ああ、くらくらするぅ……おえっ……」


「うーん、かなり短いですわね……。すぐに霧散してますし、放出力も大分低めかと……」


「や、やっぱりぃ……才能……ないんですねえ……」


「まあそんなもんですわ。それよりも次です次! 変換力の方を確かめて……」


「す、すみません……。ちょっと、もう……辛……ううぅ……っ」


「あ、あら。大丈夫ですかモジャさん? ちょっと横になります?」


「う、う……。ぅあ…………。………………」


「……え? モ、モジャさん? 本当に大丈夫ですの!? ちょ、ちょっと……モジャさん、モジャさん――!?」
















「――んあぁ?」


「……あッ!? 良かった、ようやく起きましたわね……! ああ、もうどうなることかと……!」


「……あれ? 私……んん……?」


「ああ、起きないで下さいまし! 魔力切れですわ……! 一時間ほど寝てましたのよ、モジャさん」


「そんなに……? うわ……なんかまだ体が……」


「これをお飲みくださいまし。魔力の回復剤ですわ……。申し訳ありません、私がついていながら……。見立てが甘かったようで……」


「こ、こんな感じに……なるんですか、魔力切れって……うう、だるい……頭もくらくらする……」


「実体験として覚えておくのは良いことですけれども……。一度切れると結構大変ですのよ……」


「魔法怖……」


「始まったばかりですけど、今日はもう中止と致しましょう。貴重な時間を無駄にしてしまい、重ね重ね申し訳ありませんわ……」


「そうですか……! それはよかった……!」


「な、なんかものすっごい安心してません……!? 流石に傷つきますわよ!?」


「い、いえいえいえいえいえ……。で、ではまた明日……ふへへ……」


「……いえ! 魔法教室は中止ですが、これはわたくしの失態! ぜひとも埋め合わせ致しますわ!」


「……は?」


「モジャさんはゆっくりお休みください。今日は一日、わたくしが看病をしてさしあげます!」


「ッ!!? い、いや!? 本当に、本当にいいんで……! ゆっくり寝てますから……!?」


「魔力切れはすぐに回復するものではありません! わたくしが責任をもってあなたを元気にしてさしあげます!」


「あ、あぁぁあ……! たすけてえぇ……誰かあぁ……! ああぁぁあああ…………ッ!!」


「だから私も傷つきますのよ!? ほらほら、まだゆっくりおやすみ下さいまし! お昼ご飯を作ってさしあげますわ!」


「ううう……お酒をください……お酒を……そこの強い奴……脳を麻痺させて下さい……」


「だめに決まってますでしょ! なに現実逃避しようとしてらっしゃいますの! あ、コラ! 手を伸ばさない!!」



 狂人の看病が始まってしまう……。

 逃げたい……でも体は動かない……。

 お酒が欲しい……。

 お酒だけが私を癒してくれる…………。




「……今更ですけども。ここ、お台所がありませんが……いつもはどうやってご飯食べてらっしゃいますの?」


「うう……。そ、そこの調理器具でいつも……」


「あら、これですか? 随分簡素というか……野外用の物では?」


「ここぉ……地下壕をむりやり住居にした所でぇ……換気がちょっと……。火は外で使わないとぉ……」


「……。モジャさん、結構お痩せのようですけど……。普段はどんなご飯を食べてらっしゃいますの?」


「いつもは酒場で……。お金ない時はじゃがいもとか……蒸して……」


「…………。モジャさん、ご飯は大事ですわよ? 体は資本、これは戦士も魔術師も同じですわ。ちゃんと栄養あるものを食べませんと……」


「でも今は備蓄ないですしぃ……それこそお芋ぐらい……」


「でしたら買ってきますわ! 少々お待ち下さいませ! いってきますわー!」


「うええ、食欲ないんですけどぉ……。はあ……」


「――買ってきましたわ!!」


「早ッ!!? え!? 時空歪んでんですかここ!?」


「スラムとはいえ結構いい食材あるじゃありませんか! にんじん、たまねぎ、キャベツ、パセリ……」


「一瞬でよくそんなに……」


「オージービーフ、顆粒コンソメの素、S&B胡椒……」


「世界観あってますその食材……!?」


「では早速。お鍋、お借りしますわね!」


「うああ……ですから火は、ここでは……」


「換気口はありますわよね? どこになりますかしら?」


「それならここと、そこに……」


「《送風》」


「……あ?」


「《造水》、《着火》。《氷刃》……」


「わ……っ」




 気持ちのいい風が入り込んできたかと思いますと。

 鍋には水が並々と注がれ、氷の包丁で食材が切られていきます。

 手際よく、丁寧な、アエラさんの下拵えが始まりました。



「~♪」



 意外。

 家庭的なアエラさんが、そこにいます。

 なにより魔法を駆使して、淀みなく調理する姿が。

 なんというか、その……。




「……お料理って肉塊を切ってる時が一番楽しいですわよね!」




 やっぱ怖い。




「……どうです? 魔法って面白いでしょう」


「あ。は、はい……」


「この稼業を続けていますと、私も誤解しそうになるんですけども……。生活を彩るためにあるのが魔法ですのよ」


「……」


「丁寧に生活する技術が、魔法の本流ですの。戦闘でのドンパチだなんて……」


「……。…………」


「モジャさん?」


「……………………」


「…………ふふ。おやすみなさいませ」




 楽しそうに、軽やかに調理する姿を眺めながら。

 意識はまた遠のいて――。


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