4.仲間を学ぶ
……その後も罠のチュートリアルは続きました。
モジャさんの快進撃は続きます。
例えば落とし穴。
「あぁ! ふ、深い! え!? こんなに深っ……ああぁ!?」
「引っ張り上げますよモジャ」
「は、はい……」
例えば毒ガス。
「アッ! く、臭い! なんですかこの匂い!? 臭い! 臭い臭い!」
「近づかないでくださいリリデス」
「く、臭っ……! こ、来ないでくださ……! ひぃ!」
「お、置いていかないで下さい! ああ、待ってくださ……臭ッ!」
例えば落石。
「痛くないですし!? 全ッ然痛くないですし!?」
「泣かないでくださいリリデス。ほらハンカチ」
「泣いてませんし!? 全ッ然泣いてませんし!!?」
「めっちゃ泣いてる……」
例えば落とし穴。
「アッ!? なんか底……っ! ベチョベチョして……え!? 何ですかコレ!? 何コレ!!? 何コレぇ!!?」
「引っ張り上げますよモジャ」
「二度目……」
例えば落とし穴。
「……。………………」
「引っ張り上げますよモジャ」
「もう力尽きてません……?」
……かくしてトラップ満載の一層目は終了。
モジャさん一度も罠にかかることなく、難なく突破。
私とて全然平気ですが。全然なんともありませんが。全然。
「……大丈夫ですかリリデス。精神へのダメージが大きそうですが」
「全然平気ですがぁ~???」
「全然平気じゃなさそう……」
「……総評としまして。リリデスのように罠を率先して踏み、己が身で処理していくという方法もありますが……中にはパーティー全体に影響を及ぼす危険な罠もあります。避けて通る、解除する、という方法がやはり一番ですね。お見事でしたよモジャ」
「あ、ありがとうございます。ふへっへ……」
「いいですよいいですよ……。どうせ私は使えないお荷物マスターですよ……。今後は邪魔しないようこっそり後ろをついていきますから……」
「機嫌を直してくださいリリデス。ほら、飴あげますから」
「飴なんかで籠絡されませんから……」
「じゃああげません」
「ください……」
「籠絡されまくってる……」
……三人仲良く飴を舐めつつ二層目へ。
気を取り直しましょう。そう、私はギルドマスター。
毅然たる態度でモジャさんを導かねば……。
「さて。二層目からはとうとうアンデッドが登場します。罠もありますのでご注意を」
「うへぇ……戦闘は流石に……。た、倒せとか言いませんよね……? 武器なんてほら、短剣しか持ってませんし……」
「ここでは私達の戦闘方法について覚えてもらいましょう。味方が何をできるのか、知っておくのは重要です」
「はあ……」
「今更ではありますが、私はいわゆる魔法剣士です。近接であれば剣、遠隔相手には攻撃魔法。他にも回復や補助、強化、障壁による防御等、状況に応じてあれこれやります」
「シルティさんは凄いんですよ! 全てを大変に高いレベルで修めている万能冒険者なのです!」
「ま、魔法も使えるんですか……凄いんですねえ……」
「特に注意してもらいたいのが攻撃魔法です。巻き込まれると大怪我する可能性もありますから。あとで実践するので覚えてください」
「ひっ……お、お願いします……」
「そしてリリデスは純然たる戦士です。あの凶悪なハンマーを振り回して敵を殺傷していきます。シンプルですね」
「徒手空拳も結構得意ですよ!」
「う、噂はかねがね……」
「モジャ。戦闘中、絶対にリリデスには近づかないように。巻き込まれたら即死します」
「え」
「かすっても即死します」
「あ、あの!? 話を聞いていれば巻き込まれるのばっかりじゃないですか!? 大丈夫なんですか本当に……!?」
「魔法の特徴を覚えれば大丈夫ですよ。多分」
「間合いさえ覚えれば大丈夫です! 多分」
「最後の『多分』ってなんですか!? あ、安心させて下さいよ私を!!」
「あっ! そんなことよりモジャさん、早速スケルトンがやってきましたよ! ほら!」
「ひあッ!? ……え? あ、あの……。敵が持ってる武器ってなんですか……!?」
「あれは子供用チャンバラ棒です。バシバシ攻撃してきますよ、気をつけてください」
「チャンバラ棒て……」
「あ! あの子はゴボウ持ってますよ! 個性がありますねえ」
「持たされてる子かわいそう……」
元々彼らが所持していた剣や斧は既に没収済み。
これで安全に戦闘訓練が行えるという訳ですね。
あとでゴボウは回収していきましょう。晩ごはんにします。
「――では早速魔法を見てもらいましょう。私が実践で扱うのは中級レベルだけに絞っております。《火球》、《雷撃》、《氷槍》、これだけです」
「はあ……。聞いただけではなんとも……」
「これが《火球》。当たると爆発します」
「ひッ!?」
火の弾が前方のスケルトン達へ飛んでいきます。
直撃の後、そのまま爆発。
スケルトンが全滅しました。
「け、結構すごい爆発……!」
「これが《雷撃》。近くにいる敵も感電します」
「わっ!?」
稲妻が前方の全滅したスケルトンへ放たれます。
バチバチという凄まじい音と共に、骨が弾け飛びます。
既にスケルトンは全滅しております。
「も、もう全員倒れてるんですが……」
「これが《氷槍》。貫通しながら敵を攻撃します」
「あわわ……」
鋭い氷が矢のように滅茶苦茶になったスケルトンへ。
滅茶苦茶になった骨が一層滅茶苦茶になります。
ちょっとかわいそうになってきました。
「アッ! ゴボウも滅茶苦茶になってしまいました、残念……」
「この無惨なゴボウを見てもわかる通り、魔法とは大変に危険なものです。気を付けて下さい」
「見るべきはゴボウではなくスケルトンでは……?」
「最も巻き込みが少なく取り回しやすいのが《氷槍》ですね。基本はこれを多用しますが……集団相手には《火球》や《雷撃》も扱っていきますのでご注意ください」
「あ、あの。実際に巻き込んだことってあるんですか……?」
「私はありませんが……。過去、スティキュラという屈強な戦士がアエラなる魔法使いの攻撃で炎上したのを見たことがあります」
「アエラさん大爆笑してましたね」
「その後も頻繁に燃やそうとするので大変でした」
「悪魔か何かで……?」
「……おや、早速第二陣の敵がきましたね。次はリリデスの攻撃を見てもらいましょうか」
「お任せ下さい!」
「いいですかモジャ。あのとんでもなく重い巨大槌を、彼女は棒きれのごとく振り回します。攻撃の予備動作など無いに等しいですから……。万が一にも避けられるとは思わないで下さい」
「わ、分かりました……! 絶対近づきません……!」
「基本、リリデスは支援や連携を必要としません。むしろ下手な連携行動はこちらが危険となるでしょう。いいですか、基本は関わらぬよう」
「やっぱり敵よりリリデスさんが一番危険なのでは……?」
「戦闘においては誰よりも頼れる味方ですよ。ではリリデス、早速お願いします」
「ええ、それでは!」
目標を補足し、周囲の安全を確認。
ギルドマスターとしての実力、奮ってモジャさんにお見せ致しましょう。
いざ!
「――と、このように。考えなしに突っ込むと罠にひっかかります。気をつけましょう」
「よ、よく分かりました……」
「…………」
「引っ張り上げますよモジャ」
「は、はい」
「………………………」
このダンジョン嫌いです……。




