4.リリデスの策略
翌日。
リリデスは相変わらずやってきた。昨日の無視程度では諦めてはくれない。
今日も構ってもらうべく、誰彼構わず話しかけて回るのだろう。そう思っていた。
が、趣向が変わった。
「……みんなだいすきカルラン紙芝居のはじまりはじまり~! よっといでよっといで!」
カルラン紙芝居が始まった。
みんなだいすきカルラン紙芝居であった。私は寡聞にして知らない。
他の者も寡聞にして知らなかった。恐らく寡聞ではない。
* * * * * *
少年 『僕は戦災孤児……とってもひもじくて寒い……人生辛いよお……。神様はどうしてこんなに辛い試練をお与えになるんだろう?』
??? 『神様なんて、いないんだよ(裏声)』
少年 『だ、誰!?』
??? 『私はカルランマン! カルランの教えを説いて救いを与えるヒーロー!』
少年 『カ、カルランマン!?』
カルランマン 『さあ、このパンをお食べ! 神は居なくとも、私だけは君を救ってみせるよ!』
少年 『カルランマン、ありがとう!』
カルランマン 『君が諦めない限り、カルランは君を照らす! 君が諦めたとしても、その時は慈悲の名のもとに君を救う! だから勇気を持って立ち上が……』
* * * * * *
「……た、立ち上がって……君の人生…を、あゆ、歩むんだよ……!!」
――顔を真っ赤にしながら、リリデスはカルランマンを続けた。
額には大粒の汗、目は泳ぎ、言葉はしどろもどろ。
最早限界であった。しかし彼女は頑なにカルランマンをやめず、教えを説き続ける。
我々も限界であった。顔を覆い、頭をかきむしり、伝播した恥ずかしさに身悶えした。
こういうのは恥を捨ててやらなければならないアレである。
カルランマンは恥じらいを捨てきれていなかった、つまりすごく恥ずかしかった。
かくしてギルド内は地獄と化した。地獄を顕現させたカルラン劇場は30分続いた。
最後に、滝の汗を流す赤きリリデスはこう言い残し去っていった。
「……だ、だっ、第二弾もっ! お、お楽しみにぃ~……っ!」
たすけてくれカルランマン。