表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/156

2.盗人は誰?

「……まず状況を整理しましょう。盗まれたのは篭手と金庫のお金。これだけで間違いありませんね?」


「お、恐らく……」


「金庫に関しては分かりませんが、篭手は確かに昨晩ありました。で、二人で一緒に戸締まりをして帰りましたね」


「ええ……。それに清掃活動時も施錠はしました。窓も裏口も鍵はかかっておりましたし……」


「これではどこから侵入したかさえも不明ですね。手がかり一つありません」


「これでは自警団を呼んだところで……」


「解決してくれるとは考え難いでしょうね」


「そうでしょうねえ、はあ……」



 基本、彼らが行うのは現行犯への対応と防犯だ。

 現場を調べ、窃盗犯を追跡するなどはしてくれまい。

 というか、しようがないだろう。追う手立てがない。



 手がかりがあるとすれば、リリデスの篭手。

 あれは一品物のはずだ。イニシャルも入っている。そいつを発見すれば、辿る術はある。

 が、熱心に捜査してくれることも期待できまい。



「それにこの状況……。正直、問題を大きくしたくない、という気持ちもあります」


「……もしかして、シルティさんも同じ疑念を?」


「ええ。恐らくこの犯人……」


「……。はあぁ……」



 同じ疑念。

 つまるところ、元仲間の誰かが犯人という線。


 仮にそうなら、穏便に済ませたいというのが人情である。

 元々、前ギルドの蓄えなのだから尚更そうだ。

 私欲に使うのはいただけないが。



「この金庫の鍵、常に私が身につけて管理しています。ですから合鍵も作れない、と言いたい所なんですが……」


「確か、以前はクレインさんが管理……」


「そこが大問題です、しょっちゅう机に放置しておりましたから。作ろうと思えば誰でも合鍵は作れたでしょう」


「クレインさんらしいですね……」


「そして何より、出入り口全てが施錠されていた、ということが問題ですね。犯行を終え出ていく際、わざわざ鍵を閉めたということですから」


「鍵を持っていなければ普通はしませんよね……」


「出入り口の鍵は幹部メンバー全員が所持していました。管理もそれぞれでしたから、やはり合鍵は簡単に作れたでしょう」


「はあ……。なんだか犯人探しも嫌ですね……」


「私とて同じ気持ちですが、泣き寝入りというのも癪です。内々に済ませるにしても、犯人ははっきりさせたいですね」


「そうですね……。また盗まれる可能性だってありますし……。……はあ」


「……」



 悲しい顔をして落ち込むリリデスが、とかく不憫だ。

 盗まれたことより、犯人のことを想っている。そして境遇を悲しんでいるのだろう。

 優しい彼女のことだ、それぐらいは私にも分かる。



 ――同時に去来する懸念。

 犯人を見つけたら、どうする気だろう。

 何らかの「救済」を与えるのだろうか。それは非常にまずい。

 カルラン流救済は洒落にならない。




「リリデス、一応聞いておきたいんですが……。あなたの教義では……こういう罪には、どういった罰が妥当となるんですかね」


「……ッ!!? シ、シシシルティさん!? と、と、とうとう信仰にご興味が……!? ああ、あああ……!? ああ……っ!! あああぁあぁ……っ!?」


「違います。断じて。断じて。……仮に犯人が見つかったら、ちょっと大変な事になったりしないかという心配が」


「……あ、ああ。そ、そういうことですか……。……カルランにおいては罪と罰の観念自体がありませんので……。倫理の逸脱は『生』が齎す悲しき災いといいますか……。あまりに度し難き所業ならまだしも、このぐらいでは別に何もしませんよ……」


「ではエクストリームな救済を施したりはしないんですね? 市中引き回しとか、水攻めとか、火炙りとか、車裂きとか……」


「しないですよ!? 社会規範に則って普通に『罰』を与えるべきかと……!」


「それはよかった。もしやと思いまして」


「シ、シルティさん、やはりカルランを誤解してませんか……!? 暴力や殺戮を旨とする教義じゃないんですからね!? 一度じっくりお話しを……!」


「結構です」


「うう、信仰に関しては冷たすぎます……」


「さて。不安要素は消えましたので、ひとつ彼に頼んでみましょうか。専門ではないでしょうが」


「……え。どなたか頼れる方がいるんですか?」


「追跡や痕跡探しにはうってつけの人物がおります」


「そんなお知り合いが? 流石シルティさんですね」


「あなたの知り合いでもありますよ、リリデス」


「え?」


「空いていればいいんですが……少し掛け合ってきましょう。お留守番頼みましたよ」


「は、はい。え?」



 餅は餅屋。

 逃げる者には追跡する者だ。

 我々に足りない人材、ここは力を借りる他あるまい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ